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365話 対魔王軍作戦 9

「第一陣、発射!」


『最強の魔法使い』の号令により、上位冒険者達の本気の豪気と魔力が飛び交う。それは、間違いなく持ちうる全てをつぎ込んだ一撃。

だが、その全ては黒い炎によって呆気無く全て消滅した。


「拡散型は全て効果なし!次、収束型………ッ!?おい肉壁!」

「あいよ!『イージス』『イージス』!」


ニーズヘッグによる尻尾の反撃を、二枚の『イージス』が受け止める。


「おいおい、伝説とか謳う割りにはパワーがねえんじゃねえか?」


【手加減してやっていればぬけぬけと………そんなに死にたくば喰らうが良い!】


「第二陣、発射!」


全力でニーズヘッグが尻尾を振り上げた隙に、再び冒険者による技と魔法が通る。

だが、それらも全てが黒い炎に包まれて消え、ドシン、という大きな音とともにそのまま尻尾がギルマスへと襲いかかる。


「クソギルマス!?」


「あいつがあんなタダの質量に殺される筈がねえだろ。第三陣、今のうちに発射用意!次は貫通型だ!」


「第三陣で魔力が切れますよ!」


「わかっている!」


あまりの尻尾による威力に冒険者の一人が悲鳴を上げるが、『最強の魔法使い』はそれを切って捨てる。

そもそも、彼が死のうが生きていようが彼にとってはあまり大きなことではない。

目標はただ一つ、目の前の伝説の撃破。


「あったりめえよ!俺が死ぬわけがねえだろ!」


しかし、そのギルマス自身は穴を掘って躱していたらしく、ずぼっと本陣の中へと顔を出した。

その顔を『最強の魔法使い』は蹴り上げる。


「いって!」


「うっせえ、お前が耐えねえで誰が耐えるんだよ。さっさと前線にいけ。」


「今日のお前酷くない!?」


再びずぼっとギルマスが消えるなり、再び号令。


「第三陣、発射!」


最後の魔法達が飛ぶ。

だが、それらはそれまでのものとは格段に効果が違った。


「………ッ!命中です!命中!」


「何ッ!どれが命中した!?」


「『紅槍』さんの『グングニル』!『死骨王』様の『グレイブリーパー』!『燕姫』様の『招雷晶華』です!」


報告された全ては、ニーズヘッグの強力な鱗まで撃ち抜くことが出来なかったが、確かに黒い炎を貫通した。

つまり、しっかりと準備された複数の冒険者による貫通型の合成魔法なら勝ち目がある、と言うことに他ならない。


(ここであのチビの『黒雷』があれば違ったかもしれないが………。)


既に失われた最強クラスの貫通型魔法を思い浮かべるが、失ったものはどうしようもない。

『最強の魔法使い』は嘆息しながら最後の指示を飛ばす。


「それでは全軍、完全撤退(・・・・)ッ!街の奴らも全員避難勧告だ!目標、イタルペナ!」


「「「!!!!!???????」」」


全軍に動揺が走った。

それは、街を完全に見捨てる、ということだ。

さらに言えば、非戦闘民である市民に、Cランクでも危険が付き纏う森を突破させる、ということでもある。間違いなく7割は死ぬだろう。


「今粘った所でコイツには勝てん!一度引いて体勢を立て直す!」


【フハハハハ………いい判断だ。愚か者しかいないと思っていたが、理知的な判断をするものもいるではないか】


冒険者達が一様に耳を疑う中、ただ一人ニーズヘッグだけがそれを称える。


「………確かに言う通りだな。お前ら、さっさと避難勧告してこい!」


「ギルマス!?」


【そうだな、では我もその判断に免じて10分間だけ歩みを止めてやろう。その間に逃がすn………っ!?】


だが、ニーズヘッグは言葉を続けることが出来なかった。

単純に、吐いたからである。


「FOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」

「orrrrrrrrrrrrr」


「「「!!!!!??????」」」


全員が、目を疑った。


「ただいまッ!」


彼らの前に立っていたのは、先程死んだはずの『不死身(イモータル)』ロイドだった。
















「ど、どうやってやった………?」


『最強の魔法使い』が目を点にしながら尋ねる。


「胃液を逆流させて戻ってきた。偶々胃液にぽちゃりする前に留まれたからな。」


皆、一様にポカーンとしている。

まあ、ばりっばり丸呑みにされてたしな。


「お前というやつは………。

丁度いい、全軍!さっきの指令は取り消しだ!だが準備はしておけよ!」


「「「了解!!!!!」」」


ゼンマイを巻かれたオモチャのように、いきなり慌ただしく動きだした。


「さっきの指令って?」


「全軍撤退の指示だ。それより、お前にはやってもらうことがある。この街全ての命運を限る任務だぞ。」


「なんだ?」


「真祖吸血鬼の力を借りて、奴を倒せ。あの黒い炎は全てを呑み込むが、貫通力の高いものなら貫けなくもない。お前の『黒雷』なら造作も無いはずだ。同じ、『五大獣』ならな。」


「『五大獣』?あいつもなのか。見た目的に火って感じがするけど。」


「その通り、火の五大獣、邪竜ニーズヘッグだ。」


確かに、そのレベルだと五大獣やサタンのおっさんでないと対抗は厳しそうだ。目の前の男は魔力切れだしな。


(行けるか?)

(ヤツの相手ならば何度もしています。魔力も充分貯まっていますし、五分五分までは持っていけるでしょう。)


五分五分か。

なら、あの人(・・・)の助けが必要だ。


「あ、おい!ロイド!どこへ行く!」


最高の助っ人(・・・・・・)を呼びに行くんだよ!」


俺は街の中へと走り出した。


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