58話 同居のおっさんが色々ゲスなんだがwwwwww
現実に戻った俺は呆然と立ち尽くしていた。
最後のおっさんの暴動でクレーターがができまくったスラム。
幸い人は皆勇者から逃げたのでけが人は出なかったが。
酷い現実を見て、気がついた。
俺が、こんな大惨事を引き起こしたんだな、と。
俺が怒りにとらわれなければクレーターは無かったはず。
後で音がした。
振り返ると、ギル、シュウ、リーダーが気絶していた。
ギルは寝てるのかもしれない。寝返りを今うったし。
段々と視界がくっきりしてきた。
と同時に怒りにとらわれている間の自分の記憶が蘇ってきた。
その中に2つの惨事があった。
一つ目は俺が火薬を使ったこと。
ナパーム弾まで使ってしまった。しかも人に向かって。
2つ目は
「フィルが、死んだ…………………。」
そう呟くと、俺の意識が急激に遠くなっていった。
「嗚呼。」
俺はまた来ていた。俺の中の世界に。
さすが筋金入りの元ひきこもり。嫌なことがあるとここに篭もる。
自嘲気味に笑い、また膝を抱えて顔を埋める。
『また来たか。』
「!?」
ああ、おっさんか。
なんか最後の暴動について言いかけたが、
よくよく考えたら俺が彼に協力を頼まなければよかったじゃないか。
キレるのはお門違いだな。
ただ、おっさんになんて言えば良いかわからないので俺は彼を無視する。
『今度こそ、ここに篭もるのはどうだ?』
そんなを俺をあちらもお構いなしにおっさんは語る。
もう嫌だよ。さすがにもう篭もろうとは思わない。
でも、現実に戻りたくない俺もいる。
結局俺は何がしたいんだ。
ほんっとうに訳わからん。
「え?信夜君またここに来てるって本当だったんだ!」
お、ショタか。すまんな、俺また火薬使っちまったよ。
「って、おっさんもいるの?駄目だよ、この人の話聞いちゃ。
中々危険だから、この人。」
『危険とは何だ!私は今回は彼に協力してやったんだぞ!』
「そうなの?」
ショタはそう言いながら光の輪を作り出し、その中を覗いた。
俺覗いてビックリした。
「「協力してくれ、おっさん(巨人)。」」
過去の俺だ。
まあ、とても見れたんもんじゃないので顔を伏せた。
「おっさん、何でロイド君の怒りを吸収仕切らなかったの?」
『な、何だと!私が吸収しきれないほどの怒りを彼が出しただけだ!』
「いやいやいや。おっさんが吸収できない怒りなんて無いでしょ。」
『ふ、ふん。そんな訳なかろう。』
ちょ、おま、どういうこっちゃ!?
中々聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが。
俺の怒りって全部吸収できたのか!?
「そういうことなら全部吸収して欲しかったぜ………………。」
「まあ、このおっさん君の体を支配しようとなんて考えてる輩だし。
そういうことも平気でやるよ。」
「割と真面目に怒りを吸収し尽くして欲しかった。おっさん、酷えよ。」
『ちょっと待て。もし仮に私が怒りを吸収したとしても、あのフィルという少年は助からなかったろう?』
ああ、フィルが死んだ、というのを聞く度にすんごい胸が苦しくなる。
頼むからそのことを掘り返さないでくれ。
「でも火薬使っちゃったのはおっさんが吸収仕切らなかったからでしょ?」
『う、うむう…………。たしかにそうではあるが………………。』
「あ、認めたね。本当は吸収できたんでしょ?」
『っ!ま、まあそうだな、吸収しきれなかったこともないな。』
つくづく日本語って面倒だと思う。
吸収しきれなかったこともないな、ってめっちゃわかりにくい。
出来たのか出来なかったのかどっちなんだよ!ってなるぜ。
「今のでわかったろうけど、信夜君は多分怒りにとらわれなければ火薬は人に使わないから。僕がちゃんとおっさんに仕事させるし、火薬云々はそこまで気負う必要はないよ。」
最初の頃は怒れないなんて不便だなって思ってたけど、
今ならそれが凄いことなんだと感じる。
もしかしたらこの怒りの吸収もチートの一種なのかもしれないな。
『ちょっと待て!いいのか?このまま現実に戻ればフィルが死んでいるという現実を受け止めねばならんのだぞ!ここに篭ったほうが良い!』
「いや、もう大丈夫。」
『「?」』
「俺さ、出来ればいいから、『ヒネトヘイレン』を超える回復魔法を探してみるよ。そしたらフィルも生き返るかもしれない。
俺は現実から逃げるんじゃなくて、事態が好転する方法を探したい。
多分もうここに来ることはないと思う。
ショタ、ありがとう。」
『「!」』
俺のこの言葉に二人がビックリしてるのがよくわかった。
ま、さっきまで頭が混乱してたからうまく考えられなかったけど、
時間が経つに連れて思考がくっきりしてきて、
よくよく考えたら現実から逃げてばかりじゃ駄目なんだな、と実感した。
俺はもう前世で十分に現実逃避しまくった人間だ。
もうこの世界ではこんなことにはならないようにしよう。
「じゃあな。」
俺は現実に戻った。