348話 スラム街制圧作戦 6
火薬で壁を爆破した俺は、そのまますかさず煙玉を投げて視界を奪う。風魔法で自分の視界を確保し、爆破してできた穴からふらふら飛んで逃走。
「我が火の力集いて彼の者を撃て!『フレイム・バレット』!」
(『マジックガード』!)
後ろから次々と飛んでくる火球を『マジックガード』でガードしながら『ヘイレン』で斬られた背中を回復し、体勢を立て直す。
だが、ふらふらとしか飛べなかったせいか俺の近くにどんどん人が集まりだしてしまう。
(『セイクリッドガード』!)
流石に集中砲火は耐えきれないため、光るからとかは言ってられずに『セイクリッドガード』を使用。
位置がバレバレになるが、無理矢理耐えきって魔法の届かない領域まで脱出。
「死ぬかと思ったぞ……………。」
未だに痛みには慣れない。背中を切られた時はあっ死んだなとか思った。
まあ、結果生きてたんだしセーフセーフ。
『リフレクトハイド』で身を隠し俺は基地へと舞い戻った。
「なるほどな、中々ビッグな情報を持ってきたじゃねえか。」
リーダーの機嫌が滅茶苦茶良くなっていた。
「それにしても本当に存在してたんだね………『戯神ロキ』だっけ?」
先生が先程俺の口から出てきた名前を反芻する。
「別にそれで何か特殊な能力を持っているわけじゃねえけどな。組織内で偉い奴らは神の名を名乗るらしい。一種の格付けというか、まぁそういうもんだな。」
「っつう噂に過ぎなかったんだけどよ。ロイドの話を聞いているとどうも本当だったみたいだぜ。」
俺は知らなかったがな。まあそんな権力がどうたらこうたらなんて一ミリも考えてなかったし。
こういう辺り、ジンとリーダーは詳しいようだ。リーダーなんて滅茶苦茶敵視されてたし、いやでも関わりがあるのかもしれない。
「でもさ、となりゃあ話は簡単じゃね?乗り込んでしばけばいいだけじゃねえか。意外と簡単に乗り込めそうだしさ。」
孤児の一人がそう提案すると、皆が次々とそうだ、そうだと声をあげる。
だが、リーダーはあほか、と一言で却下した。
「おめえらロイドの話聞いてたのか?どう考えてもあっちは警戒するだろうが。」
「じゃあだめじゃん何見つかってんだよー!」
「悪かったなぁ!?」
言い訳したいが出来る材料がない。確かに俺がミスらなければ余裕で今晩クリアだった。
「確かに見つからなけりゃあ最善だったが、別に他の手がないわけでもねえんだ。」
だが、それをリーダーは否定する。
「無理じゃん!乗り込めないし!」
「だったら他のところに乗り込めばいいだろ。そして混乱しまくって防御が薄くなったところにズドン、だ。」
シン、と基地が一瞬静まる。
「………おお。」
誰かの感嘆の声が響き、そして。
「いいぞ!めっちゃ乗り込む!」「侵略だ!!!」「リーダー天才!」「まずは!」「視察!」「次に!」「計画!」「最後に!」「実行!」「必要なものは!」「美味い飯!」
大合唱。外に漏れないように声を響かせない辺りプロな何かを感じる。
「………今の奴ら仲良いな。」
「僕らはそこまで仲良くなかったからね。いざという時に情が残ると共倒れになるっていうのがあったし。」
普段落ち着いていて面倒見のいい先生だが、こういうところはドライだ。というよりは、どこまでも効率を求めるというか、そんな感じである。
「今の世代は連携させるとかなり強えな。偶々年長組が捕まっちまったせいでチビばっか残ってるんだが、そうなるとどうしても一緒にいないとやられちまったりする。それでめちゃくちゃ連携を練習したんだわ。」
「はえー、じゃあ二人がかりでやったりするのか。………侵入だと不利じゃね?」
「そうだな………でも、今回みたいのが珍しいとは思うぜ?」
リーダーの言う通り、侵入なんてのが必要とされることはあまりない。逃げるほうが100倍大事だしな。
「だからといって、楽観視する理由にはならないぞ。」
「いーんだよ、逃げれりゃあいいんだ。侵入された、っていう事実が更なる混乱を招いてくれるはずだ。」
「そこまで言うんだ、他に勿論あてはあるんだよな?」
「当たり前よ。おーい、ジン!あれを持ってきてくれ!」
「アイアイサー!」
すぐに俺達の前に書き込みが大量に加えられた地図が届く。
「俺たちもなんかしなきゃな、と思って昨晩調査をしてみたんだ。この星印が全部怪しいやつだ。」
いち、に、さん………と数えると、なんと16個もあった。
「結構あんな。」
「そうだ。流石にお前一人でちょっかいをかけるのは無理だ。そこで、手分けして一晩で2個ずつ襲撃していく。8日かかる計算だが、まぁ間に合うだろう。」
「メインは冒険者組か。」
「バックアップはする。俺の頭じゃこの案が限界だな。」
「問題なし。早速今晩から実行しようじゃねえか。」
俺とリーダーは拳をぶつけ合った。
更新が遅くなっておりますが、いつものポケモンです。
終わるまでどうかご容赦を………
 




