45話 火薬は素晴らしい(確信)
ポイントが500を超えました!
「リーダー、ロイドが起きました!」
「よし!こき使うぞ!」
「おっしゃ!」「遂に起きたか!」「これで楽になる!」
現実に戻った俺は、耳を疑った。
えっと、俺またブラック企業まがいなことやらされんの?
「クルト、現状が全く理解できないんだが。」
とりあえず、さっき俺のことを報告したクルトに聞いてみた。
「あ、えっとだな、あれだ。今回の取り締まりで基地を崩壊させられたから今新しく基地を作り直している最中なんだ。」
あのくっそ頑丈な基地が崩壊したのか。俺が起こさなかったらどうなっていたか考えると怖いわ。
「で、俺にその手伝いをしろと。ほぼさっきまで死にかけだった俺に?」
「そうなんだよ。キツイかもしれねえが、土属性の奴がたくさん必要なんだよ。手伝ってくれ。頼む!」
クルトが手を合わせて頭を下げている。
なんかインドの挨拶みたいだ。
それにしても、ショタの言ってた『皆が君を必要としている!』的なのは
俺をこき使うために必要としていたのか。ちょっと悲しい。ぐすん。
まあ、クルトの態度が凄いし、手伝うとするか。
筋肉痛とかで震える足を奮い立たせて、立ち上がってみた。
よし。足以外は異常なしっと。
一応『ヘイレン』も掛けておこう。
「わかった。手伝うよ。何をすりゃあいい?」
「まずはそこら辺で盛大に眠りこけている3人を起こしてくれ。
普通の『アンチスリープ』じゃ起きないんだ。光属性なら出来るだろ?」
クルトの指をさした方向には、ここ三日間を共にした3人がいた。
ショタが現実を見せてくれた時には俺を心配そうに見ていたから、
その後体力が持たなくって寝ちゃったのだろう。
俺のせいで疲れたのだから起こすのは忍びないが。
(アンチスリープ) (アンチスリープ) (アンチスリープ)
―――――――ZZZ……………。
しかし、効果がなかった!
「無理だ。起きない。」
「光属性を打ち破んのかよこの3人…………。」
ま、寝ててくれたほうがいいんだけどさ。
働くのは俺だけでいい。
「じゃあ、次は何を?」
「いま他の土属性の人達がいる所に行って、何をやるか聞いてきてくれ。」
「サンキュー。」
言うのを忘れていたが、実はリーダーは火と土の魔力持ちだ。
従って、土属性の人たちはリーダーと一緒に作業していた。
「リーダー、何をやればいいんですか?」
「ああ、ロイドか。そこの土を撤去してくれ。」
リーダーが指さしたところは、ちょうど3人の人が『アース・ホール』で
一生懸命土を消している所だった。
その瞬間、あることにひらめいた。
「リーダー、あそこ、爆破してもいいですか?」
「!?どういうことだ?」
ゴソゴソ、と俺はポケットからさっきまで俺をさんざん苦しめたシロモノを出す。
「なんだ?それは。」
「黒色火薬、というもので、火をつけると爆発を引き起こします。」
リーダーは口をあんぐり開けていたが、
「良くそんなものが作れたな。早速使ってくれ。」
と何かを悟ったような顔で指示した。
「じゃあ、一旦あの3人には離れてもらいます。危ないので。」
「任せた。俺にはよくわからんからな。」
「有り難うございます!」
俺は、嬉しかった。
ダイナマイトにしても、元は鉱山の穴開けが目的だったはずだ。
火薬を正しい方向で使える、というのがなんだか嬉しい。
「これが―――――という訳でして、そこに――――」
「成る程。それで楽になるなら是非使ってくれ!」
「そうだね、『小さな天才』の言うなら説得力があるよ!」
3人に事情を話すと、快く承諾してくれた。良かった。
3人がほっていた穴から出てくれたので、
導火線が長い少し大きめの黒色火薬を設置し、火打ち石で火をつけた。
――――――――――シュボボボボ。
――――――――――ドカーーーーン!!!!!!
「おお!!凄え威力だ!」
「あたしたちの努力は何だったのかな………」
「すごいもの作るね………あの子。」
何やら後で3人が言っていたが、爆音で聞こえなかった。
とりあえず、穴がどんな感じで広がったのか俺はみてみた。
黒色火薬は爆発する時に黒い有毒の煙を出すので、『ウィンド・ロール』
で煙を全部出してから中に入った。
因みに、爆破した時に火薬を投入した穴からすんごい勢いで土砂が飛び出している。
離れてなかったら生き埋めだわ。
………。
大きさはいいかんじだ。あともう一発撃てば完璧な基地の形となるだろう。
高さも、外へ飛び出さなかった土砂が積もって床となり、ちょうどいい感じだった。
それより、気になることがあった。
「すみません、ちょっと天井を硬くすることって出来ませんか?」
天井が次の爆発に耐えられそうになかったのだ。
前の基地はすんごく硬かったから、ここも魔法とかで硬く出来るかもしれない。ちょっと期待が混じっている。
「勿論出来るぜ?何でだ?」
「天井が次の爆発に耐えられそうにないんですよね………。」
「その『コクショクカヤク』ってのが強すぎってこと?」
「そういうことです。」
「そっか、ロイド君は攻撃魔法が使えないんだっけ。じゃあ、やるよ。
いっせーのーで」
「「「我が土の力集いて彼の者に堅牢を!『グラウンド・フォートレス』」」」
撃ちだされた3人の魔力がゆっくりと天井に当たり、滅茶苦茶硬くなった。
「あれ、これって『グラウンド・ブースト』より凄いんじゃね?」
思わず、口に出してしまった。だって天井が滅茶苦茶硬くなってんだもん。
ちょっと子供ぽかったかな、今。
「いんや、『グラウンド・フォートレス』は喰らうと硬くなりすぎて動きづらくなるんだ。」
成る程。フォートレスてわけか。
「じゃあ、もう一発ぶちかますので離れて下さい。」
「「「オッケー!」」」
俺は、2つ目の黒色火薬を設置する。
導火線に火をつけ、少し離れる。
――――――――――ドカアアアアアアアン!
