370話 クロップス防衛戦 後日談2
「なぁ………本当にここはイタルペナか………?」
ギルマスに運ばれながら、俺は周りの景色に違和感を感じていた。
ちょっと離れていたから、とかそんなレベルじゃない。見たこともないやすっぽい露店がいっぱいある。しかも、不思議なことに商品も人もいない。ただ店があるだけなのだ。
「まああれよ、後のお楽しみってやつだな。
もうすぐ着くぞ、お前に取っちゃあ一ヶ月ぶりのギルドだ。」
ギルマスは、そう言うと勢い良くギルドの中に突撃する。
そして、大きく息を吸い込み。
「新たなAランクの誕生だぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」
(うるせええええええええ!!!!!!!!)
ビリビリ、とギルドが震える。
皆が叫び終わると、ギルマスは俺にサムズアップをした。
「という訳だ、わかっただろ?お前たち『イレギュラーオルフェンズ』はAランク到達だ。」
「いきなり耳元で叫ぶなよ………。」
「サプライズだぜ。バラしちゃ面白くないだろ?」
ううむ、耳がキーンとする。
それにしてもなるほど、確かに新たなAランクの誕生は街中で祝うって昔言ってたな。
だからああやって空の露店が出ていたわけだ。俺は完全に気絶中だったし、いつこうやって戻ってくるかわからなかったからなぁ。
「そうか、それにしてもAランクか。長………くもなかったな………。」
よくよく考えたら冒険者なってから二年経ってないんだけど。
「最年少かつ最短Aランクだってさ。」
「おお、シュウか。おめでとう。」
「他人事みたいになってるよ大丈夫!?」
「あまり実感はないよなぁ………。他のAランクに比べたら土台が違うし。」
ここでいう土台、というのは身体、魔力、豪気だ。
これが全部ボロいってなんだろうな。他の二人は違うだろうけど。
「お前の戦い方は常に綱渡りだからな。でもそれが全部成功しているんだからそれが実力なんじゃないか?俺はこのAランク昇格は妥当なものだと思うぜ。」
「グランさん久しぶり。結局真祖吸血鬼の力を借りたんだけどな。」
「それだけじゃねえだろ。聞けば魔王軍の前線を機能停止させたらしいじゃねえか。胸を張って式典に出てこい。」
「式典?」
なんも聞いてないぞ。そんな一冒険者風情にそもそも式典なんてやんのか?
「あのクソギルマス、なんも言ってなかったんだな………。ここじゃゴロゴロAランクがいるが、普通Aランクのチームってのは一つの国に一桁しかいないようなもんなんだ。つまりは国の顔的な役割も持っている。新たなAランクの誕生ってのは国外に向けても大々的に宣伝するもんなんだぜ。」
冒険者ギルド、影響力が本当にデカイな。国家間のパワーバランスにガッツリ影響してんじゃねえか。
「ってことは、祭りはかなりでかいのか?」
「ああ、すげえもんだぞ。加えてこの街は祭り好きが集まってるからな、訳わからん催しだとかも一杯あって俺は大好きだ。みんなやる気満々だし、かなり準備はしてるから夕方には祭りも始まると思うぜ。」
「俺達は何をしていればいいんだ?式典ってからにはなんか俺達も皆の前でやるんだろ?」
「そうだな、前回はでけえ広場でAランクが手を振ってるだけだったけど、勝手に皆盛り上がってたぜ。そもそも司会だとかがトークとかで盛り上げるしな。
今回もそうなるんじゃねえかな。恐らく、後でギルドの職員から話があるはずだぜ。」
なんてコミュ障に優しいシステムなんだ………。
「って、グランさんあんたまんまギルドの職員じゃねえか。」
「俺はハブられてんだぞ、察しろ。」
「あっ………。」
悲しきかな。女性が中心の社会では目付きと口の悪い男は排除されるだけなのだ。俺も前世ではボコられまくってるし、もうやだ。頼むから誰か俺を心優しい高身長細マッチョイケメンにしてくれ。
「という訳で、俺ではない誰かがお前に知らせてくれるはずだ…………。」
「皆まで言うな………。お前の心も一緒に連れて行くよ。」
いいこと言った感じだけど俺だけが死ぬわけじゃないからな。目つき以外イケメンには彗星はもっとバァッ!してもらわなければ。
「楽しそうだなお前ら…………。俺にはよくわからないわ。」
「いや、お前も金払わないと会話すら許されない時点で負け組だぞファッキンギルマス。」
「受付嬢の日頃の悪口今ここで全部ここで語ってやってもいいんだぞファッキンギルマス。」
「やめろぉ!やめてくれ俺が悪かったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「みんななんか楽しそうだなぁ………。」
シュウよ、お前はこっち側に来るんじゃないぞ。




