336話 ラーク攻略開始
「う、嘘だろ………!?」
「これはでかいぞ、俺達の予測だとこれよりもっと規模が小さかった!」
「まだ昨日の話、流石に今この情報と食い違うなんてことはないはずだ!」
俺達が作った地図は、ピリピリしていたギルドの空気を一変させた。
「斥候専門の名に恥じぬ働きができてよかったぜ。ロイド、助かった。」
オッレルスさんがものすごい笑みを浮かべている。
「またなんかあれば言ってくれや。協力するぜ。」
ならばこちらもサムズアップで応えるしかあるまい。
そんな俺の背後から、低い声がした。
「しかし………これであの作戦ができるな。」
聞き覚えのある声に、この場にいる全員が声の主を見る。
「『最強の魔法使い』………。何でここに!?」
「なんでも何も、人類の危機だぞ。なんだ、俺がいちゃ悪いのか?」
ギルド内のだれかが漏らした呟きに、苛立たしげに返答する。
「そう怒らんでいいだろ。ところでその作戦ってのはなんだ?」
うっかり漏らしたやつが可愛そうだったのでフォローをしつつ、気になったことを質問。
作戦っつう響きってなんか心躍るよな。
「鍵はお前だ。」
「え、俺?」
「『マジック・ティラン』で『リュミエール・シーカー』は共有できるな?」
あ、そういえば『リュミエール・シーカー』をまだ共有してみたことはなかったな。
「わからん。今やるわ。」
魔力の発動する基点を後ろに立つ男にずらす。
(あ、楽勝だ。)
案外簡単に、『リュミエール・シーカー』は共有された。
「………ほう、なるほど、これが『リュミエール・シーカー』か。確かにこれは光属性魔法以外ではありえないな。」
感心するように呟いた、『最強の魔法使い』は徐に手をギルドの壁に向ける。
「えっ。」
――――――――――ボゴッ。
俺が声を上げるのと同時に、ギルドに穴が空く。『リュミエール・シーカー』の特性である魔力の注入の行ったんだろうが………いいのか、そうポンポン穴を開けて。
「………なるほどな。」
それを見たギルマスが、腕組みしながら頷く。
「肉壁の癖に珍しく頭が回るじゃないか。」
「ど、どういうことだ?」
たまりかねたグランさんが問う。
「つまり、誰かを囮にして魔術師全員に『リュミエール・シーカー』を共有して、囮に飛びかかった瞬間に魔石に大量に魔力をぶち込む、という作戦だ。この敵の魔力量、数からして不可能ではないと俺は断じる。」
「「「おおお!」」」
(なるほど、そういう使い方があったか!)
これは俺も目からウロコだ。画期的な作戦に、ギルドも更に一段と湧く。
「お前らもわかってるだろうが、これは早ければ早いほど打撃が与えられる。今すぐありったけの魔術師を集めな。今日の夜には出発だ!明日のランチは魔物のいないラーク市内でとるぞ!」
「「「おっす!!!!!!!」」」
俺の動きが滅茶苦茶重要だな。しっかり装備を整えて行こう。
そう考えてギルドを出ようとした俺は、首根っこを掴まれた。
後ろを見ると、相変わらずの酷いを目付きをしたグランさんである。
「お前はこっちだ。」
「ぐええええええええええ!!!」
首掴んだまま引っ張るな!?
「こちらグリフォン01、視界良好、電波も良好オールグリーンだぜ。こっからじゃラークが豆粒にしか見えねえが。」
晴れ渡る青い空に透明の翼を広げ、特別に渡された不思議な形をした魔道具に俺は話しかける。
風もそんなになく、滞空も楽ちん。絶好のフライト日和と言える。
「そうか。今からそちらにグリフォン02から05を送る。一応お前の肉壁としての役割だが、潰すなよ?」
「俺は人が死ぬのが大っ嫌いなんだ。寧ろ全力で生還させてやらあ。」
「うむ、俺とお前では感性が違うようだな。まあやるべきことさえやれば後は何やっても許すぞ。」
なんて言っていると、鳥の亜人が4人飛んできた。
先頭のカラスの女性が握手を求める。
「貴方を全力で守れと言われた。よろしく。」
「おう、俺は物凄く脆いから留意しといてくれな。」
「でも小さいから被弾しにくそう。」
「そうだな、誠に遺憾ながらその通りだ。」
いつになったら伸びるのだろうか。最近結構食ってんだけどな。
「………そろそろいけるか?」
と、ここで『最強の魔法使い』から催促が。
「全員、配置についてくれ。すぐに始めるぞ。」
「「「了解!」」」
俺を取り囲むように4人が並ぶ。俗に言うインペリアルクロス。若しくは輪形陣ってところか。対空戦に強いね。俺が一番安全ってわけでもないけど。
「………さて。」
俺は、すっと大量に作ったブツを収納袋から出す。
「じゃ、始めるぞ。俺は死にたくなくないから皆、気を緩めないでくれ。
そんじゃ、総員降下!」
5人ですぅーっと降下する。相手の魔法はギリギリ届かないが、相手はこんだけ滞空していれば気づきはするだろう。
よし。
「燃えやがれ!」
魔手を使って、ブツを大量投下。
因みにこれ、懐かしのナパーム弾である。
「ひゃっほおおおおおおい!」
ラークの街は、忽ち燃えているアンデッドで一杯になった。
定期が終わりましたので、こっから一気に更新すると思います(多分)
 




