35話 ケイドロ ~1~
「敵襲だー!敵襲だ!」
「起きろ!おい!死にてえのか!」
「わが水の力集いて彼の者を蝕む眠気を払え『アンチスリープ』!」
うわー。めっちゃパニックじゃないですかやだー。
取り締まりは三日後って聞かされていたから油断してたのかな。
って笑い事じゃねええ!
と言っても俺ができることねえんだよなぁ。
いうことだって「警備兵来るから逃げろよー」くらいしか無い。
あ、そうだ。一つ言い忘れてた。
「あと20分位で来ますよ!」
「「「そっちも先に言えやああああ!!!!!」」」
しくじった。テ、テヘペロ!?
まあでも更に何人か起きたし言っといて良かった。
さて、俺らはもう行きますか。
「おいおい、ギルはまだ寝てんのかよ…………。」
「ごめん、ちょっと『アンチスリープ』掛けてあげて。
コイツ朝まで起きない奴なんだ。」
「はあ。(アンチスリープ!)「ふぁあああ。あれ?何で皆こんなに
オロオロしてんの?」…………よし、起こしたぞ。」
「ギル、警備兵だ。あいつら予定変更して今から攻めてくるらしい。」
「は?マジで!?じゃあさっさと行こうぜ!」
「ちょっと待った。そこにある袋も持って行こう。
一応食料と煙玉を入れといたしさ。」
「おお!用意周到だなフィル!あれ?昨日そんな事してたっけ?
ずっと話していたようなきがするんだけど。」
「さっきロイドの声で起きた後こっそり食料庫から拝借したんだ。
どうせ此処は焼かれるし。だったら先にとっちゃおう、てわけさ。
後煙玉はそこに落ちてたから使わせてもらったよ。」
「「「ナイス!」」」
見事な仕事っぷり。さすがはフィルだ。
「ハハ…………。で、まずはどこに行く?
「まずは警備兵のいた落とし穴とは逆方向に行こう。」
「オッケー。あれ?そういえばさっきからシュウの返事がないな。
おーいシュウ。て立ったまま寝てる!?」
「プッ!おいおい、妙なことが出来るようになったな。」
「とりあえず起こすぞ。(アンチスリープ)」
「ご、ごめん!つい寝ちゃった!」
「シュウもそういう面があるんだな。ククッ。」
「そういうロイドは眠くないの?」
顔が赤いぞwまあ、5歳だし眠いのは仕方がないだろうけどさ。
「昨日話しただろ。俺は眠くなりにくい体質なんだ。」
「うわあ。いいなあ。」
いや、全く良くないぞ。結構精神的にくるから。
「困ることばかりだけどな。第一あまり休めないから。
そんなことはどうでもいいから早く出よう。
出来ればもうそろそろ警備兵が来るからもう一度落とし穴にはめておく。」
「任せた。じゃあスラムの中央で集合しよう。」
「了解、フィル。スラムの奴らに襲われないように。」
「大丈夫だ!このギル様の勘があればな!」
「勘って聞くと全く大丈夫な感じがしないけどな。て、おい!
シュウまたうとうとしてるぞ!」
「うわ!まだ眠いんだよ~。うとうとしてたら起こしてね、フィル。」
「いいよ。ロイド、先に行ってるから。」
「じゃあな!」
彼らと別れると同時に俺は『マジックサーチャー』を使う。
探すのはさっき溺れさせた魔術師。
お、今丁度抜けだしたな。ナイスタイミング。
『ウィンド・ブースト』を最大限に発動して彼らの元へ走った。
「みーっけ。」
警備兵達がようやく最後の一人を引っ張りだしているところを見つけた。
なんか松明が8個に増えてる。まあいいや。
(アース・ホール!)
―――――ボコッ。
「!?またかよ!」
あれ?松明より先に落とし穴使ったほうが良かったんじゃね?
