(55話~57話) 勇者視点
反省回は明日書きます。
今日は勇者視点で。
「勇者様!どうか、私めの家から大量の食料を奪っていった奴らを討伐してやって下さい!」
「わかりました。いいですよ。
ところで、その子供達は普通の盗賊と同じ扱いでいいんですね?」
「勿論ですぞ!いくら子供であろうと、物を盗れば泥棒ですからな!
盗賊と同じように切り捨てて構いません。」
ぼくは、勇者だ。
生まれた時に今ぼくの腰にいる『聖剣』に選ばれてから、
ぼくは世の中の悪いことを無くして回っているんだ!
悪いことを無くすと、皆が笑顔になってくれてぼくも嬉しくなる。
だからぼくは毎日頑張っているんだ!
そんなぼくの行動がこの世の中が珍しいらしくて、
それがぼくが『勇者』と呼ばれる理由の一つらしい。
そんなぼくのこの街での目標は、大昔にここらへんで大暴れした巨人の
封印が解かれ始めたので、巨人を弱らせて更に封印を強くすること。
そういう理由で情報収集を始めたのだけれど、途中で嫌な噂を聞いたんだ。
なんでもスラムにいる子供達が色んな人から食べ物を盗っているらしい。
今、ぼくの目の前にいる太ったおじさんもその被害者らしい。
この街の警備兵さんたちも捕まえようとしたらしいけれど、あまりうまく行かなかったそうだ。
悪い!
ぼくは太ったおじさんから話を聞いてそう思った。
食べ物を盗るだけでもいけないのに、家の壁とかまで壊していたらしい。
しかも、魔法も使って。
まだ子供っていうのがちょっとひっかかったけど、
「人のものを盗ったら、泥棒!」
てお母さんも言ってたし。
普通に切ろう。
ぼくは『マジックサーチャー』を使って魔力を探し始めた。
「あ!」
ようやく魔力の反応を見つけた。
普通の人だと長い時間『マジックサーチャー』を使えないそうだけど、
ぼくは光属性のお陰ですぐ魔力が回復してくれる。
「えっと………この場所はスラムの中心かな?」
ぼくは全力で走って、スラムの中心に向かった。
「俺らで食料盗ってきて皆の鼻を明かしてやろうぜ!
勇者なんてそう簡単に出会う訳ねえってさ!」
「「「おーーーーー!!!!」」」
よし、見つけた。結構人数多いなぁ。10人位?
まあ、ぼくには関係ないけど。
「『斬撃』」
「ガフゥ!?」
「ちょっ!何が起きたっ!?」
「勇者だ!早く逃げ『斬撃』うわあ!」
よし、上手くいってるね!でも、まだ殺しちゃいけない。
この人達から他の人の居場所も聞かないといけないんだ。
「『斬撃』」
「『斬撃』」
「『斬撃』」
大体これでいいかな。
二人、すごい人たちがいるけどこれは止められないと思う。
「『クレッセントスラッs
「うおおおおおおおおおおおおお!」
「!?『セイクリッドガード』!」
なんか凄いスピードで人が来た!?
でも『セイクリッドガード』があるから大丈夫。
とも思ったらいきなりジャンプして上からキックをしてきた。
急いで聖剣で防いだ。
凄まじい光景の中、ぼくは今来た人を見た。
銀髪で、黒目。小さい。多分5歳くらいだと思う。
すんごいスピードだなぁと思った。
そのまま聖剣で切ろうとしたら聖剣を足場にジャンプされた。
次の瞬間、ぼくは目を疑った。
今飛んできた子が、離れているのに『ヘイレン』を使っている。
ぼくは、ぼくを育ててくれたおじさんの別れ際の言葉を思い出した。
「いいか?まず勇者として旅を始めたら、仲間を集めるんだ。
要するに『パーティー』だな。
そうだな、お前、剣士、魔術師、プリーストがいいだろう。」
「プリーストとしての条件は、まず遠くから治癒魔法が使えることだ。
普通のやつなら手を近づけないと治癒魔法が使えないが、
稀に遠くから使える奴がいるらしい。
次に……………
「ヒネト…………………ヘイレン!」
「!?」
回想してる間に彼はなにか呪文を唱えていた。
でも、ぼくはあんな魔法、聞いたことがない。
なんだろう、『ヒネトヘイレン』て。
と思ってたら、周りが光り始めてきた。
光が収まると、そこには身体欠落が治っている人たちがいた。
『…………………身体欠落を治せる者だ。』
おおおおおおお!
