54話 勇者降臨!(パ○ドラやないで)
3日ほど経ち、俺は絵の具のバインダーの上澄み液を取りに行った。
よし、前世で作ったものと同じ透明度だ。
多分おkだろう。
上澄み液を取り出した俺は、早速合成染料をそれで割った。
かくして紫の絵の具が完成したわけだ。
あとは、なにか割れやすい球状のものに入れるだけ。
卵の殻がいいかな。
俺は倉庫へ向かい卵を取ってくると、裁縫用の針で思いっきりさした。
どうやらこの世界の卵の殻は少し丈夫のようなので、俺の筋力だと思いっきり刺さないといけないのだ。
後は、今使った裁縫用の針をガラス棒代わりにして、ビーカーに液体を入れるように流しこむだけ。
――――――――――チョロチョロチョロチョロ。
長え。まだ半分ぐらいしか溜まってない。
穴がさすがに小さすぎたか。かと言ってこぼすの覚悟で一気にドバア!
はだめだ。合成染料作るの時間かかるし。
はあ、頑張るか。
約20分後、やっと入れ終わった。
合計で40分掛かるとか何これ。入れるだけだぞ?
とりあえずリーダーに見せよう。いつも通り。
「リーダー!変な物作ってみました!」
「なんだこれ。卵じゃねえか。」
はっと気づいて『ペイントボール(仮)』を見た。
うん。どう考えても卵だこれ。
『ペイントエッグ』に改名しよう。
「『ペイントエッグ』と呼ばれているもので、投げると色のついた液体が
出ます。これは紫のものが出ますね。」
「ちょっとそこに投げてみてくれ。」
そういって、リーダーは壁を指さした。
俺は頷いて壁に『ペイントエッグ』を投げた。
―――――――ぐしゃ。
ちょっと気味が悪い音と共に紫の液体が飛び散った。
「なんというか………。ちょっとグロいな。」
「僕もそう思いました……………。」
これが赤じゃなくて良かった。
「「………………………。」」
沈黙が続く。まさかこうなるとは思わなかった。予想以上にグロかったぜ。
「そ、それよりこれからちょっと緊急集会を開くぞ。
なんか悪い噂を耳にした。」
「どんな噂ですか?」
「なんでも、後数日で『勇者』が来るらしい。
一応、注意しときたくてな。」
「勇者ぁ?そんなのがこの時代にいるんですか?」
この世界での勇者は、魔王ふっ飛ばしてハーレム作っているような奴だ。
魔王に転生させてもらった俺からすれば、ちょっとムカつく野郎である。
「ああ。何でも魔王がもうそろそろ封印を破ってくるらしい。
そんでもって教会が神様に祈って生贄を出したら、一つの集落でとんでもない剣の才能、光属性の魔力持ち、美形、悪事は必ず止めるような性格、聖剣に生まれた瞬間に選ばれたっつうとんでも人間が生まれたそうだ。今ではそいつは旅をして仲間を集めてるらしいぞ?
確か、年齢は11歳。強さは『剣王』て人の折り紙つきらしい。」
要するに、チート持ちリア充か。
いや、友達いないだろうな。よし、リア充でなければ皆同胞だ!
けど、何でだろうか。すんごい胸騒ぎがする。
「あれ?悪事は必ず止めるんですよね?僕らヤバくないですか?」
「だから集会を開くんだよ。基本的に勇者は手を出されない限り何もしてこない。だからそれを言っておく必要がある。」
「了解です。全部の基地を回ればいいんですよね?」
「ああ。んじゃ、頼んだぞ。」
俺はいつも通りすっ飛んでいった。
翌日、俺達は打ち合わせ通り山に集合していた。
「もしかしたら知ってるかも知れんが、あと3日ほどで勇者が来る。」
リーダーの最初の一言により、周りが一気にざわついた。
「勇者って本当にいたのかよ………」「やばくね?普通にやばくね?」
「煙玉効いたらいいね。」「剣で速攻切り裂かれるんじゃね?」
「おいちょっと黙れええええ!」
「「「!!!!!!!!!!!!」」」
一気にざわついてたのが静まった。
「要件をちゃっちゃと伝える。
勇者は基本的に目についた悪事だけを潰すやつらしい。
よって、勇者がこの街から出てくまでは手慣れ以外は食料調達などには行かないこと。ここが一番大事だ。」
「できるだけヤツには関わらない!いいか!」
「「「はい!」」」
多分、これで基本的には大丈夫なんだろうがなんか凄い胸騒ぎがするな。
これから何にもない事を祈りつつ、俺は基地に戻った。




