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398話 最終決戦 3

リーダーとカナルが、左右に分かれる。


「『巨人』!」

「『フレースヴェルグ』!」


現れるはフルパワーの土、風の五大獣。無論フルパワーで出すなんてのは二人に大きな負担をかける。

しかし、その負担に見合った脅威は生み出せた。なんたって一体が魔王の二分の一くらいの戦闘力だ。


「………ッ!」


二人の反動をも恐れない覚悟に、余裕たっぷりだった七罪将の表情も多少強張る。お気楽モードだったところを急にマジになられたらビビる。あちらは『足止め』さえ完遂できればいい、位に構えてた筈だ。

しかし、それでも七罪将は人外の存在。力をほぼ取り戻した彼らの戦闘力は、五大獣だって家で飼ってる猫クラスとも言える。引っ掻いてきたら困るなぁ、くらいの。


じゃあ、神の力でも借りるしかない。


「『邪神開放』!」

「『女神降臨』!」

「『戦神闊歩』!」


ギルマス、シュウ、ギルがそれぞれの加護を発現させる。

ギルマスは何度も見た赤黒い豪気。シュウは海のような全てを飲み込む豪気。ギルは全てを灼き尽くす灼熱の豪気。どれも五大獣クラスまで仕上がっていた。恐ろしいほどの成長っぷりだ。魔王城に辿り着くまで人外魔境の暗黒大陸を駆け抜けてきただけあるな。

左右に五大獣。前方に神格。俺達はガッツリと三方向を固めた。


「よっしゃ、いけこのッ!」


俺の号令とともに、その三方向から超火力が飛ぶ。

一撃一撃がドラゴンのブレスを超える威力だ。俺達冒険者が死ぬほど苦労したのは何だったのかと言いたくなる。やはり人を急激に成長させるのは命がけの戦場だな。

七罪将共も、それを黙ってぽかんと見ていたわけではない。

凶悪な波動をもって撃ち込まれるそれ(・・)を押し返すべく、魔力の力場を展開した。


ガガガガガガガガガ!


「何………ッ!?」

「馬鹿なッ………!」


拮抗した(・・・・・・)

全力の人外三人衆相手に、正面からの火力の押し付け合いで互角の立場まで這い上がれたのだ。

先程俺は七罪将二柱相手に勝ったが、それとは訳が違う。あれは傷だらけでボロボロなのを奇襲でどうにかしただけだ。空間魔法サイッキョ。

………まあ、今の状況も本当に真正面からぶつかり合ってるわけではない。位置取りの問題だ。

三方向から(・・・・・)打ち込んでいるため、あちらは半球状に力場を展開せざるを得ない。

これによってあちらの圧力は分散され、こちらは一点集中で攻撃できているわけだ。


勿論、相手がこのまま後退すれば力場の形は収束していき、圧力も高まる。全員の負担、魔王の成長も考えれば、時間をこのまま無為に消費するのは最悪のシナリオとも言える。

だから、決めるのは俺達(・・)だ。時間的にも、そして空間的にも。


暗黒大陸の小さな明かりの下に七罪将達の影が、ニィっと笑った。


「しまったッ!?」


「遅えな!」


俺の魔術師としての特性。それは、『魔力操作』と『無詠唱』。

俺は一度見た『特性の理解できる魔術』はそれに見合う魔力さえあれば発現できる。時を止める『バールゼフォン』ですら一発で使えた。

その俺が、ただの『影に潜る魔術』が使えないものか。


「勇者サマをなめんなよトントンチキ!」

「『ダーク・ブースト』!」


同じく闇属性魔力で俺に便乗していたアリエルが、自壊を伴う最強の強化魔法でもって『怠惰』を羽交い締めにした。


「ぬぅん!」


『怠惰』は振りほどこうとするが、血をプシュプシュと吹き出しながらしがみ付くアリエルに一瞬手こずる。力場を作るのも忘れ、全力でアリエルを引き剥がそうとした。

その隙を逃すほど、俺は馬鹿ではない。


ズッ、と槍状の聖剣が伸びる。

空間魔法がなくとも、聖剣が勇者の望むように形を変えるのならばこの程度の芸当、出来ない道理はない。

高速、とまではいかなくとも決してゆっくりではない一撃が、身動きのとれない『怠惰』を捉える。

突き刺してしまえば後はこっちのもの。

とでも言いたいところだが、状況は非常にマズい。


「ロイドッ!俺らには構うな!」


ギルマス以外の全員が、負担に耐えきれなかった。

とりあえず『ヘイレン』で身体面はケアするが、魔力面はどうしようもない。

このままでは、俺は意識を潜り込ませたが最後他の二柱に細切れにされちまう。

俺の意識を『怠惰』の中に潜り込ませるため、ギルマスが俺めがけて走り込んだ。


「「させるかッ!」」


俺の聖剣のタネは割れている。わかってないんだったら流石に慢心が過ぎるとしか言いようがない。

『暴食』と『嫉妬』はギルマスを押しとどめるべく両手を広げた。


「うおおおおッ!どけよ雑魚共ォ!『マキシマムギガントボディ』!」


邪神の影響で荒ぶっているギルマスは、そのまま身体を巨大化させ、全力でタックルした。豪気が恐ろしいほど迸っている。俺を抱えて逃げる分以外、全ての豪気をつぎ込んだらしい。

ドッ、という激突音と共に、七罪将二柱が力なくよろけた。

短い時間とはいえ、『怠惰』が欠けた状態で五人の攻撃を受け続けた。流石に、七罪将といえどダメージは大きかったようだ。


「――ああ、いいとも。いいともさ、どけてやるよ(・・・・・・)。」


だが。倒れる二人の方向がおかしい。


(まさか――――――)


そのまま、よろける二柱が(・・・・・・・)聖剣に貫かれる(・・・・・・・)


「自分から貫かれるだと――――――!?」


『暴食』が笑みを浮かべる。

『勇者ロイド』『ルシファー』『寛容なる遣い』『真祖吸血鬼』『ニーズヘッグ』『クラーケン』。

二人ずつに分かれて、俺達の意識は三柱の中に引き釣りこまれた。


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