やった!やったよおじさん!
ぼく、遂にプリーストっていうのに合っている人を見つけたよ!
よし、絶対に説得してぼくの『パーティー』に入ってもらおう!
『マジックサーチャー』も凝縮してみると、光、水、土、風属性だった。
ぼくと同じ光属性じゃないか!嬉しい!
現実に目を戻した。
どうやら彼は皆を逃がそうとしているようだ。
凄い。自分が死ぬかもしれないのに他の人を先に逃すなんて!
やっぱり勇者パーティーに入って貰おう!
彼が他の人を逃して、二人になった所で話しかけてみた。
「す、凄いっ!凄いよ君!あんな治癒魔法見たこともない!しかも無詠唱!
離れているのに魔法を発現させているし、身体欠損までも治す!」
多分、今のぼくは興奮してるだろうな。
「是非とも!是非とも僕のパーティで支援をしてくれ!お願い!
その代わり、ここの人には攻撃しないから!」
彼はびっくりしていた。
そして、頷こうとしていた。
よし!いける!
そうぼくは確信した。
次の言葉が放たれるまでは。
「ロイドオオオオ!フィルがアアアアア!息をしてないんだアアアア!!」
同時に、彼の目が大きくなった。
そして、表情がどんどん変化していった。
呆然とした表情になったり、顔が赤くなったり。
そして、彼は最終的に狂った様に叫んだ。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ぃねえやあああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」
と同時に『マジックサーチャー』に何かが反応した。
びっくりしてそれを聖剣で防いだ。
受け止めて、ビックリした。
魔力そのもの。それが槍状になって一気にぼくに襲い掛かってくる。
こんなことが出来るなんて一体彼はどのくらい魔力の鍛錬したのだろうか。
「があああああああああああ!」
叫び声とともに彼の攻撃は強くなってきた。
彼の顔を見ると、彼を血の涙を流していた。
「くううううぅぅぅぅ!」
凄い!回復だけじゃなくてこんなことまで!強い!
段々彼との距離が離れてしまった。ここから『斬撃』を飛ばそう。
と聖剣を振りかぶった瞬間、その魔法は来た。
「終わらない地獄!」
ぼくの周りが火で包まれる。
「燃えつきろヤアアアアアアア!」
「何で?『マジックサーチャー』には火属性が反応してなかったのに!」
は、早く火を消さなきゃ!
「これが!みんなの痛みだああああ!
思い知れエエエエエエエ!!!!!!!!!!」
「うわあ!『水龍』!」
ぼくの使える限りの最高の水魔法。これで消えるはずだ。
――――――――――ゴオオオオオオオオ!
「火がっ!強くなった!?ならこれでっ!『サイクロン』!」
この炎、もしかしたら水を浴びると強くなるのかもしれない!
なら風で!
が、『サイクロン』を使った瞬間、彼の顔が気持ち悪いくらいにニヤけた。
――――――――――ジュオオオオオオオオオ!
火をまとった旋風!?しまった!
「ウワアアアアアアア!『セイクリッドガード』!」
これなら防げる!この『セイクリッドガード』は今まで破られたことが
無いんだ!
すると今度彼は変なものを投げつけてきた。
同時に強くなる炎。でも、これなら防げる。
と思ったら今度は息が詰まってきた。
「息がっ!苦しい…………。そうだ!『エクス・ブリーズ』!」
偶々覚えていた呼吸を助ける魔法。助かった。
僕は咳を何回かして、もう一度彼を見た。
「フィルの痛みを思い知れ。お前だけは絶対に、許さない。」
もう、怖い。ぼくより小さいはずの彼が大きく見える。
「死ね。」
そして、彼がなんとはなしに投げたものに脳味噌が一気に警報を鳴らした。
「く、『クレッセントスラッシュ』!」
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
「も、もう嫌だ!『斬撃』『斬撃』『斬撃』!」
手当たり次第に『斬撃』を飛ばす。
もう嫌だ。ほんっとうにもう嫌だ。
――――――パキッパキッ。
すると、何故か変な音が鳴って火がぼくの目の前だけ消えた。
よし!チャンスだ!
