4話 【赤ん坊なのに】1日の終り【ドン引きされた】
――――――捨てられた。
このことを悟った瞬間、俺の頭の中を様々な感情が走り抜けていった。
このまま死ぬかもしれない絶望。ここまでの勝ち組感から一気に叩き落とされた不安。何もできなかった自分への無力感。目の前の森から自分の命を奪う何かが来るかもしれない恐怖。誰も助けてくれないことへの切なさ。今自分がこうしている間にも平和に過ごせている人への嫉妬。この理不尽な世界への嫌悪感。
そして、俺がもう1度死ぬかもしれないという苦しみ。
最後に、俺はこれらの感情を引きおこした、その元凶とも言える家族達への感情を覚える。
怒り。
―――――ガコン。
が、その怒りはよくわからない音と共にいきなり散った。
怒りが消えると今まで負の感情で埋め尽くされていた思考が一気にクリアになった。今気づいたけど、俺って動揺するとうまく考えられなくなるっぽいな。要訂正だ。
さあ、ここまででやっと正常に物事が考えられる様になった。
これからどうするか考えないとな。まずは目標を考えよう。現状を生き抜くための。
~現状を生き抜くための方法集!~
1、人に拾ってもらう。
2、家族達の心変わりを願う。
………あれ?2つしか思いつかなかった。しかも後者は絶対にありえないし。
やっぱり拾ってもらうしか無いか。幸い(?)ミルクをちびちび飲めば結構持つだろう。
しかし、ここまで考えるともうこの体には限界のようだ。生まれたばかりの時よりは体力的にはあるはずなのだが、それでも考えるだけでも疲れてしまう。
俺は、足音が聞こえるかもしれないという希望を持って耳を地面につけた。
そして、そのまま眠りにつくことにした。
が、俺は気づいていなかった。
様々な感情に襲われている中、何故か魔王への怒りだけなかったこと。
そして、ガコンという音についてなぜか自分が忘れている、ということについても。
――――――――――コッコッ。
何か足音っぽい音がして、俺は跳ね起きた。実際には体がまだ貧弱なのでなので跳ねては居ないのだが。
だがそんなことは関係ない。もしかしたら俺を拾ってくれる人が来たかもしれないのだ。早速アピールに入ろう。
足あとの主は少しいい身なりをした農民(?)だった。
俺は全力で声を上げた。
「あぶーーーーーーーー!!!!」
m9(^Д^)プギャー
なんだよ、俺の声、いや笑えないんだけどさ。
それにしても全力で喋ったら出た言葉(?)がこれか……。
ちょっと悲しい。
「ああ、また間引きか……。可哀想に………。しかも明らかに俺に向かって
話しているよ……。」
おおお!効果ありだ!効果ありだっ!俺は希望を持って更に呼びかける。
「あぶーーーーー!!!」
が、物事はそう簡単には行かなかった。(2回目)
「う……この子、完全に俺の言葉に反応してやがる……き、気持ち悪ィ……
やめておくか………すまないな、俺んちもそこまで余裕はねえんだ。」
そう言うと農民は足早に去っていった。
………………………。
…………な、なんだってーーーーーー
嘘だろ?どういうことだ?いやわかるっちゃあわかるぞ?
でもな、こんな現実
受け止められるか――ーーーっ!
ああ、これまでみたいにハイスピードで切り替えたい。でもできねぇ。
精神的にできねぇ。だがこの現実受け止めないと死ぬ。ほぼ確実に死んじまう。
よし、こんな時は黙想だ。俺の学校の校技は柔道だったんだ。
…………………………ん?
何か今までにはない流れを感じたぞ?その流れに集中してみるか。
まずは流れを動かしてみる。
うん。なんかジーンとくる。でも流れが狙った方向に流れるのがわかる。
今度は右手に流れの方向を変えてみる。
これが魔力ってやつか?
おおお、右手がわずかに発光している。すげえ。今度は足だ。これをずっと繰り返していると周りが暗くなっていき、段々眠くなってきた。
よし、もう寝よう。そう思い今日何回目かは分からないが目を閉じる。
そして、寝る直前に気づいた。
―――――今日の後半って生きるためにそこまで大事じゃなくね?、と。