「「「我が土の力集いて彼の者に堅牢を!『グラウンド・フォートレス』」」」
終了っと。
じゃ、飛び出した土砂の除去は頼んだ。
2回目の爆破も終えた俺達は、リーダーへの報告をするために戻ってきた。
「リーダー!終わりました!」
「はっやああああ!?」
うん。予想していた展開になった。
「ヌーク、本当に終わったのか?」
「何かロイド君が穴を爆破して、ぐらつく天井に『グラウンド・フォートレス』をかけたあと、また爆破してもう一度『グラウンド・フォートレス』を
掛けたら終わっちゃいました。」
「…………………。」
これが開いた口が塞がらないってやつか。
本当に顎が外れてたら『ヘイレン』で治るかなぁ。
「と、とりあえず見せてくれ。」
まあ、顎が外れてる筈がなく、俺達は基地(仮)にリーダーを連れて行った。
「完璧な大きさだ…………。」
リーダーは出来上がった基地(仮)を見てそう呟いた。
俺もそう思う。我ながらナイスな火薬チョイスだ。
「わかった。これから他の場所にも向かって貰うことにする。
ただ、他の基地はそんなに人が入んねえから、大きさはこの基地の半分ぐらいにしてくれ。これが大雑把な地図だ。」
リーダーからスクロールみたいなものを渡された。
広げてみると、普通の地図だった。ふむ。あと基地は3つか。
それにしてもなんか魔法の極意とか書いてそうな雰囲気あったんだけどな。
ちょっとがっかりだ。
「ロイド、何をがっかりしてる?」
「いや!何でもないです!」
とてつもなくくだらないことだったから、しっかり否定しておいた。
「じゃあ、俺達はもう休んでいいですか?」
「いいぞ。特にやることもないからな。」
な!働くの俺だけ!?不公平だ!俺だってもうちょっと寝ていたいのに。
が、そんな抗議を表情でしても、当然気づくはずがなく、俺は地図に示されている地点に向かった。
「これは――――――で、そこの穴に―――――」
「本当か?ありえない話だな。」
「やめてくれよ。俺らが怪我するかもしれねえじゃねえか。」
同じような説明をすると、有り難く拒否の返答を頂いた。
まあ、嫌なんならしょうがない。次の所行くか。
ここでは黒色火薬を使わないことにしてやる。
え?ちょっと苛立ち混じってるんじゃないかって?
そ、そんなことあ、あるわけ無いじゃないか!お、俺は健全な元中2だぞ!
ま、まさかそんな休めないからって八つ当りするわけ無いじゃないか~。
「これは――――――で、そこで爆破させると――――――――」
「えー?あたいそれちょっと危険だと思うんだけど?」
「いいじゃねえか。物は試し。一発ドカンとやってくれよ。」
「そうっすよ。シェリーさん。試すだけやってもらいましょうよ!」
「そ、そうかい。じゃあ、あんた、一発やってみてくれよ。」
今度は、姉御風の人を中心とした3人だった。
許可を得たので、俺はさっきの黒色火薬の半分の量を2つ出した。
「念の為に聞きますが、『グラウンド・フォートレス』は使えますか?」
「当たり前さ!孤児にはほぼ必須な魔法だからね!」
「なら大丈夫です。僕が爆破するたびに、『グラウンド・フォートレス』を
天井に掛けて下さい。」
「あいよ!分かったかい?二人共!」
「「了解!」」
「じゃ、火をつけるので離れて下さい。」
3人が下がるのを見届けて、
――――――――――シュボボボボボ。
――――――――――ドカーーン!!!
さっきよりは小さいので、爆発は少し弱い。
「『グラウンド・フォートレス』をお願いします!」
「わかってるって!いくよ!」
「「「我が土の力集いて彼の者に堅牢を!『グラウンド・フォートレス』!」」」
うん。やっぱ凄いわ。
カッチカチやぞ!カッチカチやぞ!ゾックゾクするやろ!
が、ロイドのstrが足りなかった!
カッチカチやぞ(ryは発動できない!
「二発目いきまーす。」
――――――――――シュボボボボボ。
――――――――――ドカーーン!!
「「「我が土の力集いて彼の者に堅牢を!『グラウンド・フォートレス』!」」」
よし、終了。『ウィンド・ロール』で煙を飛ばして、中に入った。
大きさもちょうどいい感じだな。
「これでいいですか?
あ、あと飛び出した土砂の撤去だけはしておいて下さい。」
「完璧だ!ありがとね!」
「助かったぜ!」
「サンキューっすよ~!」
俺は次の場所へと向かった。
「おお!ちょうどいい大きさだ!ありがとう!」
「……………やっと寝れる。」
「ふいー。ホント、俺らの努力は何だったんだ……………。」
次の場所でも感謝された。(多分)
やっぱり火薬ってこういうのに使うのが正しいんだ!
謎の喜びを噛み締めながら、俺は元の場所へ戻った。
外寒い→親外出しない→PC使えない
ああ、昨日の最高気温-5℃が恨めしい………。