358話 対魔王軍作戦 2
「遅い!何やってたんだ!」
「ただただ申し訳ない………。」
飛んでクロップスの冒険者ギルドに入っていった俺は、『最強の魔術師』に早々に怒られた。
「まあいい。説明は全てそこにおいてある紙を読んどけばわかる。それより、『イレギュラーオルフェンズ』には今回重大な任務があるんだ。」
「またか。」
俺達重大任務多いな。つい一昨日まで重大任務やってたばかりだぞ。
「ギルは………どっかいったか。さっきここに残るように言っといたんだが………。」
俺が言えることではないがギルにそういうことを求めてはいけない。あいつは本能で動いてるし。
「お前さえ残っていればいいか。やること自体は単純で、戦争中前線で怪我人を治しながら回って欲しい。」
「3人で?あと俺は一旦腕とか千切れると治せないぞ。」
最強回復魔法の『ヒネトヘイレン』が使えればいいんだけど………あれどうやっても無理なんだよな。
「シュルドから聞いたが、二人共鍛えて貰ったんだろ?ならいけるはずだ。きつくなったらすぐ帰っていい。それと、今回参加してるのは全員が上位冒険者なだけあってそう簡単には惨事にはならないだろう。それより怖いのは流血による体力の消耗だ。」
確かにそんな話を聞いたことがある。出血死なんてのがあるくらいだしなぁ。混戦の中で回復して回れる、となると人に触れずに回復魔法が使える俺くらいしかいない。
「なるほど。そもそも俺達自体火力はギルしかいないしな。」
『イレギュラーオルフェンズ』自体いっちゃえばタダのBランク冒険者である。愚直に戦闘に参加するなら支援に回ったほうが強い。
それに、俺の攻撃手段は人相手になら有効なのが多いが、相手がモンスターともなると非常に面倒くさい。シュウはそもそもカウンター以外ないしな。
「そうだ。ただ、意外と盾専門となれる奴がいるチームは少ないからな。そういう面では、お前たちは比較的事故なく行けるはずだ。全員小回りが効くのも今回の抜擢の理由だ。」
とは言われたが、我ながら危険な立ち位置だ。が、確かにこんな事ができるやつが他にいるか?と言われるといない、と言うしかない。
いつもであれば後方に大量の低ランク冒険者が支援用にいるのだが、今回は立地の問題上低ランク冒険者の殆どがクロップスの方々だ。そうするとどうしても手当というのは薄くなる。そう考えれば確かに重大な任務だ。
「なるほど…………それで、侵攻はいつなんだ?」
「推定だが2時13分頃だ。」
はあ、と思いながら手造り時計をチェックする。
「………後40分くらいしかなくね?」
「そうだ。あちらはかなりのスピードで来ているからな。」
大群って進軍遅いイメージあるけどな………。
「って、こうしちゃいられない!シュウ!ギル探しといて!宿で俺はチームの荷物を纏めとくから!」
「ええ!?ギル探すの難しいんだよなぁ………気がついたら家に戻ってたりするし………はぁ。」
前みたいに爆薬が暴発するとかあったらマジで死ねるぞ………。
―――――カーン!カーン!カーン!カーン!
「来たか!」
警告の鐘が街中に鳴り響く。4度鳴らされたら魔王軍の襲撃。そう先程回収した紙に書いてあった。
「準備は?」
「丁度終わった!行くぞ!」
「「了解!」」
避難誘導はしっかりと行えたらしく、宿屋のおっちゃんも何処かへと消えている。魔王軍の繭による侵入を防ぐために一箇所に固まってもらうわけだ。
呑気にリンゴを齧っていたギルを引っ張って、3人で一気に先程までいた前線へと駆け込む。
「おお!すげえ数のモンスターだな!」
「シャリシャリしながら言うな!そら、『最強の魔術師』が魔法を詠唱してるぞ!ぜってえでかいやつだ!構えろ!」
想定通り、敵は西のダンジョンからの攻撃。理屈は分からないが恐らくダンジョンからモンスターを引っ張ってきているのだろう。視界を埋め尽くすほどのモンスターの大群だ。
更に一番後ろには巨大すぎるドラゴンが一匹。しかもなんか黒い。物凄く。恐らく大将格だろうが、それにしても豪華すぎやしないだろうか。絶対これ後ろの方に魔族とかいっぱいいるしな。
なんて観察していると、天空から閃光と共に隕石が降ってきた。
――――――――――ドオオオオオオオオオオン!!!!!
「のわあああああああ!!!!??????」
地面が揺れ、衝撃波で建物はミシミシと軋み、そして見ていた奴らもひっくり返る。絶対これあの男魔力全部使い切ったぞ。
「………うええ、痛えなぁ………おいお前ら、大丈夫か………うあっ!?」
起き上がって前方を確認すると、巨大クレーターが出来上がっていた。魔王軍の、ど真ん中に。
ここに、ギルマスのバカでかい声が響く。
「お前らー!敵は分断した!今すぐ叩けゴルァ!」
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」
待機してた冒険者が超速で飛び出す。わけのわからないものを見たのもあってみんな興奮マックスである。ああくそ、おいてかれてたまるか!
「ギル、シュウ!俺達は援護だ!行くぞ!」
「「おー!」」
俺は『マジックガード』を展開し、飛び乗った。




