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372話 クロップス防衛戦 後日談4

俺とギルが対峙する。

ギルは基本的に体が温まるまで『重力魔剣』一本から始めることが多いのだが、今日は見た目重視で最初から『餓狼牙』も担いでいる。


「それでは、御二方お願いします!」


合図とともに見た目重視の光る魔腕6本をギルの周りから6本生やし取り囲む。

そのまま†無限暗夜の誘い†が如くギルを押しつぶさんと迫る。


「ラァッ!」


しかし、それを回転斬り一つで軽々と切断。

綺麗に散る魔腕の残滓とギルのパワーに歓声が上がる。


その魔腕の残滓の中、ギルが一瞬で俺に肉薄する。


「『ストロム・ベルジュ』!」


一瞬で形成された6本の水流による剣が、『風闘法』も併せて二本の両手剣を防ぐ。豪気一切使わないでこれなのだからどうしようもない。

しかし、これはまぁ殺陣なわけで、これで俺が押し負けるなんてことはない。

お互いに上に剣を弾き合い、その隙に俺は煙幕を張る。

ギルは剣で煙幕を払い、俺は距離を取った。

直ぐ様『アクア・ムイ』で水を大量に流し、それを『カルト・フリーズ』で凍らせる。

俺が闘技祭でやった奴の焼き直し、という訳だ。


「『クリスタ・ルーン』!」


そのまま、高速回転する土の槍を右手に構える。

意味もなく地面に擦り付けて摩擦で火花を飛ばす。かっこいい。


「『クラッシュ』!」


ここに来てギルが豪気を纏う。

二本で『クリスタ・ルーン』を受け止め、その摩擦でバチバチと火花が散る。あっちの剣が消耗しなけりゃいいんだが。


「くっ!」


だが、残念ながら魔力切れ。俺が一度バックステップで距離を取ると、ギルは本気で豪気を纏う。


「『撃龍脚』!」


本気の踏み込みで氷をバッキバキにしつつ、俺が乗っている大地をひっくり返す。


「うへえ!?」


想像以上のスピードで大地が俺の背を叩き、俺は思わず声を上げる。

その間にギルは縦に回転しながら飛んでくる。やべえ、下手したら死ぬぞ。あいつマジでパワーおかしいだろ。


「『ブースト』!」


『ブースト』による身体強化と人間カタパルトで上空に回避。ギルがそのままの勢いで自分で浮かべた大地を叩き切るのを確認しながら、俺は上空で魔翼を展開。

そのまま急降下し、地面に着地したギルめがけて巨大な『ストロムベルジュ』を回転しながらの一閃。


「ハァッ!」

「ぐあっ!」


当たる瞬間だけ引っ込めたので実際には当たっていない。

ただ、ギルはやられた演技をしてがっくりと項垂れた。

観客の前に立ち直り、深く礼をする。


「「「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」


拍手、怒号、野次、なんでもありの大喝采である。

ギルも立ち上がって俺に習って礼をすると、一層大きくなった。


「――――――――――!――――――――!」


司会さんが何か言っているのだが、観客がすごすぎて何も聞こえていない。

その間に、事前に雇っておいた土属性魔法のエキスパート達がギルの壊した大地をそそくさと修復。


兎にも角にも、殺陣は大成功だった。
















「うおー、すげー!動物の形をした飴なんてあんのかよ!」


「めっちゃ並んでるからやめとけ。」


式典を終えた俺達は、仮面を被って祭りを楽しむことにした。

流石にあんだけやって素顔で乗り込んだら楽しむどころではなくなる、と急遽グランさんが屋台で買ってきてくれたのだった。優しい!


(そういえば、こうやって祭りを楽しむのも前世以来か?)


思い返すと中々に忙しい日々だった。こっちに生まれてから。

こっから先はもっと大変なんだろうけどな。魔王軍がどんどん暴れてるし。


「ねえロイド!すごいよこのふわふわ食べれる!しかも凄く甘い!」


「なに!?」


わたあめ!?一体誰が!?と思って屋台を見回したら、やたら見たことのある顔がいた。


「アリエル、お前わたあめは卑怯じゃね………?」


「あんだけゴムやらなんやら売って稼いだ男の言えることですかそれ。」


わたあめを器用にグルグルしながらジト目で睨まれた。反論ができない。いや、あれはほら、みんな喜んで買ってってるし………わたあめも喜ばれてんな。


「寧ろ買っていきます?ほら、10歳児の大好きなわたあめですよー。」


「殺すぞコラ。」


しかも10歳でわたあめ好きかは微妙なラインじゃねえか。


「ロイド、シュウ、すげえぞあの変なおっさん!見に行こうぜ!」


「ぬおお!?」


反論しようとした所で、ギルに引っ張られ俺は人混みの中に突っ込む羽目となった。


「待って待って僕がはぐれるんだけど!?」


シュウを魔手で回収し、近くのステージで行われているショーを見物する。


「うーん、よく見えねえな………。」


ただ、そのショーを見ようとあたりがぎゅうぎゅう詰めになっているため、俺達は身長の都合でちらりちらりとしか見えない。


「ロイド、あの木に登ろうぜ!魔腕で頼むわ!」


「おお、いいな。」


3人まとめて魔腕で近くの木まで運ぶ。周りはステージに夢中なのか、人が飛ぶ異様な光景に声一つ上げなかった。


「すげえな、魔法も使わず人が火吹いてるぞ!」


「隣の人のカード、どうなってるの?テレポートの魔法なんて知らないんだけど………。」


「まさかサーカスが存在するとは………。」


なんでもありだな、この街。魔法のある世界でサーカスってなんだよ。

この混沌さが、面白い。いつまでもこんな調子の街で暮らしてえなぁ、と俺は思った。


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