38話 ケイドロ ~4~
(((戦わないという選択肢はなさそうだな。)))
4人は同時にそう判断した。
と同時に、足止め出来れば逃げれる、とも判断する。
「クヒヒ。諦めねえのか?気にいらねえぜ、そういうのっ!」
言い終わると同時に警備兵がかなりのスピードで接近する。
狙いは俺か。魔力持ちってのがバレたみたいだ。
まずは最高速度で支援系を倒し、その後他を倒す。
俺もよくそんなこともやってたな。ゲームで。
が、それでも前世では大量のネトゲ、FPSを、此処では狼の突進やらを
対処してきた俺なら反応できる速度だ。
『マジックガード』で相殺し、こちらも最速で今弾いた剣まで跳んで接近。
魔力の手でそのまま殴って剣を手から離そうとしたが、その前に
左ストレートを鳩尾に打ち込まれる。
「ゴフッ!?」
「ケケケ、いいスピードしてんじゃねえか。あと、」
そのまま警備兵はこっそり後に接近していたギルを切りつける。
が、ギルは持ち前の勘でそれを紙一重で躱し、一度距離を取る。
「お前の気配の殺し方もな。クックック。
うちの奴らに鼻☓☓でも恵んでやって欲しいくれえだ。」
待とう、非常に汚い言葉が入ったよ。
要するに爪の垢でも煎じて飲ませたいって意味なんだろうけど。
ま、でも話しているってことは隙ができることと同じ。
フィルに目配せをして合図する。
あっちも親指を立てているので大丈夫だろう。
俺は『ウィンド・ブースト』を使って全力接近し、警備兵の気を引く。
「また同じ手か?そんなんじゃあ俺にゃあ効かないぜ?」
そう言いながら高速で剣を振りぬく。
縦斬りか。また『マジックガード』で相殺してやる――――
その瞬間、俺の右にシュウが倒れこんできた。びっくりして右を
見ると、ギルがシュウを突き飛ばした事が理解できた。
と、同時にシュウに剣が当たっていた。
「いっっっっった!」
何で?確かに縦にふられていたのに。何でいつの間にか横から剣が
ふられるんだ!?
「チッ!すんげえ人間の使い方だな!文字通り肉壁ってわけか!
それにしても俺の『幻影一閃』を見破るとはな。
まあいいぜ。そのまま引き裂かれろおお!」
何かの手品みたいのを使って俺の視覚をおかしくしたのか?コイツは。
半ば飛びかけている意識を呼び戻し、現実を見る。
そうだ!早くシュウを助けねえと!
と思ってシュウを見た俺は唖然とした。
まるで、剣が鉄にめり込んで留まるように警備兵の剣もシュウの右腕の
途中で止まっていたのだ。
「は?鉄みてぇだなコイツ!硬すぎだろ!」
警備兵が慌てて剣を抜く。
俺もそう思う。これもう耐性なんてレベルじゃねえよ。
何処に剣で切っても頑丈さで受け止める奴がいるんだよ。
が、怪我してるにはしてるので『ヘイレン』で癒やす。
「ギル!酷いじゃないか!」
あ、そういえばシュウが俺の右に飛び込んできた理由ってギルが押したからだったな。
「あ、ご、ごめん!でもこれが一番いいって勘が告げてたもんで!」
これも勘かよ。確かに一番いい策ではあったけど。
それにしても、この警備兵強えな。特に『幻影一閃』とか言う奴が
凄すぎる。本当に縦に振ったように見えたのにな。
あと一つひとつの動作が速い。俺達の攻撃はことごとく防がれてるし。
タライ落としとかされてもパンチで弾きそうな気がする。
こりゃ、見えない攻撃を使うしか無いな。
魔力の手なら見えないから良いかもしれない。
さっきの腹パンも、多分魔力の手を警戒していたわけじゃないだろうし。
「お前ら一体何もんなんだよ!
無詠唱に剣を止める体に尖すぎる勘!ホント、生まれさえ良ければ
スカウトしてたのによぉ。ヒヒッ。残念だぜ。」
たぶん今はフィルが涙目だな。(確信)
その瞬間、とてつもない殺気を感じて俺は我に返った。
「これで終わりだぁ!」
――――――シュッ。ベキッ!
「!?」
「チッ!間に合ったか!」
警備兵が更に速度を上げて切ってきやがった!?こんなの躱せねえよ!
『マジックガード』が間に合わなかったら死んでたぜ!?
けど、全速力で行き過ぎたのか警備兵が止まろうとしてたたらを踏んだ。
今がチャンスだ!魔力の手を伸ばしながらこめかみを狙って裏拳を放つ!
「クッ!」
手でガードしたか!てかよく感知できたな。
けど、体勢を少しでも崩せばこっちのもんだ!
もう一度、今度は魔力の足も伸ばす。そのまま警備兵の足の間に魔力の足を
かけ、引く。
「喰らえ!『大内刈り』!」
「っ!」
柔道の技の一つである、『大内刈り』。本当は一緒に手も使うのだが、
その代わりに裏拳で体勢を崩して代用。我ながら綺麗に決まった。
「フィル!後は頼んだ!」
「オッケー!」
――――――ボシュッ!モクモクモクモク。
「まさか!煙が出る玉って本当にあったのかよ!」
フィルは、煙玉を投げつけた!効果は抜群だ!
つか、何で煙玉を知っているんだ?
とりあえず、それは置いといて。
説明しよう!
途中でフィルに合図をしたのはこの煙玉の事だったのだ。
普通に逃げたら絶対追いつかれるので、煙玉を使って逃げ切ることにした。
そのための合図が目配せだった、という訳だ。
案の定警備兵は視界が聞いてない。俺達は煙が発生する直前に
距離をとっていたのでそのまま逃走。
「よっしゃ!うまく行ったぜ!」
ギルが心底嬉しそうな表情をしている。
「僕は散々だったけどね………。」
怖い。シュウの目が怖い。
「フィル、他に行くアテは?」
「特に無いから一旦最初の裏道に戻ろう。」
「了解。」
俺達は裏道へ戻った。