3話 (父親視点)
「くそ!なんでだよ!なんで俺の子供が「魔力持ち」なんだよ……」
俺は我が子である、いや正確には我が子であった「ロイド」を森の前に捨てて来た帰り道で、ムシャクシャして呟いた。
この結果になるまでを思い出しながら………
俺はこの村では1,2を争えるレベルの狩猟家、「ヴェイン」だ。
この村における「狩猟家」は村に襲ってくる動物や「魔物」を狩って農民を守ることを仕事としている。
当然、自分の命も危ないのだが俺はこの仕事を1度もやめようと思ったことが無い。理由がある。狩猟家はある程度の力を持ってないと認められない。
力がなければ何もできずに死んでしまうからだ。だからこの村では狩猟家として認められるための試験受けねばならない。が、これが案外難しい。そのせいでそんなに狩猟家がいるわけではない。だから、俺がやめてしまえば戦力は低下し、死ぬ仲間が出てくるかもしれない。ましてや俺は強いのだから
尚更やめられない。
なので、俺は今まで一度もやめようと思ったことはないし、ケガ以外で休んだことは無い。
が、そんな俺でも今日ばかりは休む。なぜなら今日は子供が生まれる日だからだ。初めての子である。俺も楽しみだ。
ちなみに俺たちの子には村人たちも期待している。なぜなら子供が生まれる時、その子には親の能力が遺伝することが多いからだ。俺の妻であるマリアは元々頭がよく、そして俺は元々運動神経が良い。つまり、俺達の子は叡知と良い運動神経持った子かもしれないのだ。が、俺達にとってはそんなこと二の次だ。俺は子を早く見たくなってきて、まだ子どもが生まれるわけではないのに遠征から帰るスピードを早くした。
マリアが子供を産む予定の時間になった。俺の隣には出産を手伝ってくれる
お婆さんのクラータさんがいる。
「では、始めましょうか。」
クラータさんはそう言うと魔法具で赤ちゃんの位置を探り始めた。しばらくそうしてると、クラータさんの手が止まった。どうやら赤ちゃんの位置を特定できたようだ。すると、クラータさんは違う魔法具を取り出した。そしてマリアの腹に当て始めた瞬間、マリアの顔が一瞬歪み、そして魔法具の下に赤ちゃんが出てきた。そう。この魔法具はほとんど出産者に負担を掛けないで出産させるものだったのだ。
他にも生まれた子の首が据わりやすくなったり、言語理解能力が成長しやすくなったりと非常に有難い機能が付いている。
高かったらしいのだが、先代の村長さんが無理して買ったそうだ。
そんなことわさておき俺は子が生まれた事に感無量で少ししか話せなかった。
「マリア……よく頑張ったな……」
そう言うとマリアは涙ながらに頷いた。
俺達が二人して涙していると、急にクラータさんが赤ちゃんを叩き始めた。
「なんで叩いているんだ!子供に何かあったらどうする!」
「違うんです!泣いてくれないと呼吸が始まらないんですっ!」
そう言いながらクラータさんは子供を叩いている。何だと!それはまずい!
そう思いながら我が子を見ると、ない歯を食いしばるように痛みに耐えている。何をやっているんだ?そう呆れながら驚いていると、
「おぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
「よかった~~~」
やっと子供が泣いた。続いてクラータさんも安心したように言う。マリアもほっとしている。よく見てみると男の子のようだ。
マリアも気がついたようだ。ゼエゼエと息を吐いているが、
「男、の子、よ、あなたっ!」
と嬉しそうにいっている。
改めて我が子を見ると理性あるかのように動いている。すごいな。もう魔物よりも知性を感じられる。
「ついに、生まれた、わね。私、達の、子供が。」
「そうだな、マリア。しかも長男ときた。将来が楽しみだな。」
本当に将来が楽しみだ。この子が成長したらと考えると頭が一杯一杯になってしまいそうだ。
「お二人さん、わが子誕生の喜びに浸るのもいいですが、そろそろ子供に名前をつけてあげないと可愛そうですよ。」
おうおう、完全に忘れていた。ここは前々から考えていた名前にしよう。
「そうだなあ、男の子だし…よし、ロイドにしよう!それでいいよな?マリア。」
「ロイド…それでいいと、思うわ…」
良かった。案外すんなりと決まった。あとは念の為のチェックだけだ。
「では、名前も決まったようですしいくつかチェックさせて頂ます。」
おう。早くしてくれ。そういう意味合いを込めて頷いた。
「ではチェックを始めさせて頂きます。」
そう言いながらクラータさんはチェックを始めた。
――が物事はそう簡単には行かなかった。
「――――この子、魔力を持ってます。」
―――――嘘、だろ!?
この村には掟がある。それは全部で21個の掟でできているのだが、その中の一つに次のものがある。
―――魔力持ちは即座に間引かなければならない。
魔力持ちは普通は約20人に一人ぐらいの割合で生まれてくる。が、魔力持ちは力を持ちすぎているため、心が正しくなければその力を自分たちに使ってくるかもしれない。
まあこんな掟があるのも辺境の村だけで、都市部のような戦力の集まっている場所はこんな掟を作る必要がないのだが。
まさか自分の子が魔力持ちだとは。ここで捨てなければ自分たちが2重の意味で危ない。村人からの目線とわが子の魔力だ。
だから俺は決めた。ロイドを捨てると。幸いマリアは気を失っている。やるなら今のうちだ。
そう思い、俺はロイドを包むための布を取りに行った。
慌ててクラータさんもミルクを取ってきてくれる。
そして、準備が整った。俺はロイドを抱いて森へと向かった。あそこなら動物たちが見事に処理してくれるだろう。
そう思い、森の入口で俺はロイドを腕から下ろした。
ここまで思い出し、俺はまた呟いた。
「さあ、これからどう言い訳しようか……」
やっと長く書けた・・・