322話 闘技祭 9
また遅れました、申し訳ないです。
「負けた!!!!」
開口一番、ギルはそう言った。
「どうだ、俺の切り札。」
「まさかあんな変なもんがあるとは思わなかったぜ。ま、ロイドが何をしてくるかなんて一度もわかったことがねえけど。」
レールガンについては、『黒雷』を手に入れたときから発想はあったのだ。普通に『黒雷』を射ったほうが強いせいで使わなかっただけで。
レールガンの利点は、その数に有る。『黒雷』は強いが、一発しか打てない。逆に、レールガンならいっぱい準備して打てばそのまんま一杯放つことが出来る。
今回、ギルを倒すにはうってつけの武器だったわけだ。
「まー、当分はこのコンボで負けないわな。」
「冷やすのは反則だって!俺全然身体動かなかったし!」
ラノベとかでよくドラゴンにやってる奴だしな。ラノベ万歳。
ドラゴンなど所詮爬虫類な訳ですよ。HAHAHA。
「あれだ、勝てばよかろうなのだァ!って奴だ。」
「でもま、次の相手はキツいだろうなぁ。」
「そうかもな………。」
俺達の目線の先は、トーナメント表にある。
『天翼』アレク。
それが俺の次の対戦相手だ。
そして、その男が今戦いを繰り広げている。
「我が光の力よ、集いて仇敵を穿け!『ホーリー・バレット』!」
………それは戦いとは呼べない。リンチだ。
「いや………ありゃないわ。あれ、決めようと思えばいつでも決められるだろ?」
『天翼』アレクは、その二つ名が示すように金色の翼を広げ、次々と魔法を発現する。
大量の光属性の魔力が生み出す魔力回復。それが源だ。
それを観客に見せつけるかのように振るうのだ。そう、これは彼にとってはショー。
一般人は圧倒的防御力で耐えしのぐ敵に一生懸命魔法を射っているようにみえるが、俺達にはバレバレである。
しかも、恐らく全魔力をつぎ込んだ魔法ならば貫通されてしまいそうなのがその酷さに拍車をかけている。
だから、何も知らない人はヒューヒューと歓声を送っているが、強者は一様に顔をしかめるのだ。
「フィナーレだ!我が光よ、水よ、風よ!集いてその瞳に楽園を刻め!『天界の導き』!」
観客席に見せつけるかのように、大仰に杖を振り、詠唱する。
発現した魔法は、虹。7色に輝く魔力が闘技場を駆け巡る。逡巡した最後にたどり着いたのは、身体を全力を守る男。
だが、無情にも眩い閃光は男の肉体を跡形もなく消し飛ばす。
観客は一斉につばを飲み込み、司会へと視線を向ける。
『勝者!アレク選手!』
一瞬の静寂の後、わああああああ、と一際大きい歓声が闘技場から鳴り響く。
実際、美しい。幻想的とも言える。だが、その裏に潜む性根の悪さ。というか邪悪さ。それが全てを台無しにしている。
そして、俺をチラリと『天翼』アレクは見る。
その目に浮かぶのは、残忍な本性。お前もこの運命を辿るんだと言外に言っているかのような。
「はは………。………舐め腐りやがって。」
おじさん怒っちゃうぞ。
………だが、アレに勝てるかと言うと………厳しい。
無限に等しい回復力も兼ね備えている上に、いくらでも魔法を飛ばせるだろう。
また、その剣技も舐めてかかってはいけない。今は魔法でボコボコにしていたが、ブロック戦は剣だけで制していたらしい。
チートかよ?
そこで、俺の手札を再確認。メインの魔手、魔腕。回復魔法、支援魔法、ウェポン・マジック。魔翼、光属性魔法。『黒雷』、『エクスカリバー』。そして、幾つもの道具。
これで、最年少Aランク到達者に勝てるかどうか。
(手札が足りないな………。)
俺の全力を出した姿が、ギル戦とも言える。
だが、それでも俺は右腕を失い、ギリギリでの勝利だった。
なら、今から手札を生み出すしかない。
だが、そうそう思いつくものでも………。
(………………ん?)
いや、ある。
俺は、最近それを見たばっかりじゃないか。
後は実行出来るかどうか。
が、それを確かめるには第三者が必要。
いるか………?
「ん?どした?」
い た。
「ギル、ちょっと付き合え。」
「いいぜ!何やるんだ?」
「反撃の狼煙を上げに行くんだよ。」
見てろリア充、俺が爆発させてやる。




