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368話 対魔王軍作戦 12

ニーズヘッグの顔が、憤怒へと変わる。


【いつもいつも貴様はッ!そうやって我が邪魔をするッ!】


【めぐり合わせが悪いよね、本当に。】


(あっこれマジで噛み合わないやつだ………。)


根本的にお互いにズレてるからいっつも喧嘩してる的な。

あまりにも身近すぎる状況に、俺は一瞬ここが戦場であることを忘れた。


【そもそもだ!何故貴様まで人類の味方をする!我々は五大獣!本質的には獣だろうが!】


【じゃあ君は獣だからって私達から力を奪った魔王の味方につくのかい?】


【そんなことは些細なこと!やはり貴様とは合わぬ!ここで燃えていけ!】


ニーズヘッグの前に巨大な炎の槍が形成され、音速で発射された。

だが、音速程度ならば今の俺の想定内だ。


【ちい、面倒な………。】


ズレパニ・ブロンテ(雷の鎌)』がさっくりと刈り取る。


【私はほぼ全ての感覚器官を魔王に奪われているからね。感じられるのは風の流れだけだから、反応が遅いんだ。カナルが表にでている間は彼の感覚が利用できるからいいんだけど。】


なんだその馬鹿みたいな制約は。メンタルボコボコにされる自信あるぞそれ。

だが………それでも、あの弾幕攻撃を無効化出来るというのならばありがたい。


「始めようぜ、ニーズヘッグ。正直負ける気は一ミリもしねえがな。」


張られているのは強力な風魔法の結界。生半可な魔法は発生すら許されない。

つまりは、圧倒的不利なフィールドで純粋な俺とのパワー勝負。魔腕さえ展開できれば俺に敗北はない。


【ぐ………ッ!】


ニーズヘッグも、勿論それを理解している。

だが、彼は逃げないだろう。一度愚か者と断じた奴に背中を向けるなど、彼のプライドが許さないはずだ。


ニーズヘッグの目が変わる。


【………ここを我が死地と定めよう。】


ニーズヘッグが『ラブリュス・ケマル(燃えよ剛斧)』を装備する。

だが、先程までとは違いその色は真紅。目を背けたくなるような濃い紅だ。

魔力の凝縮量が違う。


「………なるほど、ウェポン・マジックはそういう使い方もできるのか。」


普段の俺の魔力量では考えることも出来ない芸当だ。

俺も真似して『ズレパニ・ブロンテ(雷の鎌)』を凝縮する。


【見せてやろう、最強種族(ドラゴン)の矜持というものを………ッ!】


最初に突撃したのはニーズヘッグ。

天空の覇者にふさわしい高速立体機動で俺の前に瞬く間に立ち、風圧を足場にその巨大な斧を振りかざす。


「ほっ!」


それを、真横に人間カタパルトで回避。そのまま翼を使い反転。今度はこちらがその横っ腹に回転斬りを見舞う。


【その動きは見飽きたわ!】


――――――――ガイン。


ズレパニ・ブロンテ(雷の鎌)』と『ラブリュス・ケマル(燃えよ剛斧)』が衝突。

だが、魔腕に慣れてきた俺は、これをパワーで押し退ける。


【『シュバルツ・ヘルゲート』!】


【『シュバルツ・ドンナ―』!


俺を止めるための闇属性と火属性の複合魔法を、こちらも闇属性と雷属性の複合魔法で相殺。


「ウルァ!」


全力の一閃が、躱しきれなかったニーズヘッグの腹部をサクッと切り裂く。血が吹き出し、ニーズヘッグのバランスが悪くなる。

だが、無理矢理ニーズヘッグも躱しながらのムーンサルトで尻尾による強打。


「うぼっ。」


べきべき、と身体が軋む。

『ヘイレン』………は使えないんだった。

血が喉元まで上がってきたので、それを吐き出す。


【血が減れば元に戻ったときの代償が大きくなるぞ。】


「わかってる………もう大丈夫だ。」


後魔法2発で決めるからな。

心のなかでそうつぶやき、『ズレパニ・ブロンテ(雷の鎌)』を構える。

腹を裂くことに成功した時点で、俺がこの戦略を取ることは最初から決めていた。


「血の眷属よ、王の号令だ!王が元に集いその槍を振るえ!『キュロムニ・ハルシオン』!」


初っ端から最強魔法(・・・・・・・・・)

だが、魔力の消費を確実に伴って発現したはずのそれは、全くこの場に姿を表さない。


【な……何をした………!?】


「いずれわかるさ。『フルミネ・バースト』!」


『最強の魔法使い』愛用の雷属性魔法。かつて彼がくそったれ勇者に食らわせていた時のように、俺も稲妻のエネルギー体を着込む。バチバチと轟くように鳴りつづけるそれは、俺の聴覚を狂わせた。


人間カタパルトによる、超加速。


【――――――――!!!――――――――!!】


ドラゴンが何事が叫ぶ度に、フレースヴェルグの結界をぶち抜いた超火力の魔法が俺目掛けて飛ぶ。

だが、それらはすべて俺の『フルミネ・バースト』によって威力が激減。


「ぐおお………っ!」


それでも、痛い。焼き爛れた皮膚から気を紛らわせるために、ただひたすらに前へ。


【――――――――!】


俺達を何度も苦しめた巨大な尻尾が、最後の障壁が如く立ちはだかる。


(もう、慣れたわ!)


全力の回転斬りで、通り抜けながら尻尾を切断。

しかし、ニーズヘッグに動揺は見られない。ただ静かにその口を開き、ブレスを一瞬で貯める。


(真祖吸血鬼、解除!)


だから、俺は元に戻る(・・・・・・)


「『エクスカリバー』ッッ!!!!」


巨大な聖剣は、発現と同時にその剣身をニーズヘッグの口内にねじ込んだ。


【あがッ………!】

「おぶべッッ!!」


同時に、俺も代償で大量の吐血。朦朧としながらの落下を始める。


そして、(・・・・)俺の最強魔法が(・・・・・・・)ニーズヘッグを貫く(・・・・・・・・・)


【な、ぜ………。】


「遠距離に発現したのが今になって刺さっただけだわ、バカヤロー………。」


俺は意識を手放した。


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