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339話 ラーク攻略後 2

がたんごとん。


「………ハッ!」


ふて寝していた俺は、急に感じたケツの痛みに目を覚ました。


「お、やっと目を覚ましたな。」


「……………?」


周りを見渡すと、なんと馬車の中。結構広い。

隣には『最強の魔法使い』、そして目の前には………例の魔族の男だ。


「この男が、お前のことを知るなりお前以外には話さないと言ってきた。俺はここから出るから、二人で存分に話すと良い。」


「えっ、えっ………?」


魔族の男の顔色を伺うが、相変わらずピクリとも表情を変えない。

って、ちょっと待てよ。


「気にならないのか?いや俺も何を話されるのかは知らないんだけど、こんなことを言われたら俺が実は魔王軍の一員くらいには思ったり………。」


「俺はそんなことでお前を疑うほど信用していないわけじゃない。だから盗聴の魔術も一切かけていない。」


「なんかよくわからないけど、任された。」


「あの空間転移………もしかしたら、今のお前に人類の未来がかかっているかもしれない。」


そう言うと、『マジックガード』に乗って飛んでいった。


(パクられたな………)


まあいいや。

俺は、魔族の男に向き合う。


「お前のことは、魔王様から聞いている。」


「そうか。」


転生云々だろうか。とりあえず相槌だけ打っておこう。


「お前は魔王様に転生させられたと聞いた。」


やっぱりか。


「そうだ。そういうお前はどういう立場なんだ?」


「魔王様の側近を勤めさせていただいていた。今の魔王様の状態は知っているか?」


「いや、全く………。でも、あまり世界侵略しそうな性格してなかったように思える。」


「全くもってその通り。今代の魔王様は非常に頭が回り、世界侵略をするくらいなら仲間を増やして国を作りたいと考えていたお方であった。」


「過去形なのな。ってかそうか、今バリバリ攻めてるしな。」


「お前は知らないだろうが、魔王軍には権力を持つ魔族が3人いる。この三人が魔王様に無理矢理人族を攻めさせているのだ。ここで、私からの取引だ。

共に魔王軍を潰さないか?」


「どういうことだ?」


「今の魔王軍は、魔王様を傀儡としているものの手先だ。筆頭といえるのがあの空間魔法の女。魔王様に忠誠を誓う私のような者は、皆今回のように送り出され尖兵とさせられる。

私の目的は究極的にはただ一つ。魔王様に力を戻すこと。今の魔王軍を潰していけば最後に残るのは恐らく魔王様。少なくとも私はそうなるよう誘導する。

お前も魔王様には恩が有るはずだ。それにこれは人族全体にとっても悪い話ではない。我々は、協力できると私は考えている。」


今言われたことを、吟味する。

なるほど。これは非常に困るぞ。本当の話なら飛び乗るのだが、この男をホイホイ信用できますかと問われれば答えはNOだ。

いや、この男が見捨てられたことは確かなんだがね。


「………その前に幾つか聞きたいことが有る。」


「何だ?大丈夫だ、今俺は情報を出し惜しみする気はない。」


「お前は俺達を本気で襲ってきた。それがどうもひっかかる。」


「結果を出せば必ず昇進できる。魔王様に忠誠を誓う者は団結し、権力と武力で持って魔王様のお考えの支えになろうとしていたのだ。………まあ、今ではこのザマだが。」


くそ、なんとなく筋が通ってる。

俺だって魔王が目指してるという方向に進んでくれたほうが良い。

だけどな、俺は自分が騙されやすいという自覚があるんだよ。


「………協力って言ってたが、具体的に何ができるんだ?」


「俺はこの通りあと3ヶ月はまともな戦力にはなれない。できることは情報提供だけだ。だが、これでもたくさんのことを語れる自信がある。腐っても元魔王様の側近だ。」


うぅむ………。今回の件でもわかるように情報のアドバンテージはめちゃくちゃでかい。

だが、寝首をかかれる可能性もアホみたいに高い。今この場をどうにかして潜り抜けてとりあえず生き延びようとしている可能性も十分にある。


そう考えたところで、俺は不意に首元に不穏な空気を感じて咄嗟に腰を折り曲げた。


「あ、あぐッ………!」


目の前の男が苦しそうな声を上げる。


(『リュミエール・シーカー』!)


直ぐ様魔力反応を探知する。反応は2つ。一つはさっきまで俺の首があった場所。もう一つは目の前の魔族の首を握りつぶそうとしている右手だ。

どちらも繭の形をして物体を破って出てきている。


「『ストロム・ベルジュ』!」


とりあえず光属性魔力を込めた水の剣で切りつけてみると、案外簡単に手は引っ込んだ。

だが、今度は馬車の天井に繭が生成される。

それを破って出てきたのは上下逆さまに上半身だけ出ている魔族の男。何故か半裸だ。


「ふっ、しぶとく生きていたか犬っころめ。大方人族にでも尻尾を振ろうとしていたのだろう?

安心しろ、ラウール様直々の命で私が殺してやる!」


「チッ………!」


馬車から飛び降りようとした魔族の男は、そのまま見えない壁に阻まれる。


「なに!?」


「この場には私の結界を張らせてもらった。貴様を殺すための時間だけなら外の人族如き相手なら耐え切られるだろうな。」


「く、くそ………!俺はこんなところで死んでる場合じゃねえってのに………!」


俺もこんなところで死んでる場合じゃねえんだけど。

というか完全に巻き添えよねこれ。これ協力して半裸の男を倒さないと俺がまずいような気がする。


(仕方がねえ、腹括るか………。)


俺は静かに魔力を練り始めた。



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