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385話 決戦 4

こいつの『本質』を、ずっと考えていた。

冒険者たちの戦う姿を見て、情報を可能な限り集め、考え得る『本質』を虱潰しに消していく。

だが、俺はその中で一つ誤解をしてしまった。


それは、『反転』の能力に関して。

俺は、最初の攻勢で風魔法がただ霧散したのを見た瞬間、この『反転』『反射』の可能性を削除してしまっていた。目に見える結果で全てを判断してしまった結果だ。


だが、そこに『本質』があった。

勿論、それは『反転』でも『反射』でもない。

しかし、確かにその能力ならば『あらゆるものを超えた肉体』と形容できる。

その上、『攻撃を全て弾き』『一定距離だけ全員吹き飛ばし』『アダマンチウムが効かず』『測定を重視する』。


言うなれば、その能力は『自身が外部を常に超越する能力』。略して『超越』とでもしておこう。

最早それは概念魔法のようなもの。そういうルールなのだ。だから。

攻撃を受ければそれをある程度超える耐久力を持つ。だから武器種にかかわらず皆ある程度弾かれる。

攻撃すれば相手の耐久力をある程度超える。だから個人の体重などによらず1メートル程ぶっ飛ぶ。

アダマンチウムを押し付けられればある程度それを超えるだけの魔力無効化耐性を得る。

『マジッククラッシュ』を食らえば、減少分をある程度上回るだけの硬さを得る。


そして。


『ヘイレン』を食らえば回復分をある程度超えるだけ自らが傷つく(・・・・・・)


「対象からの回復魔法を察知。即座に浄化します。」


「『ウィンド・ブースト』。」


『ウィンド・ブースト』を食らえば速度上昇分をある程度超えるだけ遅くなる。

元々ブースターとして光の楔分の魔力を使えば俺のほうが速いため、これで負けようがなくなった。

全ての光の楔を悠々と躱し、『ヘイレン』をかけ続ける。

陶器が欠けていくように、『勤勉なる使い』がボロボロと崩れている。


「対象の浄化は困難と判断。退却を図ります。」


目の前で『勤勉なる遣い』が踵を返す。

しかし、その飛行速度は今の俺からすればのろのろとした動きにしか見えない。

俺は別に干渉していないので俺の速度を『超える』ことはない。傷ついて生命の危機に瀕してるのは俺に反発してあっちが勝手にやってることだ。俺は知らん。


「損傷率50%を確認。迅速な退却が必要です。」


「おう、早く退却しろよ。」


思えば、俺はこいつの天敵だ。

こいつの強み。それは触れられる、つまり干渉された時点で敵を『超える』ことができること。そして唯一の弱点である回復魔法が本来触れなければ発現しないこと。この二つの相互作用だ。

回復魔法以外を全て『超える』ことができ、そして回復魔法は使わせない。まさに無敵だ。


(視認した範囲全てが射程圏内の俺がいなければな。)


そして、俺は『風帝』による訓練のお陰で空に羽ばたくことができ、速度も悪くない。『勤勉なる遣い』のあらゆる攻撃を問題なく躱すことができる。そして、常に俺の射程範囲に収めることができる。


まさに『勤勉なる遣い』殺し。


「退却します退却します退却退却退却90%を確認迅速な退却迅速な退却退却」


「くそ、なんか味気ないな…………。」


最後に残った頭部、その髪を引っ掴む。これなら『超える』ものは何もないだろう。


「対象の干渉を確認浄化浄化浄化浄化浄化浄化浄化浄化浄化。」


光の楔を大量に打ち込んでくるが、全部俺の魔力回路にぶっ刺させて鎖が展開される前に俺の魔力として吸収し切る。

そして、ぐいっとその頭部を俺の顔の前に近づける。


「浄化浄化浄化浄化浄化」


「助けて欲しいか?」


「支給救援を要請。被害甚大。修復を要請。」


「助けるわけねえだろハゲ。『セイント・ブースト』。」


じわりじわりと回復する魔法が、『勤勉なる遣い』を包み込む。


「虚偽の提案を確認。確認。浄化。浄化浄化浄化浄化ああああああああああああああ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。」


ぁ、と最後に残して『勤勉なる遣い』は砂のごとく消え去った。


「………その機械みてえな喋り方、やるなら最後までやれよな。発狂しやがって。」


『リュミエール・シーカー』が世界中から光の楔が消えたのを知らせる。

元々光の楔はこの灰燼から伸びてた魔力線によって維持されてたからな。本体が消えちゃあお終いだ。


と同時に俺の体がバランスを崩し落下を始める。


(始まったか…………。)


俺は、一度封印される前にサタンを無理やり解放した。その時、完全に棺を縛っていた鎖はこわれた。それでも今まで俺が動けていたのは、光の楔が棺を縛っていたから。

つまりは、そういうことだ。

もう彼を蓋するものはない。


俺の体から闇の魔力が天空に向かって迸る。


『――――ご苦労様だ。完璧だよロイド君。』


しかし、ただ消え行くだけかと思われた俺の意識は懐かしい声によって少し引き戻された。

見れば、天空には巨大な魔王の映像が浮き出ているではないか。


「………そうかい。」


『君のお陰で僕の計画最大の障害、最後の守護者『勤勉なる遣い』は文字通り灰と化した。

これより復活するは七罪将。世界を支配するには十分すぎる戦力だ。感謝するよ。』


再び、意識が薄らいでいく。

俺の視界は、最後に天に伸びる6本(・・)の黒い柱を映した。


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