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352話 スラム街制圧作戦 10

流石にある程度は基地から人気を減らす必要がある、ということで俺のように指名手配されてる奴を除いて卒業組が一度街に入り直すことにした。

上に魔王軍の情報が入っていたのか、平時に一気に15人もの冒険者が街に入っても関所で怪しまれることはなかった。


「そんじゃ、これが費用ね。」


『リフレクトハイド』で隠れた俺がずっしりとした袋を渡す。因みにこれは安い収納袋だ。

周りから見れば何もないところからいきなり金が出てくる錬金術もかくや、という光景なのだが、周りのやつは気にも留めない。時間的に忙しい時間を選んだので当たり前ではあるけど。


ここから彼らは外からじゃないとできない仕事に入る。

混乱を防ぐためにここから少しずつ冒険者がこの街に駐屯する予定なのだが、彼らの中で高位の事情を理解する冒険者とコンタクトを取る。

よしんば今の策が上手く行ったとしても上手くスラムを混乱状態にし続けられるとは限らない。

そうなれば力押ししかない。力押しするなら彼らの協力が必要になる。

後は食料調達だ。流石に俺の収納袋だけで二週間は持たん。


「後は任せたぞ。」


袋を受け取ったクルトが『リフレクトハイド』越しに俺を見る。

ここから彼らは直接スラムに関わることはほぼなくなる。連絡をとりあうのが難しいからだ。


「全力で任された。朗報を待ってろ。」


「おう、言ったな?」


俺達は肩を叩きあった。

……俺は透明人間だったけどな。














「大佐!3号の撤退が遅れています!」


「問題なし!既に魔力反応は補足済みだ!」


その晩、俺達は同じく襲撃をかけたのだが、爆弾の配合を少しミスって火力が上がってしまった。

要は建物をぶっ壊してしまったのである。お陰でみんなが一瞬はぐれてしまった。

まあそれも俺の『リュミエール・シーカー』と魔腕で回収したわけだが。


「あっぶねー!死ぬかと思った!」


「悪かったよ、次は慎重に行く。」


徹夜が祟ったのだろうか。特に爆薬の扱いには気をつけているつもりなんだけどなぁ。

『マジックガード』に全員を乗せ、そのまま次の目的地へ爆走。

時間的にはまだまだ余裕がある。やはり正解だ。2つ行ける。


調査班から受け取った地図を片手に、夜のスラムを全力疾走。

一見静かに見える夜のスラムだが、実は昼よりも危ない。夜専門の盗人とかがいるので、空を飛べるか飛べないかでは大きく変わってしまうのだ。

いつもはすぐ基地に戻るから安全だったけどな。何かあったら助けが来る。


「おー、みえたみえたー!」


15分程で目的地が視界に入る。

やはり5人乗りだと流石に速度は落ちるか。


「よし、もう一回いくぞ。手口は同じ、屋上から侵入だ。」


「「「いえっさー!」」」


ゆっくりと屋上に降り立ち、『アース・ホール』を協力して使い子供がすっぽり入る程度の穴を作る。

そこに『リュミエール・シーカー』を展開した俺が潜り込み、安全確認をした後手招きで4人を呼ぶ。

やけに静かなので、『リフレクトハイド』を使わずに分散して動くことにする旨を伝える。

迅速な行動は結果的にかなり生存率を上げてくれる。


「それじゃ、各自自爆しないように。今回は大丈夫だ。」


「「「らじゃー!」」」


このチームは爆破班なので全員が火属性魔法を使える。

彼らもプロであるので、俺も彼らを信頼して早速床に『アース・ホール』で穴を開ける。

首を突っ込んで確認すると、小さいが話し声が聞こえた。とりあえず人はいる。もぬけの殻ではなくてよかった。

音を『ウィンド・ロール』で消しながらするりと着地し、そのまま中を走る。


すると、右手側から爆破音が聞こえた。


(おっ。)


つまりは奴らを発見した、ということだ。音的に壁を破壊したな。

爆音が鳴り響いた直後、周りからバタバタと音がする。流石に起きるよな。

だが、有難いことに敵は混乱状態にあるらしい。大声で「なんでだ!?今日はもう二回襲撃があっただろ!?」と聞こえるのを聞いて、俺は口元を歪める。策が上手く行って喜ばないやつがいるかって話だ。


早速『アース・ホール』で再度床に穴を開けると、声が途端に大きくなった。この階だな。

魔腕を体に巻き付け、端を今作った穴に取り付ける。


そのまま魔腕を伸ばすことで宙を高速移動。

下は広間だったようで、男が15人ほどいた。


「おい!奴が自分から来たぞ!」

「ひっ捕らえろ!」


俺を見るなり叫んで魔法を打ち出すが、全て『マジックガード』で弾く。


(『ゲイル・クラーク』!)


更に風の拳を展開しポコポコ殴りつける。ポコポコなんて可愛らしい表現を使ったが実情はそんな可愛くない。顔面を真正面から殴るのであっちは鼻血だらっだらだ。


「ち、ちくしょ「ドゴォ!」


追加で爆音が轟く。

彼らの表情から絶望がにじみ出てきたところで俺は自分を引っ張って離脱。

すぐに床にかんしゃく玉を二回叩きつけて鳴らす。


パン!パン!


建物全体に響くこの音は撤退のシグナルだ。

『リュミエール・シーカー』を展開し直して屋上まで戻る。


「らくしょうすぎた!」


途中でちびっ子共と合流し、天井を爆破してすぐに『マジックガード』で空に飛び立つ。


「違いない!」


俺達はのろのろと三日月をバックに基地に戻った。


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