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392話 魔王城潜入 1

「すーっ。」


現実に戻って来た俺は、とりあえず深呼吸をする。

うーん、やはり身体の調子がおかしい。というか、調子が良すぎる。

試しに腰を入れて岩を殴ってみると、ビキッとヒビが入ってしまった。いつの間にこんなパワーアップしてんだ。


(おお、無事に勇者として覚醒したみたいだね。)


「ぬお!?」


念波が頭のなかにガンガン、と響く。

もうちょっと音量落としてくれ。


(ごめんごめん。それと、今からそっちに聖剣出すから。)


俺の腕からニュルニュルと聖剣が出てきた。もうこれわかんねえな。

出てきた異常に聖剣が手に馴染む。マジで勇者になっちまったか。

しかし、あいにく俺は『ストロム・ベルジュ』以外にロクに剣になど触れたことがない。使徒空拳まーじさいっきょ。しかもこの剣はイタルペナの冒険者は斬るわフィルは殺すわで本当にどうしようもない。


なんて考えていると、聖剣から刃が消えた。柄だけである。


「は?」


(聖剣は持ち主の思うように変形するからね。魔力はふんだんにあるから魔力貯蔵庫として使おう。)


なるほどわかりやすい。

俺がシャドーボクシングなどで自分の体の調子を確かめていると、魔王城の門がギィィ、と開く。


「なるほど、魔王の作戦はこれでしたか。まんまとハメられましたね。」


「マジかんべーん。勇者復活しちゃったじゃーん。ちっちゃいけど!」


「………。」


3人の魔族が来た。三人共そこそこ強力な魔力をしている。特に、今一言も喋んなかったやつ。


(その三人が僕達の敵だ。)


マジか、初っ端からラスボス来ちゃうのか。

丁重にお相手してあげたいところだが、悲しいことに俺はまだ自分の実力を掴めていない。それと無口マンが想像以上に強そうだ。正直わからん殺しされそうなオーラがある。

俺が頭をフル回転させていると、魔王城の方からよく響く声が聞こえた。


「おーい、ロイドー!ナイス復活ー!」


魔王である。ニッコニコで手を振ってやがるぜ。

あまりの楽天的な声にビビったのか無口以外の二人が魔王城の方に振り向いた。


(今だ、主よ、我らの魔力を引き出せ。今の肉体ならかなり長く維持できるはずだ。)


おうよ。

俺の強力な光属性に加え、闇属性、雷属性、火属性が加わる。


「ホッ………!」


「「しまった………ッ!」」


超強化された肉体でもって振り向いていた二人を飛び越える。

しかし、無口マンは逆に俺の後ろに張り付く。その右手には、濃密な魔力がチャージ済みだ。


「死んでもらうぞ。」

「延期で頼むわ!」


しかし、こちらとて無策ではない。俺は右手から光属性と闇属性を均等に混ぜた物体が放つ。


ぐにゃん。

無口マンの伸ばした手は、残念ながら俺に届かない。


「既に空間魔法を習得済みだと………!?」


そのまま空間魔法でもって3人の周りの空間を捻じ曲げる。これで俺を追うまで多少時間を食うはずだ。


「開門ありがとな!」


置き土産を残して魔王城に入ると、早速魔族の兵に会ってしまった。


「えっ。」


「ほっ。」


顔面が驚愕に染まっていた魔族兵を、『リュミエール・シーカー』による魔力注入で一撃で沈める。出力大分上がってんな。これは範囲も死ぬほど拡大されていそうだ。


(『リュミエール・シーカー』!)


一気に視界が開け、膨大な量の情報が脳みそになだれ込んでくる。


「うおお!?」


一回シャットダウン。出力を落として、魔王城全体だけを映し出す。

見事に魔王城の全貌が知れてしまった。チート過ぎるぞ勇者。

しかし、やはり七罪将は簡単にやられてくれそうにない。一柱一柱でなら『憤怒』に劣るが、それでも脅威的な強さだ。何よりよろしくないのが、5柱の七罪将が現在二柱、三柱と別れて休んでいること。

いくらなんでも人数差付けられるのはまずい。というか、合流されるってのが一番危険だ。


となれば、人数が少ない方に行ってパッパと片付けるのが得策である。魔王とさっさと合流したいが、流石に俺たち二人でも5柱+魔族三人だと分が悪いどころの話じゃない。二柱を潰したとしても総力戦になればきついが、そこは地の利をもってどうにか四天王方式に持ち込むしかないだろう。


俺は、二柱が休む部屋へと直行する。


「ここか………。」


ビビってる暇はない。俺がドアを開けると、そこには何人かの魔族が眠っていた。どうやら休憩室かなんかのようだ。天下の魔王城直属とはいえずっと勤務する訳にはいかないらしい。

そして、その奥にいたのは。


「アリエルに、カナルか………。」


「そんな者は存在しない。」

「ここにいるのは『色欲』そして『強欲』。」


くそ、俺の精神をボコボコにしてきやがる。殺しにくいじゃねえか。

そんな俺に、ショタ野郎から念波が届いた。


(この二人、さっきの君みたいに解放したほうがいいかもね。)


そいつは最高だ。

俺は口角をあげた。


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