3話 異世界転生してみた結果wwwww
えー。日本語かぁ。すんげえガッカリしたよ。
どうせ赤ん坊なんだから言語を覚える時間はたっぷりあるし、
何よりいい暇つぶしになると思ったんだけどな。
ま、いっか。最初っから情報収集が出来るわけだし。
というわけでまずは親の会話から現状把握をするか。
「これが…私達の子供……っ!」
息も絶え絶えだが綺麗な声で話している。多分こっちが母なのだろう。声からいくと美人なんだろうな。顔見てえわ。はよ開け俺の目。
と思って目を開いてみたら普通に開いた。なるほど、見ようとするのではなく目を開こうと思えばよかったのか。
どうやらここはベッドの上のようだ。生まれたばかりだから当たり前か。
そして母の姿を見ようと少し体の向きを変えて俺は一瞬鳥肌がたった。
目の前に18,19くらいの女性(多分母)が超密接して寝転がっていたからだ。
実のことを言うと、俺は軽度の女性恐怖症なのである。
「そうだな、マリア。しかも長男ときた。将来が楽しみだな。」
おうおう、大事な情報を2つもありがとよ、親父(多分)。
後ろから声が聞こえたから体の向きを変えて親父の顔を見ようとしたが
疲れちゃってできなかった。貧弱すぎるだろ。赤ん坊って。
それにしても俺は男か。良かった。
女性恐怖症の俺が女だったらどうなっていたかを想像したら夜も眠れんわ。
「お二人さん、わが子誕生の喜びに浸るのもいいですが、そろそろ子供に名前をつけてあげないと可愛そうですよ。」
お婆さんの、苦笑しているかのような声がした。
口調からして親戚ではなさそうだな。助産婦とかそんなところだろう。
「そうだなあ、男の子だし…よし、ロイドにしよう!それでいいよな?マリア。」
「ロイド…それでいいと、思うわ…」
早っ!名前決めるの早っ!でも親が付けた名前なんだから仕方がない。
雲母信夜は、ロイドとなった! テテテテン
「では、名前も決まったようですしいくつかチェックさせて頂ます。」
そうお婆さんは言うと、俺の前に来た。チェックって何すんだろうな。
お、20ぐらいの男も俺の前に来た。多分親父だろう。意外にイケメンだな。
う、羨ましくなんか無いぞ。
「ではチェックを始めさせて頂きます。」
そう言いながらお婆さんは微笑みながら少しだけ光っている木の板を何枚も俺に当て始めた。嫌な予感がする。
やべえ、鳥肌立ってきた。その笑みも俺には悪魔の微笑みとしか受け取れないぞ。
そんなことを考えてた直後、新たな板を取り出して俺に当てていたお婆さんの顔が突然驚いたような顔に変わった。
そして、言った。
「――――この子、魔力を持ってます。」
お婆さんがそう告げた瞬間、両親は一瞬滅茶苦茶驚いたような顔をし、
そして親父は壁によりかかり、母は脱力したようにベッドに突っ伏した。
が、彼らは予想以上に早く現実に戻った。
壁によりかかった親父は、その約3秒後、ボ○トも顔負けのスピードで部屋を出て行った。多分街(村?)に報告しに行ったのだろう。
さっきの皆の反応を見てると魔力を持ってる奴は珍しい的な感じだったからな。これは魔王の言ってたチートなのだろうか。
だとしたら魔力持ってない奴には申し訳ないな。
スマン、大したこともしてないのに魔力ゲットしちゃって。
だがここまでは俺の推察であって事実では無い可能性が高い。
ここはやっぱり残っている母とお婆さんを観察して確実な情報をとったほうが…。
「待って下さーい!!!!」
と、思ったらお婆さんが部屋から出て行きやがった。
クソッ!そんなにでかいニュースだったのかよ。これでこの部屋に残ってるのは俺と母だけになったな。仕方がない。ここは母から少しでも確かな情報を…
そう思い、体を母の方へ向けたのだが、母は気絶していた。
――――はひ?
なんでやねん!
思わずツッコんじまったじゃねえか!いや本当になんで気絶してるのか
全くわからん!が、このままでは全く現状が理解できない。こういう時には落ち着くことが大事なんだ。まずは羊を数えよう。
――――一匹、二匹、三匹、四匹、五匹………
や、やべえ。もう少しで寝る所だった。でもこれで落ち着けた。
よし、では母が気絶した理由を考えるか。
3分ほど考えた結果、2つ結論が出た。
1、出産でつかれた後に俺の名前が決まった所で安心し、気絶と間違われる程の熟睡状態に陥った。
2、単純に俺が魔力持ちだと知ってショックで気絶した。
うん。2の可能性がプンプンするな。だとしたらどんだけ珍しいんだよ魔力持ってる奴。
そこまで考えた所で思考が鈍くなってきた。うおお。眠い。まあ当たり前
か。なんたって俺はまだ赤ん坊だからな。このままこの睡魔に身を任せちゃうか…
そう思い、俺は目を閉じた。
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バタン。
何かが勢い良く閉まったような音がして、俺は目を覚ました。
そして、重たい(単に俺の筋力が低い)首を持ち上げて音のした方向を見た。
すると、親父とお婆さんが戻っていたのだが、二人とも様子が変だった。
まず親父。どこか後ろめたいような表情をして、何故かでかい布をもって立っている。
次にお婆さん。こちらもどこか後ろめたいような表情をして、明らかに人間の者じゃないようなミルクが入った容器(当然プラスチックではない)を持っている。
えー。その後ろめたい表情以外をツッコみさせていただきますと、
まず布は俺にかけてやるつもりなのだろうが今の俺は逆に生まれたばかりで
熱を持ちすぎてる状態なんだ。だから熱を逃させてくれ。
後はミルクについてだがわざわざ他の生物のミルクをもらうより人の乳のほうが健康的なので普通に人の乳をくれ。恐怖症は我慢するから。多分二人共俺のために準備したのだろうが済まないが止めてくれ。
そう言いたかったのだが、口が動いてくれない。
口がうまく動かないって実に不便だな。
一度思考の海から脱出し、ツッコミしてる間に下がってしまった俺の首をもう一度上げ親父達を見る。
すると何故か二人はお互いに頷き合い、お婆さんは俺にミルクを押し付け、親父は俺を布で巻きつけた。
そして、親父は俺を抱きかかえながらドアを足で開け、
さらに玄関も開けて家の外に出た。
家を出ると親父は物凄いスピードで走り始めた。家の外は街ではなかった。
皆が農業をしている村だった。そんな風景も一瞬で通りすぎていき、
やがて森が見えてきた所で親父は止まった。
そして俺を腕から下ろすと来て道を引き換えして行った。
すごいスピードで。
何が起きたのかほとんど理解できない状態の中、俺は1つだけ物事を理解できた。
それは、
――――――俺、捨てられたっぽい。