44話 ショタは俺を救う!
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もうニヤニヤが止まりませぬ。(・∀・)ニヤニヤ
目が覚めると、目の前が真っ暗だった。
ロイドは、めのまえがまっくらになった!
あ、はい。手持ちが全部やられたんですねわかります。
あ、でもこれには覚えがあるな。
前世でとある事情で半ば精神崩壊を起こした時、
こんなかんじだった気がする。
医者の方は睡眠障害と外部からの精神攻撃から身を守る為のウンタラカンタラ
だとか言ってたが。要は、現実逃避のためらしい。
何でも意識だけが覚醒した状態にあったとか。
そういえば俺は気を失う前に何やってたっけ?
思い出そうとして、俺は吐き気がした。体は寝てるけど。
黒色火薬を人に対して使った。
これは、禁忌を犯したといっても過言ではない。
人に向けられた、という歴史ができた事自体もいけないことだったのだ。
第一、ダイナマイトを作ったアルフレッド・ノーベルさんを初めとして
もともと人を傷つけるのを目的として作った人は少ない。
黒色火薬だって、中国の調合師が秘薬を作ろうとして出来た失敗作という
話もあるし。だから、『薬』らしい。
そんなものを、まだ犯されていなかった世界に投下してしまったのだ。
更に言えば、火薬は人の命を誰だって簡単に奪えるようにできる道具だ。
さっきの黒色火薬だって、あの人を殺していたかもしれない。
火薬の恐ろしいところはそれだけじゃない。
火薬は、感触無く遠距離から殺せる分、罪悪感や嫌悪感が薄れる。
これは、魔法に対しても言えることだ。そういうのもあって、魔力持ちは敬遠されて来たのだろう。
火薬は、人を化物にする。
そして、その発端となりえることを、俺はした。
こんなんでどういう顔をして目を覚ませばいいのかわからない。
『ならば、目を覚まさなければいいではないか。』
何も見えないところから、突然太い声が響いた。
「誰だ!?」
『私か。ふむ、わからぬな。
強いていうならば、そなたが生を受けた時に、名も知らぬものから
そなたに植え付けられたもの、だな。』
要するに、俺が転生した時に俺の中に誰かが入れやがったってわけか。
封印みたいなやつか?NA○∪TOみたいな感じで。
「でも、何で俺がここに引きこもんなきゃいけねんだ?」
死ぬまで半ひきこもりだった元中二のセリフとは思えないな、うん。
『私はその名も知らぬものより、そなたが怒る、又は崩壊してしまいそうな時はそれを防いで欲しい、と仰せつかった。
今のそなたは気丈に振舞っているように見えるが、本当は崩壊しかけているからな。』
思い返してみれば、俺は怒りを感じるたびに何かにその怒りを消されているように感じた。
なぜか、いつもはそのことを忘れてしまうのだが、此処では思い出せる。
それより、この人(?)痛いところをついてくる。今は強引に話題を逸らしているが今反省なんかしたら俺は自殺するかもしれない。
何でかって?
俺は元々地球に住んでいた人間。いわば異物だ。
本来ならば、地球のものをここで作らず、ただ平和に生きていれば
異物も何も無かったのだろうが、俺は作ってしまった。
そして、あまつさえ火薬が人に向けられるという歴史を作ってしまった。
つまり、
俺はこの世界の害にしかならない。
そういう訳だ。
だから、俺は何もせずただここにこもっていりゃあいいんじゃないか。
そう考え始めていた。
「そうだ。仮に、俺がここに篭ったとして、肉体の方はどうなるんだ?」
『大丈夫だ。私と融合すれば、体は魔力そのものとなる。
故に食事も排泄も呼吸も何もかもが必要なくなるのだ。』
「その場合、死にたい時はいつでも死ねるのか?」
『ああ。一度融合してしまえば元の世界には戻れなくなるが、死ぬことはいつでも出来る。』
そうか。ならここに篭もるか。
「わかった。じゃあここに――――」
「ストッーーーープ!待とう待とう。そして頭を冷やそう。」
「!?」
今度は非常に明るい声が飛んできた。
少年だろうか、少女だろうか。幼女だったら………ゲフンゲフン。
いかん。本心が出てしまった。が、俺は二次元の幼女以外は駄目だ。
安心するが良い。
「何かとんでもないことを考えてそうだよこの人…………。
一応、僕は男だから。」
「ショタか……………。それはそうとして、お前はいきなり何をしに来たんだ?」
『確かに。この方の中に潜んでいる者の一つだとは思うが、一体何奴だ?』
ちょっと待とう。俺の俺の中には複数人が住んでんのかい。
マンションか、俺は。もういい。本当に何も考えたくなくなってきた。
「僕が誰かは教えられない。けど、信夜君。
本当に、融合しちゃっていいの?何も出来ないんだよ?
ただ考えることしか出来ないんだよ?苦痛だよ?後悔するよ?」
『な!貴様は何を行っているのだ!』
「てか、何で俺の名前を!?」
なんで、雲母信夜という俺の名前をコイツは知ってんだ!?
「ハッハッハ。そこは突っ込んじゃ駄目だよ信夜君。」
『私は無視か!』
「後で何かおっさんが騒いでいるけど、ちょっと僕の話を聞いて欲しい。」
そうか、あの太い声の人(?)はおっさんだったのか。
知らないほうが良かった。
「まず、考えてみてよ。君は地球のものはこの世界では異物だといった。
けど、この世界でも黒色火薬は十分作られる可能性があったじゃないか。
だから、異物じゃない。
それと、仮にここに引きこもったとして、なにか良いことがある?
ただ単に君が現実から逃げるだけだよね?
最後に、ここを覗いてみて。」
その言葉と同時に光の輪が生み出された。
言われたとおり覗いた俺は、身を見開いた。
何人もの仲間が、気を失っている俺を心配そうに見ているのだ。
何やら作業を皆でしているが、その合間にチラッと見てくる。
「わかった?君は皆に心配されている。
心配している、というのは、その人が自分にとって大切な人だから。
君をこの世界で必要としてくれる人はいるんだよ!」
『さっきから何を言ってるのだ貴様は!』
「ホントうるさいなあ、このおっさんは。
で、信夜君。それでも君はここに篭もる?」
「けど、俺はこの世界で火薬を人に向けてしまった。これは――――」
「でも、後悔してるんだよね?なら、人に向けなければいいじゃないか。
例えば今君の仲間がやっている作業。あれは、基地を作っているところだ。
そこで、火薬を使えば一気に穴が掘れる。
もう一度いうけど、人に向けなければいいじゃないか。
それとも、君は懲りずにまた人に火薬を使うの?」
俺は、首を横に振った。誰がもうあんなもん人に使うか。
使うなら魔物とかに使う。俺は誓おう。
けどさ、それで、誰かが火薬を人に向ける可能性だってあるだろ?
「なら、誰にも渡さなければいい。」
「でも、俺は弱い。」
「強くなればいいのさ。
そして、みんなのために火薬を使う。悪用は自分で止める。それでいいじゃないか。」
「それで、いいのかな……?」
「大丈夫さ。じゃ、戻ろうよ。現実に。」
「そうか………。よし、戻るとするよ。ありがとう。」
「じゃあね!」
俺は、目を開いた。
前世でこうなった時も、目を開く動作をすれば現実に戻ったからだ。
突然の光で目の前が今度は真っ白な中。
小さな歓声が聞こえた。
そんな中。
『チッ。失敗したか。』
何もない暗闇で、何かが呟いていた。
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