330話 はぐれオーガ
「お………おい、マジか、初めてあの宴に参加していつも通りのこのこギルドに出てくるやつなんてここ最近見てねえぞ。」
三人でギルドに行くなり、俺はグランさんに畏怖の表情で見られた。
「二時間寝たしな。」
「ロイドの『アンチ・スリープ』に磨きがかかってて困ったぜ。」
「『アンチ・ポイズン』でアルコールは全部無くなったよ。」
「そうか………実際ピンピンしてるし大丈夫なのか………?」
「そうそう、問題なし。で、グランさん、なんかBランクのモンスターはいないか?強くなった『イレギュラーオルフェン』の実力を確認したくてさ。もうそろそろ魔王軍もこっちの大陸まで進行してきそうな頃合いだしよ。」
「お、おう。じゃあはぐれのオーガなんてのが出没してきたらしいし、どうだ。索敵が必要になるだろうが、魔王軍相手でも索敵は大事だろうしな。それに、かなりの量の現地人も魔物も殺戮してるらしいから強さも十分。」
「じゃ、それで。」
雑魚処理は俺の得意技だし、どっちかっていうと大型と戦いたいよな。二人の補助をする戦い方が今後必要になってくるだろうし。
「ランヌ地方北部のメヌっていう村だ。そこに向かえ。馬車を使えばそんなにかからんだろう。」
「ありがとう。」
こういうとき、ゴムを売っておいてよかったと素直に思える。ケツが痛くないってのは最高だ。
「おお、よくきなさった。お茶でも飲んでいきなされ。」
着いた村は、老人が多めで中々に寂れていた。
(おいおい、この村大丈夫か?)
(大丈夫じゃないと思う。)
シュウと二人で小声の会話。なんか潰れそうだぞこの村………。
「お、すげえなんかお茶が美味いぞ!」
「うちの自慢でして。ここは紅茶の名産地なのですよ。」
(なるほど………独自の産業は持っているわけだな………。だが、それでも高齢化は誤魔化しきれないぞ。)
(地域活性化のために何か手を打たざるをえないね。)
シュウとちょっと頭良さげな会話ができて嬉しい。ギルはおかわりやめろ。何杯飲んでんだこいつ。
「それで、はぐれオーガの討伐を早速始めたいのですが、そちらで最近目撃情報はありましたか?」
「昨日うちの若い衆が殺されたばかりですの。そこの裏山があるでしょう?あの中腹ですよ。あとで案内しましょうか?」
「ぜひともお願いします。」
(なるほど、若い人はいたけどオーガに殺されちゃった訳だね。)
(やっぱりああいう輩って自然災害みたいなもんでどうしようもないよな。)
魔物やらモンスターが跋扈するこの世界で、力ってのは物凄く大事だ。力がないとこの村みたいに半壊したりするし。
「それより、今日はもう遅いですし休みなされ。ボロいものですが宿と食事を用意しました。」
「ご厚意に甘えさせていただきます!」
「若い者は元気があっていいですな。では着いてきなされ。」
出てきた夕食は普通に旨かった。これはやる気が出るな。
「朝飯も旨かったな!」
「昼食のサンドイッチまで貰っちゃったからね。頑張ろうか。」
「ついでに鹿でも捕まえて焼いて肉を挟もうぜ!絶対旨いって!」
「賛成。塩胡椒持ってきて正解だったな。」
塩はともかく胡椒はそこそこ高級品だ。まぁ、金はかなりあるしこんくらいの贅沢はいいだろう。
「皆さん、食べることがお好きなんですね。」
「当たり前だ!」
「腹が減っては戦は出来ませんからね。」
「沢山食べて大きくなりなされ………と、ここらへんです、あのオーガが出たのは。」
老人が連れてきた場所には、確かに何か巨大なものが暴れた痕跡があった。
「遺体は?」
「回収しました。弔わにゃならないもので。」
遺体の損傷具合から腕力を図りたかったんだが………仕方ない。
「大きさは大体5メートルと見ていいのかな。」
シュウは圧し折られた木をを見ながら、そう問う。
「生き残った輩も5メートルほどある、と言っていました。」
「となると、やっぱり中々に強いね、そのオーガ。ロイド、どこにいそうかな?」
「この獣道を通ってりゃ会えるんじゃねえか?5メートルもあるなら獣道を外れたとしてもその痕跡は残る筈だ。後は上か下か………。」
「恐らくは上ですじゃ。降りているならばうちの猟師が勘付くはずですからな。」
「オーガが出てるっていうのに猟師を山に残らせて良いのかな?何かの拍子で殺されちゃいそうだけど………。」
「生憎と人手が足りないものでしてな。あの男には無理を承知で残ってもらっています。
それでは、私はここで。これ以上は魔物が強くていけません。」
「了解です。助かりました。」
老人が降りていくのを見届けると、俺達は早速作戦会議を始める。
「じゃ、分かれて行動しよう。基本は山を登りながら索敵。敵を見つければ狼煙な。戦うな。あと念のため三回くらいあげといてくれ。」
「「了解!」」
「よし、いくぞ!」
久々のスリーマンセルだ。楽しみだな。
前話で書き忘れてました………。冬休みが終わったので毎日更新は終了です。




