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342話 対魔王軍会議 2

「クロップスかー。」


まず最初に、ギルマスがぼやいた。心底嫌そうな表情である。

クロップスという土地は、特殊な要素を幾つか抱えている。大きく分ければ3つだ。


先ず第一に、対王国における最重要拠点であること。


「帝国側からの厚い支援は間違いなく受けられる……………のは良いことなんだが。」


まず前提として、今回のラーク攻略にしても何にしてもギルドは世界各国から莫大な支援金を受けている。相手は世界共通の敵である魔王軍であるからして、これについて金を渋る国はあまりいない。

しかしだ、今回ばかりは違う。それは、舞台がクロップスだからだ。


この大陸における二大国家と言っても過言ではない王国と帝国は、非常に大きな影響力を持っている。

それこそ、そこらの弱小国なら機嫌を損ねただけで消し飛ぶと言っても過言ではない。

よって、この大陸に属する国の対応は大きく3つ。王国側か、帝国側か、貿易などで中立を保つか。


「中立国の支援が受けられるかは微妙な所だな………。」


「受ける受けないではない!出させるかどうかだぞ!聞けば規模は最低でもラークの2倍!冒険者もただで動く機械ではないのだ!」


「ラークを取り返していなければ今頃どうなっていたか。想像するだけでも恐ろしいものです。」


「一旦落ち着け。金の話は正確なデータを元にやっていかないと具体的な案が出ねえ。

それより先に、クロップス周辺の地形を先に理解を深めておく必要がある。」


第二に、クロップスの周辺はそこそこ強力な魔獣の巣窟である、ということ。


「この地図を見て欲しい。ご覧の通り、東と北は森、南は山、西はダンジョンと来ている。どこもCランクレベルの魔獣が生息する危険地帯。過去にはBランク、Aランクの出没情報も出ている。」


「その程度であれば上級冒険者を集めて焼き払うことは容易なのではないか?」


「この地形がクロップスを要塞として成り立たせている理由の一つだ。帝国は絶対首を振らねえぜ。」


「だが、これのせいでDランク以下は危なっかしくて戦場に出せん。補給部隊やらなんやらで貴重だというのに………!」


「やはりクロップスは見ていて羨ましいほどの要塞っぷりを誇るな………今回はそれが仇となるが。」


「それだけではない。このクロップスを戦場とするのに、致命的な弱点が一つある。」


ここで、一度も口を開かなかった『最強の魔法使い』が口を開いた。

まあ、この人は気づいてるよね。『イレギュラーオルフェン』の出自も勿論知っているし。普通そうでよくよく考えるとまずい………第3の理由が。


「それは、『異常なまでの治安の悪さ』だ。あの街の25%はスラムで出来ている。」


静かに告げられたその内容に、会場が一瞬静かになった。

会議に参加しているお爺さん一人が、ぽつんと聞き返した。


「……………それだけ?」


「ああ、それだけだ。」


再び沈黙。あ、いや、確かに結構小さそうに見えるよね。スラムの奴らが固まって戦争状態に殴りかかっても多分上級魔法3発くらいで沈黙するだろうし。


ここで、一人が立ち上がる。


「だからどうした!?それこそ上級冒険者が焼き払えば済む話だろう!?」


「あのスラムはかなり特殊なんでな。勇者が敗走した話は有名なはずだ。ここに居る者なら噂程度でも聞いたことがあるだろ?」


会場が、あーとかうーとかそんな感じで溢れる。首を傾げている人も多いな。まあ、教会が全力であれは隠そうとしていた気がする。

と、ここで一人また立ち上がった。


「待て!?よくよく考えればその敗走させた張本人がそこにいるではないか!?」


「てへぺろ☆!」


「「「!!!????」」」


(あっ……………。)


やっちゃった………完全にノリで………。


「………オホン。兎に角、それだけでは危険視する理由するにはなりませんな。もっと詳しくお聞かせ願えませんか?」


ダンディなおじさんが流してくれた。いや、ありがとう、本当に。


「………スラム街の連中に関して、共通することが一つある。

それは、無意味な危険は絶体絶命の状況になるまで侵さないことだ。」


「ふむ、いいことではないのですか?少なくとも戦っている最中に妨害されることはないでしょう。」


「逆に言えば戦闘中以外は常に奴らはこちらの隙を伺うわけだ。奴らの技術はどれもが一級品。おまけに魔力持ちとして捨てられたやつも多いから戦闘力もそこそこ。」


「つまり………おちおち休息も取っていられないと?ですが、それならばスラム街から離れて泊まれば良いのでは?」


「いくらクロップスとはいえ、そんな余裕はない。」


「それではパンとスープを配布するのはどうでしょうか?」


「腹が満たされれば全て満足というわけではないだろうが。それに、そんなことに使うだけの予算はない。わかっているだろう?」


「では、どうするというのですか?」


「別に手がないわけではない。」


そう言いながら、彼は立て掛けられた時計を見る。


「………もうそろそろ12時だな、一旦昼の休憩に入るとするか。休憩後、その手段を話すとしよう。議長、良いか?」


「うむ、確かに私も腹が減ってきたところだ。それでは一時間後!再びこの席につくように!」


あ、議長さんの腹の具合で決めていいんだ………。

俺が色んな意味で呆れていると、『世界最強の魔法使い』が寄ってきた。


「ちょっと来い。話がある。」


あ、うん、なんか話の内容がある程度わかっちゃったような………。


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