307話 ハーレムパーティ
次の日俺が冒険者ギルドに行くと、なんだか凄い集団がいた。
具体的に言うと女4人に男一人というパーティだった。
そんなパーティを見た俺は、いつもと違って戦慄している賭け事三人組に話しかける。
彼らも同じことを考えてるだろう、と思ったからだ。
「おっちゃん、なんだ、あれは………!」
「俺も信じられないが………本当に実在するとは思わなかったぜ。」
「ありえない!こんなことが………!?」
「あれが契約の上で出来てるに1000メル。」
―――――――ハーレムパーティ。
それは、まさに冒険者界におけるアホウドリ。
ここ冒険者ギルドは基本むさ苦しいおっさんがほぼ全てで、女性など絶滅危惧種。
それを4人も囲っているなど空想のものだと言わざるをえないのだ。
「羨ましい………!あのイケメン水色野郎の顔面を滅茶苦茶にしてやりてえ………!」
「よくあんなおっそろしい状況で生きていられるなあの水色男。」
女性4人に囲まれ生活するなど死に等しいと俺は思っている。
で、そんな輩はどんな魔力を持っているのだろうか。持ってないかもしれないけど。
とりあえず俺は『リュミエール・シーカー』を発現させる。
(おお。)
まさかの光属性だった。しかも魔力総量もかなり多い。
周りも魔力を持っているやつはみんなかなり魔力量が多い。多分こいつらおっそろしく強いな。
ここは関わらないのがよしと見て、俺はグランさんの元に向かう。
その途中、カウンターから戻ってきたハーレムパーティとすれ違った。
その瞬間。
(!『マジックガード』!)
瞬間的に後頭部に展開した『マジックガード』が、何かを弾いた。いや、なんとか防いだってところか。
すぐに後ろを振り返ると、そこには水色のイケメンが笑顔で拳を固めてこっちを見ていた。
「きみきみ、覗きは良くないってお母さんに教わらなかったのかな?」
一瞬、なんのことかわからなかった。
だが、すぐに『リュミエール・シーカー』のことだと悟る。
「………生憎、親に捨てられたもんでね。」
「そっかー。じゃあ、次は気をつけようね?」
そう言って、笑顔のまま俺だけに集中的に魔力をぶつける。
………凄い出力、操作力だな。
「アレク?どうしたの?」
「いやー、ちょっとおもしろそうな子を見つけてさ。」
「あー!ほんとだ可愛い!ねえ僕、冒険者やってるの?」
ハーレム要員の一人がこっちに寄る。
反射的に身体が硬直した。というか香水がキツい。
「エリー。僕が言うのもなんだけどあまり時間がないよ。早く行こう。」
「ごめんごめん!確かに時間がないね。じゃあ僕、キツいだろうけど死なないように頑張ってね!」
女の方は嫌味とかなしに接していたように見えた。反面、あのイケメンは裏表が激しいようだな。怖いわ。
「グランさん、今のは?見たことがない顔だけど。」
「そりゃそうだ、あれはここのパーティじゃないからな。
あれは『黄昏の天翼』っていうパーティでな、ハーレムパーティにしては中々の手練揃いだ。中でもリーダーのアレクは最年少Aランク達成者らしい。実際あの身のこなしからするにかなりできる奴だな。」
なるほど、確かにあのイケメンは凄かった。恐らくタイマンなら普通に負ける。
そもそも『リュミエール・シーカー』に気づく時点で只者ではない。
「そういや、あいつもお前と同じで光属性魔力を持ってたな。全く羨ましい限りだ。」
「そんな人が、なんでまたここに?」
「半年前、『カンプーフ』で闘技祭があっただろ?あれをうちでもやろうって話になったんだ。
そうすると華があるやつが必要でな。とりあえず、Aランクでも暇そうなあのパーティを呼んでみた。」
「え、闘技祭やるのか。」
「お前もでるか?あのいつもの闘技場でやるから死にはしないし、格上の戦いを体験できるチャンスだぞ。」
「絶対に出る。」
「即決か。流石お前ってところだな。」
AランクやBランクが戦う所、というのは大物討伐以外では早々お目にかかれない。
正直、これを逃す手はないと思った。
「手続きは俺の方でやっておこう。所で、装備はどうなった?」
「今製作中らしい。『サイクロプスの巣窟』のことだから、早めにできると思う。闘技祭はいつやるんだ?」
「一ヶ月後だな。」
「まだまだ先ってことか。昨日フレースヴェルグに聞いたら、俺の真祖吸血鬼は段々俺に馴染んできているらしい。一ヶ月後に使えれば優勝も狙えるぜ。」
「そういえば、そんなことを昨日カナルの監視員が言ってたな。監視員が監視対象に捕まえられて事情を説明されたってのも凄い事案だが。」
「魔力持ちを監視員にしたら駄目だろ。あれじゃあ見つけてくださいって言ってるようなもんだ。」
「本当、お前には手を焼かされる………。うちの監視員は常にカツカツなんだぞ。」
「それはご苦労様なことで。」
「で、今日はどうするんだ?あまり今日はいい依頼がないが。」
「本当はなんか受けようと思ってたけど、やめにする。闘技祭に向けてある程度計画を建てるとするぜ。とりあえず、現時点の出場者の名簿とかってあるか?」
「あるぜ。と言っても、名前だけだぞ?」
「十分。先生が色んな冒険者について知ってるからな。」
「なら、ちょっとまってな………。」
そう言って、グランさんが奥に引っ込む。
それにしても、あのイケメン、どこかで聞いたような覚えがある。
青髪で、光属性魔力持ちで、最近メキメキと力を付けている冒険者。
(……………あ。)
思い出されるのは、『最強の魔法使い』との会話。
『そいつを問い詰めたらペラペラと自慢気に話しちゃってくれてな。それで色々と知った。魔王に転生させてもらうとこも聞いた。』
(あいつ、もしかしてその転生者!?)
世界、狭すぎない?




