87話 ヘタレすぎ乙wwwww
「おめでとう、お前ら、合格だ。
今日からEランクだぞ!」
控室に戻り、3人で静かに負けたことを反芻していた俺達は
グランさんの朗報で現実に戻った。
「え、合格?負けたのに?」
ギルがマヌケな声で聞く。
「アホか。そう簡単にCランクが負けるか。ありゃあただの実力測定だよ。
思いの外あっちが追い詰められててこっちがビビったくれえだ。」
「マジで。というか俺等お互いの動きを見てねえんだよな。
グランさん、なんか試合の様子が見れる道具ってある?」
冗談交じりで言ってみた。
思えばこれはちょっとしたフラグだったかな。
「あるぞ。何でもこの試合結構見応えあったからちゃんと保存して売るそうだ。見るか?」
あるんかい。というか
「売れるんだ………。」
見てくれよ、このシュウの複雑な表情。
確かに俺等が負けた姿を誰かに見せて金儲けするってのはいい気がしない。
「おいおい、仕方がなかったんだ。
この場所を使わせて貰う代わりにここで撮った画像は向こうの好きにしていい、ていう取引がされてるからな。
あ、そうだな、売る前に見てみるか?お前らの試合。」
最初に俺、そう言ったような…………。
まあいいや。
「是非とも見せてくれ。」
「わかった。じゃあこの黒い箱の中を見ていてくれ。」
そう言ってグランさんは控室の片隅にちょこんと置いてある謎の箱を指さした。
なんだこれ。
そう思った途端、テレビのように画像が映し出される。
あ、でもモノクロだ。なんか懐かしい。
俺達はそこから流れる動画を食い入る様に見た。
「俺が最初にやられたのか………。」
見終わった後に最初に呟いたのはギルだった。
因みに、やられた順番はギル→シュウ→俺の順だった。
「まあ、そんな悲観することでもねえ。
歴代の模擬戦はこんな感じじゃないからな。
Cランクに本気出させること自体が凄いことだ。そう落ち込むなよ。」
そう言いながらポンポンとギルの肩を叩くグランさん。
本当に何でこの人人気がないのか怪しいぞ。
目つきは悪いけど、そんくらいじゃね?
何かと世話好きだし、意外と優しいし、面白いし。
それともチャンネーはおっさんの人心掌握術でも持っているのか。
先生がこの人を紹介した理由が判ってきたよ。
とりあえず、
「もうそろそろ家帰ろうぜ。俺疲れた。」
「けどなぁ………。なんか釈然としねえんだよ。」
「僕も素直に休む気にはなれないな………。」
おおう、お前ら意外と負けず嫌いだな。
そんな中、いきなり控室のドアが粉砕した。
へ?粉砕!?
修理費に頭が回ってしまうあたり俺も卑しくなってきているな。
俺が自分を悔いていると粉砕したドアの煙から一人の男が出てきた。
「ハッハッハッハッハ!よし!ならば俺が稽古をつけてやる!」
ギ、ギルマス(m9(^Д^)プギャー)!?
どうした、今日は酒を飲まないのか。
「お前らの視線からして俺が何故稽古何かつけるんだ、て思ってるだろ!?
フッ。俺も未来ある後輩になにか教えてやろうと思ってな……………。」
「「ニート(実質無職)が後輩の為に働くだとぉ!?」」
俺とグランさんの声が被る。
こんなことがあってはいけない!ニートは働かないことが仕事なんだ!!!
「トンデモなく失礼なこと言われてるな、俺…………。
そんなに信用ないか?」
「「「無い。」」」
「増えた!?未来ある後輩にも言われたぞ俺!?
くぅ、俺のメンタルが凹んできた…………。」
「そのまま潰れろ。
で、本当に稽古をつけてくれるのか?」
元Sランク冒険者に稽古をつけてもらえるとか結構なパワーアップになるんじゃないだろうか。
「勿論だ!ただし、稽古をするのはシュウとギルの戦士系だけだ。
魔法系には教えられることが少なさそうだからな。」
そういえば素手で魔手を握り潰すレベルのハイパー戦士だったな、この人。
「じゃあ俺は先生に教えてもらうかな…………。
あ、シュウとギルはそれでいいんだよな?」
「いいよ。僕ももっと攻撃出来るだけの技術も欲しいし。」
「俺も稽古をつけてもらうぜ!そしてギルマスのおっさんの技術を真似してやる!」
「お、おう。やる気満々なのはいいんだが、程々にしてくれ。
俺もかなり苦労して磨いた技術だからな、あまり盗まれたくねえんだが………………。」
「さすがニート、ちょっと格好良いことしても結局はヘタレなんだな。」
「安心しろ、稽古で手抜きしてるようだったら秘書さんに頼んで
酒の量を減らさせる。全力で技術を盗まれてくれ。」
「お前ら基本的に鬼だな!?」
「さあ、帰ろうかグランさん。俺も先生を待たないといけないし。」
「そうだな。いつまでもこんな茶番に付き合うのも面倒だ。」
「俺はなんて言えばいいんだ…………?」
俺等は控室を出た。