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386話 七罪将侵攻 1

その日、世界は激しく揺さぶられた。


「さて、人類諸君。『勤勉なる遣い』から開放されて喜んでいる所悪いけど、この僕、魔王からの凶報だ。心して聞き給え。」


天空にホログラムが如く現れた巨大な魔王が現れるなり、世界各地から6本の闇の柱がたつ。


「この柱は、七罪将。魔王と勇者が生まれる前より存在していた、神代からの化け物たちだ。

僕は、これを完全に掌握した。あとは、言わなくてもわかるだろう?

これより、新生魔王軍による世界征服を開始する。精々あがき給えよ人類諸君。」


静かに魔王の姿は消え、空は快晴を取り戻す。


「という感じで、どうかな?」


場面は打って変わって、魔王城。


「素晴らしいです、魔王様。魔王様の威厳も十分に伝わったでしょう。」


魔力の込められた水晶から手を話し、振り返る魔王に色白の魔族の女が拍手を送る。

それに対し、魔王は一言も返さない。


君達(・・)が、僕を脅すからやったんじゃないか………。)


内心でため息をつく魔王の傍らに、6柱の強大な闇属性魔力を纏った七罪将が飛んでくる。

すぐに膝をついた七罪将に、対し魔王は苦笑を浮かべる。


(好き勝手やる皆を見てるのも楽しかったんだけどな。)


七罪将を眺める魔王の後ろから、長身の魔族が顔を出す。


「おお、魔王様。どうやら七罪将の招集には成功したようですね。今すぐ6柱を人類の元に向かわせましょう。世界を一刻も早く魔族のもとに取り戻すのです!」


「うん、そうしようか。」


拒否はできない。

魔王は、今現在この二人………加えてもう一人に完全に行動を縛られているからだ。

魔王であるが故に、七罪将の統率権は魔王が有しているが………拒否すれば即座に殺されるだろう。そうなれば七罪将はこの3人が動かすことになる。世界征服、いや魔族による世界を構築することに執心である3人の手に、七罪将などという規格外が渡ってしまえばどうなるかは想像に難くない。


だから、魔王としては苦肉の策を使うしかない。


「………?6柱をバラバラに派遣するのですか?」


「七罪将だよ?人間如きに遅れを取るはずがないじゃないか。それに、6人に役割分担させたほうが仕事も速いだろう。」


「それもそうです。失礼しました。」


見た目だけは恭しく頭を下げる長身の男を前に、魔王は暗黒大陸の黒い天を仰ぐ。


(頼むよ………人類。)
















城塞都市イタルペナ。

大量の冒険者を抱えるこの都市は、『勤勉なる遣い』による被害が甚大であった。


「それに加えてあの宣戦布告………俺は病み上がりだぞコンチクショウ!」


「今までサボってた分働け。」


「俺だって好きでサボってたわけじゃねー!」


光の楔より解放されたイタルペナのギルドマスターは、他のギルドとの連絡、『勤勉なる遣い』の後処理に追われていた。

加えてこの男、ずっと封印されていたために状況があまりわかっていない。それでもギルドマスターという存在は何かあるにつけ必要になってくる。


「マスター!」


「今度はなんだ!」


「ロイド君が帰ってきています!」


「最高にもてなしてやれ!というか俺に言うな!」


「いえ………それがおかしいんです。濃密な闇属性魔力を纏っているらしく………。」


「何………!?」


ギルマスの顔色が変わった。

彼の体内には、五大獣が二体も封印されている。『勤勉なる遣い』などという規格外を倒したのだから、何かしらの代償によりそいつらが浮上してきたとしても何ら不思議ではない。


(なるほど、それは俺じゃなきゃどうにもならねえかもな。)


相手が五大獣だとしたら、まともに攻撃を耐えられるのは自分くらいだろう。

そう判断したギルドマスターは、行動を開始する。


「場所は?」


「東門です。Aランクは集めますか?」


「一応頼むぜ。何が起きるかわからないからな。」


「………ご無事を。」


「もうやられるなんてヘマはしねー。『弾壁』『跳躍』!」


ひとっ飛びで東門まで飛ぶ。


「あっ、ギルドマスターじゃないですか!来てくれたんですね!」


職務中の門番が満面の笑みで迎える。

それに対しサムズアップで答えながら、ギルドマスターは凶悪な魔力波動に目を向けた。


「………いやー、こりゃ参ったな………。」


「やっぱり、あれ(・・)ですか。」


ギルドマスターの目の前にいたのは、真祖吸血鬼でもニーズヘッグでもない。


「よう、ロイド。いつの間にこんな暗くなっちゃって………彼女とでも別れたか?」


「我は七罪将『憤怒』。貴様の知る『ロイド』なぞここにはいない。」


「つれねえなぁ………。」


軽口を叩きながらも、ギルドマスターは内心で冷や汗をかく。

なるほど、これは確かに神代の存在である、と。

ひどく小さいはずなのに、その身に纏う魔力はドラゴン以上。そして、恐ろしいほどに場馴れしている。


そんな彼の後ろに、10名ほどのAランク冒険者が降り立つ。

ギルドマスターは、振り返らずに彼らに声をかけた。


「病み上がりの所悪いな。」


「あんたもだろう。それより、これは………。」


代表して『紅槍』がギルドマスターに質問する。


「七罪将『憤怒』だそうだ。

相手は真祖吸血鬼でもニーズヘッグでも『不死(イモータル)』でもねえぞ。」


「なるほど。つまるところ我々の仕事はそういうこと(モンスター討伐)か。いつも通りだ。」


「そういうこった………目ぇ、覚まさせてやろうぜ。」


「「「おう!」」」


冒険者たちが、得物を構えた。



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