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325話 闘技祭 12 (途中から三人称)

全く聞き覚えのない声。その主は、俺の左腕に封印されていた吸血鬼だった。


「戦わせて頂きたい。」


精神世界に引き釣りこまれた俺は、土下座する吸血鬼に端的にそう言われた。


「暴走して観客席を血祭りにあげちゃうZE☆とかない?」


「主の魔力が幾らでも溢れているため、全くそんなことはない。腹一杯なのだ。」


「俺の意識はどうなる?俺側から解除できんのか?」


「五感は共有することも出来る。解除については………これを渡しておく。」


そう言って、俺は変な石を渡された。


「私の魔石だ。それに魔力を吸い込ませるよう念じれば戻る。」


「『リュミエール・シーカー』…………確かにそんな感じはするな………。」


「それにあの存在(・・・・)は強力な力を持つあの3人でも多少骨は折れるだろう………私が倒すのは悪い話ではないはずだ。」


「倒す気満々だな、あれやばいぞ多分。」


「サタン殿が教えてくださったのだ。私ならあれを倒せると。」


「サタン………おっさんか。」


「あの方は武人として素晴らしいお方だ。で、返事は………。」


「任せる。『黒雷』にはいつもお世話になってるしな。」


「感謝します。」


そう言うと、吸血鬼はフッと消えた。と同時に、俺も元の身体に同調出来るようになる。

さて………どんなもんかな。
















突如、ロイドの身体に黒い稲妻が落ちていった。


「ハ、ハ………ッ!懐かしイ感覚だ!」


稲妻が大地へと抜けると、ロイドの背中から黒い翼が生え、元々白い肌が青白くなり、犬歯は伸び、黒い瞳が金色のものと変貌する。

魔力は正反対。光は闇へ、水と土と風は雷へと変質した。


「おいおい、マジでか………!流石にやべえぞ!」


そう言ってギルドマスターが酔いつつも立ち上がるが、それをロイド………いや、真祖吸血鬼が静止する。


「私ガこいつをかタづけル。」


「グォォォォ………!魔王様の………おチカラが、が、見えるぞ………!」


「その名ハ不快だ。喋るな。」


「その姿、ら、雷神か。いい、だ、ろう!わ、我がチカラで消し炭にしてくれる!」


「『ズレパニ・ブロンテ(雷の鎌)』。消し炭とナるのはそチらの方だと、言っておこうか!」


両者の身体が弾ける。その足は、駆け出すだけで大地にヒビを入れた。


「ブワァァァァァァァァァ!!!!!」


叫びとともに、『暴食』がその拳を振るう。

が、真祖吸血鬼はそれを黒き雷の鎌で下から刈り取る。


「『グラトニー』!」


空中へ舞う右腕を、詠唱が生み出した口が食べる。

直後、『暴食』の切り飛ばされた右腕が復活。


「宿主に似テ回復能力が高いのダな。」


「あやつと、お、同じにするなァ………!」


更に大量の魔力が吹き出て、『暴食』の身体から大量の触手が生成される。

その矛先は観客。それを見た真祖吸血鬼は、更なる魔法を雷の鎌に加える。


「血よ、我が叫びに集イて鬼ガ呪いに応えよ。『シュバルツ・ドンナー(黒き雷)』!」


それまで青白く光っていた鎌が、漆黒へと変わる。


「ハッ!」


その翼で飛び上がり、雷の鎌を肥大化させ、回るように一閃。

ジュワァ、と音を立て触手が焼け落ちる。


「く、くくく食わせルォォォォォォ!!!!!!!」


「まるで昔の私ヲ見ているヨうだな………。すぐに楽にシてやろう!」


「なぁめぇるなぁ!!!!!」


憤怒にその身を委ね、『暴食』が触手を絡みつかせた拳を振るう。

力任せのその攻撃は、空振りすると突風を起こし、大地を軽々と割る。だが、それは掠りすらしない。

奇しくもその回避運動は『天翼』アレクと同じ、翼を使い推力を得ることで加速するものだった。


「主の身体だ。あまり傷つケたクないのでな………。」


「こ、ざ、か、し、い!!!」


まるで赤子のごとく暴れまわり破壊を振りまく『暴食』を、真祖吸血鬼は冷ややかな目で見る。


「お、オレをそんな目で見下ろすなァ!」


そう吠えた『暴食』は、驚異的なジャンプ力で真祖吸血鬼の上を瞬く間に取る。


「しぃねええええええええええ!!!!!!!」


体全体から触手を放出し、大地を触手で掘り起こし、残った触手はその両腕に。

空に滞空する真祖吸血鬼を上下左右から大地と両腕で挟み撃ちにする。


「血の眷属よ、王がお呼ビだ。王が元に集いそノ槍を振るウがいい。『キュロムニ・ハルシオン』!」


だが。

全てが真祖吸血鬼の全身から放たれた複数の雷槍に打ち砕かれる。


「ぐ、グォォォ………これ、は、食えない………ッ!」


「『暴食』を冠シているだケで五大獣に勝てるとデも思ったカ?甘い、甘すぎルぞ。」


そう言って、真祖吸血鬼はその左手(・・)を向ける。


「主よ、よく見てオくが良イ。コれが、本当の『黒雷』ダ。

血よ、雷よ、我が怨嗟に応エその身ニ宿す原初に狂え。『レーベン・オブ・フェアブレッヒェン』!」


真祖吸血鬼左手に刻まれた紋章が黒く光り輝き、大地がその魔力の高ぶり感じて蠢く。

直後、世界が一瞬黒く輝き、『暴食』が四散爆散する。


光の粒子が、舞った。


『しょ………勝者!ロイド選手!』


直後、真祖吸血鬼は、ロイドへとその姿を戻す。翼は引っ込み、肌は白へ、犬歯は戻り、瞳は黒。


「うがぁ………!げほっ、げほっ!」


ロイドは地面に血を吐き崩れ落ちるが………その左拳を天高く上げる。


「ほら!拍手!とりあえずは拍手だぞお前ら!」


ギルマスがそう叫び………パラパラと拍手が鳴る。

それを見て、司会が再度コール。


『勝者、ロイド選手!』


ワァァァ、という叫びと、一際大きな拍手が鳴った。


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