349話 スラム街制圧作戦 7
「総員、撤収!」
「「「アイアイサー!!!」」」
ちびっこ4人を抱えて基地の一つに乗り込んだ俺は、瞬く間にその中をしっちゃかめっちゃかにし、パニックに陥れることに成功した。
前回よりはしょぼい場所だったので、危なげもなく煙幕を炊いて号令を発し、屋上に上がる。
「点呼!」
「ハッ!」「トゥー!」「スリー!」「フォー!」
「オッケイ!」
^v^な表情で無事を確認し終えた俺は、そのまま俺達の隠れ家へ帰還。
戻ってみると、もう片方を潰しに行っていた先生率いる精鋭部隊も帰還していた。
「ロイド、その様子だと無事成功したみたいだね。」
「余裕だったわ。それより、10人位人が少ないような気がするんだけど………。」
ギルやシュウといった、俺と一緒に来たメンツがいない。
「ああ、彼らなら調査だよ。時間がないからね、みんなができることを手分けしてやってるんだ。」
「なるほどな……。」
彼らの戦闘力はこのスラムでは過剰とも言えるほどだから、問題はないだろう。
ここでこのスラムの戦闘力を俺が見た感じで解説をすると、魔法はDランク冒険者級、武術は我流が多いのでEランク冒険者と大差はない。数だけは多いけどな。
………あ。
「そういえば先生、加護持ちってここではどうなってるんだ?」
俺達はスラム時代加護のことを知らなかった。イタルペナに行って初めて知ったわけだ。ギルの超感覚も勘で済まされていたしな。
「うーん、やっぱり存在を知らない人も多いよね。けど本能レベルでそれを認識して動いてる人も多いよ。そういう人は僕らでも気をつけるべきだろうね。加護がどれくらい強いかもわからないし。」
「そういうもんか。」
先生が言うのだから俺も気を引き締めなければならない。加護の力だけでAランク冒険者になったという人もいるくらいだし、やっぱり加護の力は絶大なのかもしれない。
となると、今の実力に慢心して鍛錬を欠かすのは良くないな。
俺が体を動かすために外に出ようとすると、後ろから先生に呼び止められた。
「ロイド、後ろにいる彼らのことも気遣ってやりなよ。」
俺が後ろを見るとそこにはさっきのちびっこ4人。全員あくびをして眠そうにしている。
「もしかして、俺の指示待ち?」
「リーダーが言うことを聞け!って言ったから!」
「そ、そうか。もう寝ていいぞ。」
「「「はーい!!!!」」」
ちびっこがタタタと走っていなくなる。
「………すげぇなぁ、リーダーの人望。」
「ここで唯一の大人なのもあるんじゃないかな。リーダーは人の言うことも聞くし決断力もあるしね。」
「そう考えると確かにそうだな。」
頼れる大人が一人もいないってのは存外に厳しい。特にスラムなんて弱肉強食そのものだしな。俺自身、リーダーがいなければそこらでのたれ死んでた可能性が高い。
そのリーダーが全力で協力してくれているのだ。俺自身に妥協は許されない。
俺は、『黒雷』の鍛錬をするために再び外に出た。
(『ウィンド・ロール』、『ストロム・ベルジュ』!)
『風闘法』の体捌きを維持したまま、大量に展開できる『ストロム・ベルジュ』で敵の逃げ場を減らし、俺は仮想敵の木へと左手を向ける。
「『黒雷』!!!!」
左手から迸る黒い稲妻が、闇夜を切り裂いて木を炭化させた。
「おー、すげぇパワー!自主トレか?」
後ろから声がしたので振り向くと、そこにはさっきまでいなかった10人がいた。
ちなみに今の声はギルだ。
「まだ『黒雷』の使い方が甘くてな。俺はどうも『エクスカリバー』みたいなリスクある大技は苦手らしい。」
新しい武器のお陰でリスクが軽減できるとはいえ、やはりその状態での魔力運用には支障が出る。
特に『黒雷』を使うような戦いの中ではそういうちょっとした違和感が勝敗を左右するので尚更だ。
俺が左手をパチパチしていると、リーダーがぽかん、としながら俺の左手を見ていた。
「お前、その雷はどこで得た………?」
「ああ、色々へんちくりんなハプニングがあってさ。なんやかんやで五大獣の真祖吸血鬼ってのが俺の中に封印されたんだ。この雷はその魔力回路の一部を使わせてもらっている。」
事情を知らなかった人も多く、結構な人の頭に疑問符が浮かんだ。何言ってんだこいつガ○ジか、みたいな感じだ。
だが、リーダーだけは血相を変えて何やらブツブツ言い始める。
「リーダー………?」
「ロイド、今すぐ来い。重大な話だ。」
「ちょ、ちょ!?」
俺は腕を引っ張られ森のなかに引きずられていった。