「死ねぇ!『クレッセントスラッシュ』!」
さっき彼を怒らせる原因になった二人に飛ばした。
片方は感知したのか避けられてしまったが、片方には当たる!
「…………………………フォートレス』!」
と思ったら飛んできた何かによって狙った片方の子供が一気に硬くなった。
――――――――――ギシィ!
う、受け止めたぁ!?
「うわあああ!ってあれ?」
彼も今のにはビックリしたみたいだ。
一体、何が起きたんだ!?
「間に合ってよかったぜ………………。」
「「「リーダー!?」」」
この大きな人が今の何かを飛ばしたのかな?
リーダーと呼ばれた大きな人は、ぼくを睨みつけながら
「勇者とやら。よくも俺の仲間に手ぇ出してくれたな。
俺がお前をぶっ潰してやる!」
そう吠える。
そして、小さい彼の方を向いて合図を出す。
「ロイド。やるぞ。」
彼が頷いた。
ロイドというのか。彼は。
「「☓☓」」
二人がボソリと何かを呟いた。え、なんて言ったの?
戸惑っているぼくをよそに二人は言葉を紡ぐ。
「「協力してくれ、おっさん(巨人)。」」
巨人?ど、どういうこと!?
『『いいだろう』』
混乱してきたぼくとは正反対に冷静な低い2つの声が僕の耳に響く。
そして、一瞬だけ世界が黒くなる。
「!?」
視界が晴れ、現実を見たぼくは唖然とした。
巨人と、どす黒く染まったロイド君。
無意識のうちに呟いていた。
「聖剣解放。」
今まで一回しか使ったことがない切り札。
ぼくに翼が生え、いつも着ている鎧が光る。
聖剣はいつもよりも輝きを増し、ぼくの視界は明瞭になる。
軽くなった体を使って巨人に斬りかかる。
ぼくの目的はあくまで巨人だ。
それに、いくらパワーアップしたであろうロイドくんだってこの光る鎧は
突破できないと思う。
『死ぬがよい。』
が、そんなことはなかった。
巨人がぼくの聖剣を止めている間に彼は底冷えするような声のまま
ぼくを殴ったのだ。
拳から出る黒い竜巻が鎧越しに衝撃を与えてくる。
「ガハッ!」
感じたのはこの状態で初めて受けた痛み。
彼はぼくの光る鎧を突破できる。
そのことに気が付き、更に聖剣を開放した。
「第二階解放。」
初めて使う聖剣の次の形態。
なんでも使った後の代償が痛いらしいけどそんなことは言ってられない。
ロイド君が今度は離れているのにキックをしてきた。
何でだろうと疑問に思うと、『マジックサーチャー』が彼の属性が
闇、火、雷になった事を伝えてくると同時に火と雷の竜巻を飛ばしてきた。
更に進化した聖剣でそれを防ぐ。
が、その隙にロイド君が突撃しながら又もや黒い竜巻パンチをしてきた。
急いで大きくなった翼でロイドくんのパンチを防ぐ。
そのまま聖剣を振るうが、巨人にブロックされた。
その隙間からロイド君のアッパーが飛んでくるけど、更に強くなった鎧の
オーラで黒いオーラを消した。
めちゃくちゃ強いパンチだけがぼくの顎に当たるけど、ジャンプして
衝撃を殺した。
成長した翼で滑空しながら『クレッセントスラッシュ』を飛ばした。
が、又もや巨人に止められる。
一瞬できた隙に火と雷の竜巻が飛んできて、翼に直撃した。
「しまった!」
落下するぼくの目の前に巨人の張り手とロイド君の蹴り上げ。
躱せない!そして、防げない!
「『セイクリッドガード』!」
せめてもの悪あがきにぼくが『セイクリッドガード』を使った瞬間、
呪文が頭に流れ込んできた。
『メタスタス、と唱えよ。』
ぼくはすぐ呟いた。
「『メタスタス』。」
そして、ぼくの視界がガラリと変わる。
そこはぼくの家だった。
ホッとした所で急に襲ってきた痛みに耐え切れず、ぼくは気絶した。