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360話 対魔王軍作戦 4

翌朝。

非常に活き活きとした冒険者達が再び城門の前に陣取る。


「最高の気分だ!」


「どーんとこい魔王軍!」


(こいつらばっかり楽しみやがって………。)


こいつらがこんなにも機嫌がいいのは、昨晩俺の『マジック・ティラン』を使った広範囲『アンチポイズン』で完全解毒をしたからである。

死ぬほど飯を喰らい、酒をがぶ飲みして気持ちよくなり、そのまま就寝。寝てる間に『アンチポイズン』によって解毒されたため、爽やかな朝を迎えたわけだ。

そう、俺以外はな!ふはは!敗北が知りたいぜ!


対するは昨日とは打って変わり魔族という精鋭部隊を全面に押し出した陣形。

地上を前回のように大量のモンスターで埋め尽くし、大規模魔法を防ぐために空中に飛べる魔族を配備。

魔法での攻防は、基本的に距離が空いてさえいれば防御側が圧倒的に有利なのだ。魔法は距離を飛ぶと威力が減衰しやすいからな。

俺が致命的な魔力不足を抱えながらも魔法戦で一定の戦果を挙げることができるのはこれも関係している。俺は認知範囲どこからでも魔法を打てるために至近距離で魔法をぶっ放せるし、距離を保ちやすいからこそ『セイクリッドガード』で魔法を防ぎやすい。

『距離』というものは大きい。それは異世界でも同じなのだ。


(となると、昨日みたいな展開は望めそうにないな………。寧ろ逆もありえる、ってところか。)


魔族の魔力量は基本的に人間の3倍4倍ある。『最強の魔術師』のような例外もいるが、基本的に魔法戦では人間側が厳しくなってしまう。

ただし、彼らは人数が少なすぎる。肉弾戦で乱戦に持ち込めば討ち取っていくことは可能だろう。たとえ敵が空をとぼうとも、こちらだって生身で10メートルは軽々飛ぶような化物が揃っているのだ。

つまり。


「全軍、聞けぇ!敵はこの日を決戦日とした陣形を取っている!今日さえ勝てればこの戦いは簡単にこちらに転がってくるわけだ!死ぬ気でぶち転がしてこい!」


「「「おうッッ!!!!!!!!!」」」


魔術による先制攻撃を考えていたからか、いち早く『最強の魔術師』もこの陣形が意味することに気づけたみたいだ。

だがしかし、戦意を高め、作戦を伝えたのはいいものの、こちらには開戦に踏み切れるものがない。

敵の意表をつけるものがあれば、敵が立て直すまでの間こちらは殴り放題となるんだけどなぁ………。

同じことを考えているのか、『最強の魔術師』も爪を噛んだまま敵軍を睨んでいる。

が、見ただけでは穴という穴は見当たらない。均等に魔人が飛んでいる。


という訳で、『リュミエール・シーカー』で魔力量の差異を測ろうと大きく展開した瞬間。

偶々、本当に偶々、俺は気がつくことができた。


(この反応は………まさか『繭』ッ!?)


「9番近くに『繭』が出現するぞ!おまえら気をつけろ!」


「「「――――――――!!!!!」」」


だが、俺のそんな声は少しだけ遅かった。

『繭』から現れた魔人3人が直ぐ様背後から冒険者達を串刺しにする。

追い打ちをかけるように、『繭』から溢れるようにゾンビたちが飛び出してきた。いつぞやの無限再生グロ巨人もぞろぞろと現れる。


(不味い………ッ!)


「『フルミネ・バースト』!」


「『ルドラの息』!」


「『ティアマトの嘆き』!」


直ぐ様上級魔法の雨が『繭』へと降り注ぐが、着弾する頃には『繭』が消失。色とりどりの魔法はクレーターを作るだけに留まる。

それだけではない。


「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」


背後から魔族の大群が襲いかかる。

昨日の鬱憤を晴らそうとしているのか、敵の顔はみな裂けるほどの笑顔である。

そんな奴らと、三人の魔人を含めたアンデッドの軍の行進による挟み撃ち。


(包囲される………ッ!)


包囲されると、こちらの範囲攻撃魔法は効果が薄くなり、敵のは効果絶大となる。

だがしかし、あまりの突発的な出来事の連続のせいで如何に百戦錬磨の上位冒険者といえども焦りが伝播し始めていた。特に、混乱でコミュニケーションが取りづらくなってしまう。


「9番が落ちた!」


「1番もだ!」


更に、次々と落ちる櫓たち。俺自身、傷ついた奴らの回復で頭が回らなくなり始める。


(ああくそ、このままじゃ総崩れだ………!)


俺の頭の中を絶望的なビジョンが掠めた瞬間、空から何かが落ちてきた(・・・・・・・・)


「『マキシマムギガントアームズ』!」


ドン、という強い衝撃と共に、前方から押し寄せてきた魔人の軍の頭を潰すように巨大な両腕が落ちてきた。そして、聞き慣れた声が混乱していた戦場に響く。


「世界最強の盾様の登場だ!お前ら今すぐそのへっぴり腰を治しやがれッ!!!!!!!!!そして何も考えずに殴り込め馬鹿野郎共!!!!!!」


本気の叫びに呼応するかのように、男たちの怒号が響いた。


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