表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
400/407

395話 魔王城潜入 5

(まさか、こんな所にいたとは………。)


真祖吸血鬼の声が、脳内に響く。

水の五大獣、クラーケンだが、どうやら巨大な魔道具で動きを完全に封じられているようだ。

一見見た目はただただ巨大な水槽だが、液体全てが特殊な水魔法によって構築され、絶えずクラーケンの魔力を押さえ込んでいる。今のままではただのデカイタコだ。


「これは吸収できればおいしいですね。」


「ロイド、敵影は?」


「ねえな。少なくとも近辺は。」


恐らく3人の意見は一致している。

説得して何とか俺の精神世界にぶち込め。


「………会話が成立すればいいが。」


「まずそもそもなんでこんな所にいるんだか。」


しかし、びびった所で何もないどころか大事な時間が削れていくばかりである。

俺は久しぶりに『リフレクトハイド』を使って姿を消す。


「………これ完璧ですよね。魔力遮断、防音、透明化ですよ。」


「空間魔法だけは誤魔化せないだろうけどな。まだあちらも俺達には気づいていないようだから大丈夫だけどさ。」


空間魔法で常に広範囲を探知し続けるのは無理がある。魔力量がいくらあっても足りない。

つまるところ、先程のトンネルの崩壊が見つけられたら事によってはアウトだ。空間魔法を使われた時点でほぼバレる。一応魔族っぽくコスプレしとくか。いやこんな身長低い魔族いねえよアホか。


階段を登りきり、クラーケンの水槽の前に立つ。

『リフレクトハイド』を解除した。


「ッ!?」


「こんばんは、クラーケンさん。俺は『勇者』ロイドだ。」


いきなり姿を表した俺に、クラーケンは驚いたようである。

だが、とりあえず俺が自己紹介すると落ち着いたようだ。勇者という肩書にこの魔王城の地下で会遇という状況に納得したのかもしれない。なんにせよ会話をしてくれそうなオーラがある。


「勇者か。なるほど、もうそんな時期になったのだな。御存知の通り、私が水の五大獣、クラーケンだ。

かれこれ200年ほどこの場所にこのまま封印され続けている。先程君が『リュミエール・シーカー』で見た通り、この忌々しい液体のせいさ。ところで、君の用件は?大方予想はつくがね。」


なるほど、逆に一番五大獣の中では知性が高そうだ。口ぶりでしか判断してないけど。


「ここから出す代わりに、俺に協力してくれ。」


「こちらからお願いしよう。私もこんな液体の中は懲り懲りなんだ。」


クラーケンが俺の精神世界に入り込む。急激に体積を減らした水槽の中で、ザブンと液体が跳ねた。

一見ただの水にしか見えない辺りが怖いね。


脳内で何やら再会の声が聞こえるが、とりあえず無視するとして、俺は二人を呼んだ。


「終わったぜ。」


「よしきた、すぐに終わったな。」

「これで五大獣のうち4体が手元にあることになりますね。誰相手でも一先ず戦いの土俵には立てそうです。」


「引き出すのが難しいけどな。まあ、良いだろう。」


ちなみに紋章が現れた場所は胸だ。しかし流石勇者ボディ、今までのように魔力回路がイカれたりはしない。今までの俺があまりにも貧弱すぎた、というのもあるけど。


再び『リフレクトハイド』を使い、3人の姿を隠す。もう一度完全隠蔽体勢だ。


「ロイド、何とかして七罪将の各個撃破を目指そう。何があったかは分からないが、あの様子では魔王には頼れない。七罪将から転生者達を解放しなければ最悪の状況………影の男と魔王の二人を相手取るのは厳しいぞ。」


「わかっている。だが、今この状況では『リュミエール・シーカー』で索敵するわけにもいかねえし、空間魔法も逆探知されかねない。そもそも出力の関係上空間魔法同士のぶつかり合いになれば押し負けるだろうからな。そもそも七罪将が一人でフラフラしてるとも思えねえし………。」


俺達がウンウン唸っていると、アリエルが俺達の肩を慌てて叩いた。


「二人共、前から魔族が来てますよ!」


カッカッカッ、と階段の向こうから音が聞こえた。


「マジ、なんで私がこんな雑務しないといけないのさ。ホント、魔王城直属とか言う割にはワンパンされるから使い物にならない、ってどうかと思うわー。」


出てきたのは愚痴る魔族の女である。

………うん?ちょっと待てよ。


「あれ、トップ3人の魔族のうち一人だぞ。」


「となると、『繭』の魔術師ですか?」


「そうだ。ちょうどいいぞ、脅して吐かせよう。」


「お前、相変わらずたまにエグいな………手段を選べる余裕はないが。」


俺達の声はカナルの防音結界のお陰で届かない。

俺達の目の前で、魔族の女はクラーケンの水槽を確認する。


「うわっ、マジ?タコさんいないんだけど!?うわぁ、ビクター絶対ブチ切れるわ………だるっ!」


完全に背中を向けている。

俺達は、目配せをした。


「むぐっ………!?ちょっと何!?見えないんですけど!」


「ちょっと黙れ。そして、俺達の質問に答えろ。」


スッと小さな『エクスカリバー』を首筋に当てた。魔族の女の冷や汗が、首を伝う。


「黙れって言っときながら答えろ、とか矛盾してるんですけどぉ………はい、スミマセンデシタ。」


俺達は、ズルズルと物陰に魔族の女を引き釣りこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