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311話 再集結

吹き出る赤黒い豪気が、俺の視界を埋め尽くす。

貯めたエネルギーを全て開放した『レーヴァテイン』は、衝撃波だけでギルド内を再度滅茶苦茶にする。


「あちゃー、こりゃ死体も残らねえかな。」


そうギルマスがぼやいていた。ちなみに俺は吹き飛ばされないようにするのが精一杯である。魔手装甲が展開できないし。


だが。


砂煙が晴れた先に、それ(・・・)は健在していた。


「…………驚いた。まさか、貴方にそんな攻撃力があるとは。」


「おいおい、嘘だろ………?あれ結構な威力だったぜ………?」


光り輝く勇者は、ピンピンしていた。


「聖剣、第二形態………ッ!」


「そういえば見られたことがあったな。とりあえず、さ―――――――――



―――――――――――――死ね。」


「『イージス』!」


『イージス』が目の前で展開される。

直後、聖剣が降り注いだ。


「ッ――――!」


発生した衝撃波を利用しながら後ろに俺は吹っ飛ぶ。

魔力を使えない俺などただのカカシなのだ。

更に、状況はマズイというレベルではない。


「くっそ!」


「うおおおおお!!!!!!」


俺を完全に戦力外とみなした勇者は、ギルマスとの一騎打ちに興じはじめた。

だが、もうギルマスに生身で攻撃を受け切る余裕は無いらしく、お陰で『レーヴァテイン』が完全に封じられてしまっている。

つまり圧倒的火力不足。ジリ貧もいいところだ。俺も魔力を使えないから回復が使えない。


だから、俺は聞き慣れた声が上空から聞こえた時、思わず腰を浮かせてしまった。


「『双龍閃』!」


「!!」


ズン、と建物全体に響く。もうそろそろこのギルド倒壊するんじゃないだろうか。


「久しぶり、ギル。」


「よお!元気にしてたか?って、うわあっ!」


こっちを向いてサムズアップしたギルの背後から、勇者が一閃。だが、それがギルに届くことはないと俺は確信を持って言える。


「『グランドフォース』!」


聖剣は突如現れた盾に食い込むだけで、それ以上進まない。


「ギル!そんな突っ込まないでよ!」


「ッ………!」


勇者が目を見開く。その視線の先にいたのはシュウだ。


「さて、『イレギュラーオルフェン』、集結!」


「一人無力化されてるけどな!」


さすがギル、カンでそこまでわかるとは。

………相変わらず、そんなものをカンで済ませてしまっていいのかと毎回思うわけだが。


「本当に、君たちは僕に勝てると思っているのか?」


勇者がはしゃぐ俺達を見て訝しげな目線を送る。


「いや、別に?だって戦うの俺らじゃねーし。」


それに、ギルが淡々と返す。

直後。

又々窓から何かが降ってきた。


「『フルミネ・バースト』。」


雷を纏って、勇者に突撃するように落ちてきたそれ(・・・)は、だが一瞬で展開された『セイクリッドガード』に弾かれる。


「やれやれ、本当に強いな。流石『初代勇者の再臨』と言われるだけある。」


「『最強の魔法使い』………!?どうしてここに………!?」


「そこの肉壁が焼かれようとしてるからな。肉壁は肉壁でも俺の詠唱時間を稼げる大事な肉壁だ。」


「てんめえ肉壁ばっかうるせえぞ!?」


次々と集結する面子に、勇者が思わず後ずさる。

それを見て、『最強の魔法使い』はニタニタと笑い始めた。


「ああ、その端正な顔をぶちのめしてやれると思うと年甲斐もなくワクワクしてきたじゃねえか。

おい肉壁、そいつを3秒止めろ。」


「あいよ!」


最早肉壁扱いを甘受しているギルマスが、勇者に突っ込む。


「『崩炎斬』!」


「効かねえ効かねえ!『ギガントアーム』!」


聖剣を両腕で掴み、それを抱き込む。

とっさに勇者は聖剣を離し、右腕を掲げる。あ、これ見たことあるやつや。


「ギルマス!『カラドボルグ』だ!」


「任せろい!『マキシマムギガントアーム』!」


「『カラドボルグ』!」


ぶちぶちと血を吹き出しながら肥大化したギルマスの両腕が、今度は『カラドボルグ』を抱きかかえる。


「………ッ!」


焦る勇者。そして、笑みを深める魔法使い。


「肉壁、上出来だ。『バールゼフォン』!」


彼がそう唱えた次の瞬間、勇者が不自然に血を撒き散らしながら吹き飛ぶ。

壁に激突し、ずり落ちた彼は、這い上がりながら疑問を口にする。


「う、うそだ………。僕が反応すら出来ない………!?」


「俺を誰だと思ってやがる。『最強の魔法使い』だぞ。」


凍傷に、火傷に、打撲に、斬撃。

あらゆる種類の怪我を浴びせられ、息も絶え絶えの勇者。


「ほら、回復してみろよ。もう一度叩き込んでやるぜ。もう既に詠唱は終わってるからなぁ。」


そう言いながら近づく『最強の魔法使い』。

だが、勇者の全く絶望の色すら見えない目を見て、俺は嫌な予感を覚えた。


「嫌な予感がする………!早く、早くそいつを殺せ!」


「おう!『双龍閃』!」


「お、おい!待て俺にもう一発撃たせろ!」


『最強の魔法使い』の静止を振り切り、ギルが駆け出す。

だが、遅かった。


「『メタスタス』。」


「「「――――――――!!!!!!」」」


その一言で、建物の中が眩い光で満たされる。


そして、光が収まった後。


「く、そ………。あいつ!まただ!また(・・)逃げやがった!!」


勇者の姿は、そこになかった。

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