37話 ケイドロ ~3~
あけましておめでとうございます。
僕の家の目の前は北海道一の神社なので、神社に押し寄せる人を眺めて
謎の楽しみを堪能しています。
え、そういうお前は何をしているのかって?
パソコンの前に佇んでゲームしてるに決まってるじゃないですか!
「ギッハッハ!もう逃げ道はねえぜ!ざまあみろ(笑)」
俺らの目の前でドヤ顔で剣を突きつけてくる警備兵。
うん。うざい。
「チッ!」
後でフィルが舌打ちしている。俺だってしたいよ。
コイツうぜえけど、さっきのチェイシングといい今の構えといいかなりの
武芸者のオーラを出している。
一定の領域を超えた武芸者ってのは勘がいいとか言うからな。
『アース・ホール』は躱されるだろうし、『リフレクトハイド』もバレるだろう。『不滅の豪炎』とか使ったら逃げてくれそうだな。主に消火的な意味で。
そんなことして孤児のうち一人でも死んだら後味が悪いからしないけど。
とりあえず、俺はこんな状況になった今日の行動を悔やんだ。
一旦裏道へ逃げ込んだ俺達は、朝食を摂ることにした。
フィルが教えてくれたこの場所は日陰尚且つ非常にバレにくい、という
2つの利点を持っていた。だから、超安全。そして、わりかし涼しい。
見て下さい。1DKながらもこの過ごしやすいこの広さ。快適さ。
今なら一ヶ月1万円でご利用いただけます!
フリーダイヤルは0120―ふんふん―ふんふんです。ぜひ、お電話を!
そういえば、テレビショッピングが家を売り出しているのって
見たことがなかったような気がする。やったとしても1DKの部屋を
わざわざテレビショッピングで借りる奴なんていないだろうけど。
まあ、こんなどうでもいいことを考えながらくつろげるほど、此処は
安全ってことだ。一応ギルは睡魔という名のモンスターに襲われたが。
「いやー。フィル凄えな。よくこんな場所見つけたよ。」
「確かに。しかもこんな所だと大概は他の孤児が使ってるのに。」
「運が良かったんだ。たしか見つけたのは3年前かな。」
「出来ればずっと此処に居たいな。」
「やめろよ。ちょっとフラグっぽくて怖いだろ。」
「フラグってなんだ?」
「フラグっていうのはな……………。」
会話だけ見れば二次ヲタがリア充を洗脳してるようにしか見えないのだが、
決してそんなわけではない。ただ、体格的にスペックが同じくらいの奴らと
話せて楽しいだけだ。おい、そこの君、「身長(ry」とか言わない。
うん。確かにずっと此処に居たいな。
そう俺が思った矢先、まるで狙ってきたかのように警備兵がやってきた。
「!?」
思わず全員身構えるが、警備兵をズボンを脱いで小便をしはじめた。
「……………。」
多分これは小便+涼みにきた、的な感じだな。
思わず全員固まってしまった。身構えた俺達の緊張感を返せ。
そのまま、警備兵がこっちを向いてきた。
「……………。」
「……………………。」
両者の間に流れる微妙な空気。
まあ、立ちションを見てしまった人と見られた人だからな。
微妙な空気が流れないほうがおかしい。
顔を少し赤らめながら、警備兵はそそくさとズボンを履いて行っていった。
「っておい!お前ら孤児じゃねえか!ぶっ殺してやらあ!」
と思ったら襲いかかってきた。良かった。まだ抜刀していない。
多分羞恥心とかが今は優っているんだろう。
なら………。
「(アンチスリープ!)お前ら俺に掴まれ!」
「なんかわかんないけどわかった!」
ギルはまだ寝ぼけてたので俺がひっつかんだ。
全員が俺に触れているのを確認して、
(リフレクトハイド!)
身を隠した。
この『リフレクトハイド』は、俺に触れてさえいればだれでも隠せる。
勿論魔力の消耗が激しいが、俺の回復量なら5人隠しても5分は持つ。
ニュートン算だからな?単純に「じゃあ人数×待つ時間=25になればいいのか!」なんてことにはならない。
因みに、ギルは勘が作用したのか喋っていない。さすがだ。
「何!?消えた!?」
警備兵がオロオロしている。ざwまwあw
いつまでもあっかんべーしてるわけにも行かないのでぱっと彼の隣を通りすぎる。
(フィル!なんかいい所ない?)
(うーん。じゃあ、僕についてきて。)
(お!どっかあるのか?)
(まあ一応は。)
「ん?なんか変なものがいるな?ギヒヒ。姿を見せろや!」
なっ!?『リフレクトハイド』が見破られた!?
剣を振ってきたのでとっさに『マジックガード』で防ぐ。
――――――バリン!
嘘だろ!?『マジックガード』が相殺された!?
あれって昔魔物の突進を防いでいたんだが…………。
「うわあっ!」
しまった!今のでシュウが俺から離れたか!
「へっへっへ。みぃ~つけた。」
クソッ!と思ったらギルがそいつの顔面にキックをぶちかました――――
「クヒヒ。甘いぜぇ!」
「な!?」
―――――ように見えた。
何と、剣で防がれたのだ。コイツ、殺気だけで防いだってのか!?
「だけど!」
この際、『リフレクトハイド』は打ち切り、落とし穴で嵌めた。
「逃げるぞ!」
フィルの合図を号令に、いつの間にか起きていた
シュウ含めて全員に『ウィンド・ブースト』を掛け、走りだした。
「へっへっへ。やっぱし甘ぇぜ!」
は?落とし穴をジャンプで超えた!?人間かコイツ!?
そのまま俺達に走りだしてくる。
ちょっと走り方がおかしかったり、ときおり変な方向に動くが、
とんでもないスピードだ。
俺も負けじと概念魔法で色んな物を空中に出して抵抗しているが、
僅かにスピードを落として切られるだけだ。
そのニヤニヤした笑いをやめろ。うぜえ。
「ヒッヒッヒ。行き止まりのようだなぁ?」
びっくりして前を見ると、本当に行き止まりだった。
こいつ、まさか誘導してきたのか?さっきまでの変な動きはまさか誘導するための物だってのか!?
俺達は、前方以外を壁で塞がれた状態になってしまった。
冒頭へ戻る。
評価が400pに!
有り難うございます!