397話 最終決戦 2
魔王城は大きい。空間魔法が封じられている以上、『リュミエール・シーカー』を使って索敵することが必須になってくる。
フッ、と魔王城全体の魔力反応が一瞬で浮き彫りになった。
『リュミエール・シーカー』で殺しきれなさそうなのがそこそこいるな。
その中の一人は、現在魔王城の最上階、というか4階にいる魔王だが………
「マズいな………。」
「なんかあったのか?」
思わず漏らした俺に、クソギルマスが問う。
「魔王の魔力量がかなりのペースで増加している。もたついていると勝機が完全に失せるかもしれないぜ。」
「「「ッ!?」」」
20分後には今の二倍になってるだろうな。かなりペースが早い。
そこに、カッカッカッ、と音を鳴らしながら5人の魔族が二階から降りてきた。
「その通り。我らが新生魔王様は、今力をお蓄えになられている。フルパワーになった暁には、七罪将すら凌駕する存在となることだろう。」
5人共、強力な魔力反応だ。間違いなく魔族の中ではトップクラスの戦闘能力を誇るだろう。
「何者かな?僕らは先を急いでるんだけど。」
先生が問うと、五人組の戦闘がニヤリ、と笑った。
「我らは近衛騎士団。貴様らはこk「『エクスカリバー』!」
とりあえず敵ならぶっ殺す。
しかし、奇襲にも関わらず躱された。どうやらかなり鍛えられているらしい。
「奇襲とは卑怯な!」
「うるせえ、こっちは急いでんだよ!」
更に、俺の背後から前衛組がなだれ込む。
「『マキシマムギガントアーム』!」
「『ドラゴンスマッシュ』!」
しかし、それすらも易易と躱される。
くそ、ちったぁ焦ったりしねえのかこいつら。どうしてそんな余裕持って戦えんだ。
「小僧!こやつら、最初から時間稼ぎのつもりだぞ!」
ジジイが叫ぶ。なるほど。そりゃあ確かに時間稼ぎさえできれば勝ちだよな。最初から攻撃する気がないのなら、確かに余裕を持って躱せるかもしれない。
俺が思案している一瞬の時間で、俺達の足元には泥沼が広がっていた。無詠唱か。本当に足止めに特化した部隊らしいな。くそ、足場が悪すぎて踏ん張れない。『マジックガード』が必要だ。
「ハハハハハハ、いいのか?貴様らがもたついている間にも魔王さまは着々と力を付けられているぞ!」
「クソが!」
15本の魔腕で乱打をかけるが、全員があまりにも防御に秀ですぎている。
くそ、どうする?『リュミエール・シーカー』は効かない、『エクスカリバー』は躱される、手数で押してもダメ、というかチマチマ来る妨害用の魔法がうざすぎる。
ガリガリ、と歯を鳴らす俺に、先生が提案した。
「ロイド、こいつらをまともに相手にしたら駄目だ!僕に任せて先を急ぐんだ!」
「お主一人じゃキツかろう。ワシも付き合うぞ。どうせワシは力押しには弱いしの。」
なるほど。二人共技量特化の魔法使いだ。俺もだけど。
「任せた!」
「行かせると思うか!?」
「止めれると思うか?」
俺達を止めに来た近衛騎士団は、その目の前を突如発生した吹雪によって遮られた。
「丁度いいじゃないか。妨害向きの魔法使い同士、ここで仲良くやろう。」
「調子にのるなよ、人間ども………我々魔族とはそもそもの地力からして違うことを知るが良い!」
どうやら上手く足止めしてくれそうだ。
俺達は、二階への階段を登りきる。
その先には、3柱の七罪将がいた。
「………なるほど、てめえらも足止め用、ってなわけか。」
「さよう。完全体となった魔王さまならば、我ら3柱を凌駕する存在へと覚醒することは明らか。」
「最も、ただの足止めで終わるつもりはないが。」
「ただの人間7人如き、我々からすればゴミ粒も同然だ。」
大した自信だ。というか実際めっちゃ強い。
だから、どうにかして聖剣をぶっ刺して内側から殺す必要がある。
「アリエルとカナルはわかってるだろうが、俺の聖剣を突き刺せば内側から七罪将を殺せる。その間俺の身体は動かなくなるから、ギルマスでも誰でもいいから俺を抱えて守ってくれ。」
そう言って、俺は聖剣を槍状に変化させる。空間魔法はまだ使えない。というより、どうやらこの七罪将がこの魔王城の空間をかなり掌握している。
つまりだ、こちらの空間魔法は通らず、あちらの空間魔法は通る。
「気をつけろ、敵の攻撃はどっからでも飛んで来るぞ!」
兎に角、空間魔法がなければやられ放題だ。
俺は真祖吸血鬼を呼び出し、闇属性魔力を手に入れる。
直後、四方八方から空間魔法のゲートが現れた。
「ふんぬっ!」
半分ぐらいを閉じるが、残った半分から大量の魔力弾が撃ち込まれる。
幸い、ここにいるメンツは全員身体能力が高い。どうしようもないものは俺とギルマスで弾く。
「おいロイド、このままだとジリ貧だぞ!手数と空間で圧倒的に負けている!」
「わかってらー。」
そうはいうものの、どうすれば見当がつかない。聖剣さえぶっさせればいいんだがな。
そこに、シュウが提案をした。
「ロイド、僕とギルマスで一気に押さえ込む。その間になんとかするってのはどう?」
「なんとかするってお前な………。そもそもどっからでも攻撃が来るから押さえ込むの無理だろ。」
呆れて否定する俺に、アリエルが被せた。
「いえ、意外といけるんじゃないですかね。ここにいる全員の力があれば。」
「へっ?」
直後、アリエルから念波が飛んでくる。
………なるほどな。