ま、結果オーライだしいっか。
…………もうちょい深くしとこ。安全性のために。
――――ボコッ。
「っぐほああ!?」
「誰かー。助けてくれ~。」
そうか、助けを呼ばれるとキツイな。蓋をしとこう。
(アース・ホール)
概念魔法で落とし穴の上にでっかい岩を落とす。
大丈夫。あとで片付けるから。人殺しはしない。
道徳的に考えたら物盗ってるこっちのほうが悪いし。
さて、スラムに行くか。
全速力で俺はスラムの中心へと向かった。
あれ?あそこキルトさんの家あったような……………。
うまく交渉して入れてもらえたりしたらいいな。
「よう!無事落とし穴に落とし終わったぜ。」
光の魔力球で周りを照らしながら俺はスラムの中央に辿り着いた。
勿論、フィル達はそこにいた。
「よっしゃ!って何その光!」
「ああ、光属性の魔力球だよ。触れて魔力さえ出せば明かりになる。
どうだ。凄えだろ。」
「確かに凄い。けど周りを見て見よう。
此処はスラムで真夜中。そんな中で強い光なんか出すとか君はb………。」
「うん。よくわかった。悪かった。だからストップ。その後に続く2文字に
俺のガラスのハートが多少傷を負うかもしれないから。」
「ガラス…………?」
「それより、面白い話がある。
今俺達が立っている地面があるだろ?この下に実はとある人が住んでいるんだ。どうだろう、匿ってもらうのは。」
「なっ!よくそんな人のこと知っているね。」
「なんかダメそうだと俺の勘が告げているんだが…………。」
「うーん。ギルの勘が駄目だって告げているなら無理なんじゃないかな。」
フィル、ギル、シュウの順番な。
「とりあえず頼むだけしてみようぜ。おーい。キルトさーん。」
――――――――――シーン。
あれ?寝てるのかな。でもあの人実は俺と同じ体質であまり眠れない人って
リーダーが教えてくれたし。だったら起きてると思うんだが…………。
「ちょっとタライでも落とすか。」
「タライってあの鉄の変なやつか?」
「うん。多分地下になら音が響くと思う。」
――――――――――パコーン。
返事がない。シカト中のようだ。
――――――――――パコーン。
返事がない。睡眠中のようだ。
――――――――――パコーン。
「ああああ!うるさい!資料を整理中なんだから集中させてよ!」
あ!野生のキルトが飛び出してきた!
じゃなくて。
「すみませーん。ちょっと急用だったもので。」
「そうなの?まあとりあえず話は聞くよ。声が響いてスラムの人が起きると困るから中入って。」
さっき大声出してましたよね、キルトさん。
よくよく考えたらタライ落としてパコンパコンさせてる俺もうるさいか。
階段を降りると尋常じゃない量の資料が山積みにされているのを見つけた。
あれを整理してたのか。ちょっと悪かったな。
「いいよ、話してみて。あ、そうだ。『アクア・ブースト』も掛けてよ。
整理が早くなるから。」
「(アクア・ブースト!)
ちょっと今回は頼みたいことがありまして―――――
「前にさ、此処にはいさせないって僕言ったよね?」
「は、はい。」
事情を話した俺は速攻で正座をさせられ、説教を喰らっている。
思い返してみたらリーダーにそんなことを言っていた気がする。
昼間の話を忘れるとか馬鹿か俺は。くっ。心に傷が。
それにしてもヤバイのはキルトさんだ。
何と笑顔を浮かべながら『アース・ランス』を脅迫のように
俺達に向け、資料を片付けている。怖すぎる。
(だから言っただろ?俺の勘をもう少し信じろよ。)
(んなこと言ったってねえ。そんなの解るわけ無いじゃん)
あと、後でさっきから小声でヒソヒソ話すの止めてくれ。
「解ったなら帰って。僕は此処がバレるのは嫌なんだ。」
『アース・ランス』を2本に増やし、告げられる。
俺は黙って首を振った。勿論縦だぞ?
横に降ったら多分俺は燃えてたであろう。
キルトさんが『アース・ランス』を消すと同時に俺達は逃げるように外へ出た。
「いやー。失敗したわ。スマン。」
とりあえず謝っておく。
「やっぱり俺の勘に従うべきだったんだ。ハッハッハ。これからはいくらでも俺を頼っていいぞ!」
「賛成したのは俺も同じだから。おあいこで。」
「それより、これからどうするの?」
確かに。どうするか。特にやることはねえし。そうだ。
「まずは遠くに行こう。今はまだ夜だから、あまり追いかけられにくい。
だったら今のうちに離れておこう。それに皆寝足りないだろうから。
大丈夫、俺が見張りをする。」
「そうだな!そうしよう!眠れるのなら大歓迎だ!」
もはやギルは勘と眠気にだけ従っているような気がする。
「寝られるの?やった!僕、まだ体がダルイんだよ。」
「でも、どこに行くんだ?」
「北西の門の側だ。あそこの門番は大抵居眠りしている。
ここから近いし、警備兵も門番がいるから来ないだろ。」
「成る程!たしかにあそこの奴らはいつも寝てるな!」
「だったらさっさと行こうよ。眠くて仕方がないんだ。」
「おいおい、あまり大声を上げるな。門番が起きるぞ?」
「ククッ。あそこの奴らはちょっとやそっとじゃ起きなさそうだけどな!」
軽口を叩きながら俺達は門へと向かった。
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