64話 食糧難なう。
北西の門を出て約一時間後。
俺等はまだ走っていた。
何故休まないかって?
なぜなら、俺達3人は現在「もう休みたいけど皆のウィンド・ブーストが中々切れないから勿体無くて休めない」状態に陥っているのだ。
いい加減『ウィンド・ブースト』を切ってほしいのだが、支援魔法には術者にしか切れない。
もう既に周りが暗いし、俺の光の魔力球が無いと周りが見えない状況だ。
普通ならもう寝る時間だぜ?いや、実際には走っているけど。
ギルとシュウも眠いみたいで、フラフラしてきた。
やっぱり流石にもう寝たほうがいいな、と考えシュウとギルに言おうとした瞬間。
急に体を覆っていた何かがなくなり、急にスピードが落ちた。
シュウとギルも同様だ。
「っはぁ、はぁ、はぁ。」
思わず倒れこみ、俺は荒い息を吐く。
俺が倒れたのを見て、ギルは察したのか休み始めた。
ギルも休み始めたのを見てシュウも気づいたようにへたり込む。
「疲、れた、な。」
息を切らしながらギルが話してきた。
「全く、何で、『ウィンド・ブースト』、切らない、んだよ。」
「まさか、走り、続けるとは、思わな、かったんじゃない?」
確かに。ありえる。
普通なら途中で寝るだろうし。
結局俺等がおかしかっただけか。
「とりあえず、俺、もう寝たい。」
「わかった。ただし焚き火を作るまで待ってくれ。」
段々息が整ってきた俺はポケットから薪を取り出した。
煙玉を作る時に薪にする予定だった物だ。
余ってたからギリギリで思い直し、持ってきたのだ。
―――――シュッ。ボッ。
マッチで火をつけ、薪の山に近づける。
案の定、火は点いた。あとは『ウィンド・ロール』で火を煽っていく。
あ、そうだ。
「二人共もう寝ていい「「zzz……………。」」!?」
もう既に寝てた。おい、見張りとか全部俺にやらせる気だったのか!?
いや、元々やるつもりではあったんだが。
こんな形だと少し憤りを感じるなぁ。
2日連続徹夜だし。
そんなことを考えながら、俺は焚き火の近くに座り込み、見張りをした。
「よう、ロイド!いい朝だな!」
「ふっざけんなもう昼だああああ!」
ギルが起きた途端にアホなことを言い出したので飛び蹴りをかました。
どんだけ寝てんだよ、疲れてんのはわかるけど!
俺ずっと起きてたんだぞ?寝てないんだぞ?
しかも、この道って凄い緑豊かで滅茶苦茶眠気に誘われるんだぞ!?
少しは俺のことも考えてくれっ!
「え?もう昼?」
「そうだよ。ああもうなんてこった。」
シュウも起きた。ホント、どうなってんだ。
俺が睡眠障害持ってなかったらガチでぶちギレしてたぞ。
その前に起こすだろうけど。
「ちょっと俺を寝かせてくれ。その間に飯食ってていいから。」
「そういえばロイド寝てなかったな!」
「あ、確かに。」
「お前らのせいだろうがあっ!」ゴッ
「「ぐはあっ」」
はあ、余計疲れた。さっさと寝よう。
俺は今までにない最高速度で就寝した。
「ふぅぅぅぅ。あ、まだ昼か。」
目が覚めた。
ちょうどいい時間だな。さて、出発するか。
そう考えて横を見た俺はビビった。
シュウとギルが正座をしていたのだ。
へ?そういえば前に「誠意を現す時は正座をするのが一番いい」とか言ったような気がする。
ということはまさか、こいつらなんかやらかしたのかっ!?
そして恐る恐る二人の後ろを見た俺は倒れそうになった。
大量の空の袋。
激しい運動をした後のギルの食欲。
ギルめ、ほとんどの食糧を貪りおったな。
多分シュウは止められなかった責任を感じて正座しているのかもしれない。
とりあえず、
「飯、どうするか……………。」
「「すみませんでしたぁーっ!」」
二人の声がその場に響いた。