377話 新たなる開発
次の日、俺は王都上陸で羽ばたいていた。
『えーと、現在暗黒大陸とカンプーフの間を飛行中。スピードは恐らく一定、止まった痕跡はなし。』
『カンプーフ到着の推定時刻は?』
『午後5時ってところかな………。』
『了解です。本日の測定は終わりです。』
俺は、通信用魔道具のスイッチを切り伸びをする。
俺に頼まれた仕事は、王都の上空に滞空し、王都の四方に寝かされている光の楔の犠牲者から伸びる不可視の糸から位置を特定することだ。
一日一回。結構計算するのに時間がかかるのだ。
ただ、これだけで仕事が終わるのであれば容易い。
丁度時間が取れたので、色々急展開でずっと出来なかったあれに取り掛かるとしよう。
「クルト!久しぶり!」
「おわあ、まじかロイドじゃん!」
直ぐ様俺はクルトのいる『戦乙女の守護盾』に向かった。
クルトの弟子入りしている工房は、やはり王都のものと言うだけあって設備が整っている。
「それで、今日はどうしたんだ?この後遊ぶってんならもうちょっと待っててくれ。」
「いや、今日はここの親方に仕事を頼みたいと思っててな。」
クルトの顔が引き攣った。
「どうした、変顔して。」
「変顔じゃねえ!いや、そうじゃなくてな、親方が前の『地帝』の件でお前を気に入りすぎてロイド絡みの話になると人が変わるんだ。お前、知らないだろうけどAランク昇格のお祭りに親方突撃したからな、仕事ほっぽりだして王都から。正直気持ち悪くてな………。」
「お、おう…………。いや、でも他にコネないんだよなぁ………。」
「確かに親方以上は俺も紹介できねえわ。まだまだぺーぺーだしな。おっけ、ならぱぱっと終わらせようぜ。」
逆に俺が不安になってきたんだが。
俺は、眉をひそめながらドアを開ける。
「うお、マジか!?久しぶりじゃねえか、ロイド!」
砥石で包丁を研いでたチビおっさんが、満面の笑みで俺を出迎えた。
「久しぶり。仕事でこっちに来たんだけど、丁度時間も空いたし個人的な欲求もあって一つ開発したくなってな。おっさん、金だすから手伝ってくんねえか?」
「お安い御用よ。で、何をやるんだ?」
「これだ。」
俺は、収納袋からでっかい模造紙を取り出す。
「………?どういうことだ、これは………。」
「水ってのはよ、気体になる時に一気に体積が増えるんだ。その倍率、実に1600倍。」
「なるほどな…………。あっ、つまりこういうことか!」
チビおっさんがくるくるとタービンを回す。
そう、これは蒸気機関。カンプーフに向かう時に作ってやろうと思っていたのだが、暇がなくて作れなかったのだ。こっちの船は流石に遅すぎる。船以外にも大量に使いみちがあるはずだ。
それにしても、いきなりした体積の話を信じてくれる辺り、本当に俺のファンなのかもしれん。
「なるほどな………動力は火属性魔法か?」
「おっさん、話のわかり滅茶苦茶いいな………。火属性魔法でも良いんだけどさ、それだとこれを動かせるやつが限られる。実はこれ、船の動力に使いたいわけよ。」
「なるほどな、少なくとも今のよりは速く進めそうだぜ。確かに魔法使いは少ねえからなぁ。魔道具にしても船乗りには厳しいだろうな、値段的に。」
「そこで使いたいのが石炭なんだが、わかるか?黒くてめっちゃ火力出るやつだ。墨じゃない。」
「あれか。鉄を溶かすのにすんげえ火力がいるからな、偶に良い鉱物があったら使ってるぜ。
ただ、あれもそこそこ高えからなぁ………。あれな、掘るの大変らしんだわ。」
「マジか、もう炭鉱が出来てんのか。」
衛生環境とか大丈夫かそれ。
「炭鉱?なんじゃそら。」
「えっ。」
しかし、帰ってきたのは予想外の答えだった。
「石炭を掘る山?って言えば良いのか?とりあえず、石炭を掘るところだよ。」
「いんや、そんなのは知らねえなぁ………。石炭といやぁ、偶に山とかで足元に埋まってるとか、そんなんだぜ。見つけたら金になるから拾えたらラッキー程度のものでよ。」
つまり、認識としては偶に埋まっている珍しい燃える石、程度と………。
「なるほどな。じゃあ、本格的に石炭を掘る業者はいないわけだ。」
「というか、使いみち限られるからよ。俺らも大体は木炭で十分なんだ。高く売れるっつったって欲しがるやつも少ねえんじゃ商売あがったりだろ。」
「なら、俺達がこの蒸気機関を完成させれば石炭も抱き込んで丸儲けだな。」
俺がそう言うと、チビおっさんがニヤリと笑った。
「確かにそうだ。そのセリフから察するに何か石炭業者としてやってける方法があるみたいだな?」
「おう。この近くに石炭がよく取れるという山とかあるか?」
「あるにはあるんだが、ちょっと遠いんだよな。」
「問題ない。俺は飛べるからな。」
「そうか!そういえば闘技場でも空飛んでたな。」
そう言いながら、チビおっさんはゴソゴソと大きめの羊皮紙を取り出した。
(近隣の地図か。)
「ここの山産出の石炭ってのを一番見るぜ。」
「了解だ、日が暮れる前に帰ってきたいし、今直ぐ出発するぜ。」
「おう、いってこい。」
俺は魔翼で空に向かって羽ばたいた。
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