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55話 対勇者 1

あれから5日経ち、勇者も街に来て非常に活気に満ち溢れているが、

基地の中はどんよりしていた。

なんせ、認められた奴以外は食料調達もとい泥棒にいけないのだ。

当然、腹も減る。一応畑からの収穫や、大量の芋のお陰で間に合っているが。


俺も『リフレクトハイド』と俊足のお陰で盗りに行くのはオーケーだが、

勇者が怖いのであまり外出していない。

というか、シンがいるからそんなに長時間外に出られない。

最近シンが離乳食を食べられるようになっているのが幸いしたな。

お陰で芋を溶かしまくって食わせるなんて真似ができる。


まあ、勇者はこの地にいるという巨人を討伐したら居なくなるらしいので、

安心だ。とっとと討伐して出てってくれ。

それにしても巨人なんてここらへんに居たっけ?

リーダーもその報告を変な顔して聞いてたので、誰もわからないだろうが。


兎に角、未だに誰も勇者と接触していない。

勇者は目についた悪事しか止めない、と言うのは本当っぽいな。

お陰で何も起きていない。このまま終わって欲しいものだ。


そんなことを考えながら魔力の手の練習もとい服の修繕をしていた

俺だったが、今から数時間後にこの小さな願いも潰されることになるとは

思ってもいなかった。












「大変だああああああああ!

勇者が俺らのことをいきなり襲いやがった!!

場所はスラムの中心!!早く皆逃げろ!」


突然のその報告に皆ざわついたが、直ぐ様逃走の準備を図っていた。早い。

俺も早く逃げようとシンを抱えた。


―――――次の言葉が発されるまでは。


「襲われたのはアリィ、ネル、ギル、ケティ、シュウ、フェン、フィル、

ゴーダン、テッド、ヒースだ!早く逃げるぞ!」


俺はシンをベッドに戻し基地の外に出た。

『マジックサーチャー』を最大範囲で広げると、案の定トンデモ魔力を

スラムの中心辺りで見つけた。

絶対勇者だ。俺はそう見切りをつけると『ウィンド・ブースト』を

魔力回復の限界まで掛け、走った。


様々な思考が頭の中を走る。

三人は無事か?残りの7人は?怪我してたらヘイレンで治せるか?

というか死んでないよな?

なにより、俺は死なないよな?


様々な不安に押しつぶされそうになりながらも俺が走っていると、

スラムの中心に一人の少年がいるのを見つけた。

なんか凄そうな服を着ている。

戦闘用以外の全てがカットされているのだろう。

手には光る剣を持っている。

そして、彼はその剣を横に薙ごうとしていた。

その先には―――――


――――――――――シュウとギル。


「うおおおおおおおお!!!!!!」


とりあえず、スピードが出てる俺の体で体当たりをする。

多分、あれから衝撃波とかが出るんだろう。


「『クレッセントスラッs』!?『セイクリッドガード』!」


が、とっさに光る壁に隔てられた。

慌てて魔力の手を伸ばし、光る壁のてっぺんに掛けて空に跳んだ。

そのまま、落下。


「ざけんなあああああああ!!!!!!」


「うわっ!」


俺のライダーキックは剣で防がれた。

剣を踏み場に跳躍して、シュウとギルの方に着地した。


「「ロイド!?」」


「皆はっ?」


はっという感じでギルは俺の後を指さした。

後を見た俺は、ギョッとした。


何人もの少年少女が血を流し、どこかを切られて倒れていたのだ。

概念魔法で『ヘイレン』をかけながら、俺は皆の元へ走った。

勇者はどういう訳か攻撃してこない。

好都合だ。まあ、攻撃してくるようなら奥の手(・・・)で防いだが。


まるでレアドロップを狙う廃人のように俺は『ヘイレン』を掛けた。

4人の傷はそれでふさがった。

が、治らない傷もあったのだ。四肢の切断等の、体から離れてしまっているもの。そんな重症の一人に、フィルがいたのだ。

左足が飛んでいっている。


「ガチでざけんなあああああああ!」


更に狂ったように『ヘイレン』をかけている。

が、治らない。俺は気づいた。

『ヘイレン』じゃ、身体欠損は治せない。


「何でだよっ!」


―――――ガコン。


怒りが一気に消える。

そして、俺の感情は別のものとなった。


「俺じゃあ治せねえってのか……………!?」


悲しみ、無力感だ。


欲しい。こいつらを救えるような魔法がほしい。

でも、俺にはない。

こいつらは、身体が欠損した状態で生きていかねばならないってか。

ああ。ああ。ああ。


…………………嫌だ。


「嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダァァァァァァァ!!!!!」


何で身体が欠損した状態で生きなきゃいけないんだ!

この社会では致命的じゃないか!

どうにか、治せないのかよ!


その瞬間、閃いた。

俺は一回体験したことがあるじゃないか。

身体欠損を治す魔法を。


「ヒネト…………………ヘイレン!」


そして、目の前の仲間たちが強い光に飲み込まれる。

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