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389話 激動する世界

強力なモンスターと魔族が支配する暗黒大陸。

その中心たる魔王城を目前に、今代の勇者は息を切らしていた。


「ハァ………ハァ………!遂に辿り着いたぞ、魔王城………!」


「ほぅ、少し苦戦したようだな、勇者よ。」


その前に現れたのは、七罪将『憤怒』。

何度も己を退けたその姿に、勇者は思わず怯んだ。


「ふはははははは!やはり怖いか、ロイドの姿は。確かに、順風満帆な貴様の道を幾度となく塞いできたのはこの小僧、それは間違いない!」


「お、恐れてなどいない!僕は勇者!僕は人類の希望そのものなんだ!」


聖剣を向けながらそう叫ぶ姿に、『憤怒』は口を開けて大笑いする。


「ははははは、なんだって?人類の希望?傍らに立つ友すらいない癖によくそんなことをぬかせたものだ!」


「なんだと!?馬鹿にしてるのか!」


「これで馬鹿にしていなかったらなんだというのだ。我は他人の『憤怒』が大好物であるからな!」


勇者はギリギリ、と歯を鳴らしながら聖剣を構える。


「ほう、困ったら武力行使か。変わらないな。」


「黙れ!『聖剣解放』!」


勇者の身体が光に包まれる。


「覚悟!『クレッセントスラッシュ』!」


「………その技ばかりだな。その学習力のなさが、貴様を再び敗北させる!」


『憤怒』の拳が炎、雷を纏う。

そのまま身体のスライドだけで聖剣を躱し、拳を顔面めがけて振りかぶる。


「『セイクリッドガード』!」


「甘いわぁッ!」


メキョリ、と勇者の顔面が歪む。

そのまま闇属性で構成された魔腕で勇者の顔面を握り、両の拳に魔力を溜め込んだ。


「ふはははは!素直に初太刀から『ドラゴンスレイヤー』でも使っておけば良かったものを!『クレッセントスラッシュ』なぞこの肉体が死ぬほど見ているわ!」


「――――――――!!!」


勇者がじたばたと暴れるが、『憤怒』のラッシュにより次第に動きも鈍くなっていく。

全身がだらんとしたあたりで、『憤怒』は魔腕による頭部の拘束を緩める。


「どれ、そろそろ頃合いだろう。最後にその表情だけでも見ておくとしよう。」


「『メタスタ………」

「おっと。もう逃げられてはたまらんからな。」

「――――――!」


生還用魔法である『メタスタス』を唱えさせないために、『憤怒』はその口に魔腕を突っ込んだ。


「やってみると案外呆気ないものだな。さてと、勇者よ。その肩書に免じて最後に辞世の句を詠むことを許そう。出来栄えによっては逃がすことも吝かではない。その場合辞世の句ではないがな!ハッハッハ!」


笑いながら『憤怒』が口から魔腕を抜くと、勇者は息も絶え絶えになりながら声を発する。


「『メタス…がッ!」


「興醒めだ。死ね。」


『憤怒』の右の拳が、勇者の心臓を撃ち抜く。

ドサッ、と勇者の身体が落ちた。


「………終わりだな、人類も。」


『憤怒』がそう呟くと、聖剣がガタガタ、と震えだした。


「なんだ?勇者が消えても役目を果たそうとでも言うのか?」


呼応するように、聖剣が独りでに『憤怒』目掛けて飛ぶ。


「ははは、面白い!面白いがパワーは皆無だな!」


『憤怒』は拳でもって叩き落とそうとする。

が、聖剣はその拳ににゅるん、と吸い込まれた(・・・・・・)


「何………!?まさか聖剣、貴様………ッ!」


『憤怒』が目を見開く。
















「勇者が死んだ………ッ!?」


教会によるその知らせは、全世界を更なる絶望に叩き落とした。

寧ろ、直前に何とか4箇所で七罪将を撃退したからこそ、その絶望度合いは深いとも言える。

対魔王の、人類最後の牙たる『勇者』。その死は、人類の破滅と言っても過言ではない。


「も、もう人類は終わりだ………。」


「たった2日、たった2日でこんなに世界が変わるなんて………!」


世界中に、絶望が伝播する。


「なるほど、勇者が死んだか………。」


その中で、諦めない男達がいた。


「ちょっと予想より早かったなー。」


「だが、手紙によると勇者は魔王城付近で死んだらしい。まだ勇者のこじ開けた道は利用できるはずだ。」


王国の秘蔵の船、『キングストライアンフ』。

丸3日かけて蒸気船へと脅威の進化を遂げたこの船は、100名以上の高位冒険者、実力者達を伴い、暗黒大陸目指して航海中だった。


「風魔法、水魔法!火力上げろ!『グラウンド・ブースト』もぬかるなよ!」


勿論、いくら魔法があると言えどもそう簡単に船の改造が終わったわけではない。

だが、それを『グラウンド・ブースト』による耐久力の上昇、魔法による推進力の圧倒的向上で冒険者たちは乗り切る。


「見えたぞ!暗黒大陸だ!」


人類の全てをかけた攻撃が始まる。



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