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300話 黒い雷

(なんだ………これは。)


周りが白で塗りつぶされた空間に、俺はいた。

そんな俺の目の前で、早送りのビデオのように映像が流れる。

それは沢山の人間の人生で、そのどれもがあの化物に噛まれて(・・・・・・)死ぬ。その殆どがこのダンジョンに潜った冒険者だ。

それを見て俺はこれは走馬灯なんだな、と考えた。

先ほど左の手首を噛まれたところである。

というか、走馬灯って他人の人生も流れるんだな。ってか長くね?もう5分は見てるぞ。


なんて呑気に考えていると、不意に心臓がバクバクなっているのに気がついた。

びっくりして胸を見ると、仄かな光が心臓付近から見えた。

一瞬訳がわからなくなったが、その光が光属性魔力によってもたらされるものだと俺は気づいた。

噛まれた時に流れ込んだ何か。

それをどうにかしようとしてるのかもしれない。


と言っても魔力は俺の意思とは無関係に動いてるようで、俺がどうこうできるものではないようだ。

そこまで考察が終わった途端。


(うぐっ…………!)


体の中に何か異物が放り込まれるような感覚が俺を襲う。

いや、正確には俺の中に閉じ込めようとしているのだ。その何か(・・・)を。

体ではないどこかに直接叩き込まれるような衝撃に、俺の意識が耄碌とする。

うっすらと開けた視界の中で左手に何か術式のようなものが組まれていくのを見ながら、再び俺の視界は暗転した。
















「ぅ……ううん………。」


再び俺が目を覚ましたのはあの通路だった。


(良かった………生き延びることは出来たか………。)


安堵しながら立ち上がる。

驚いたことに、痛い場所は特に無い。噛まれた左手も全く痛みがない。


「けど、なんだこの紅い線みたいなやつ?」


そう、俺の左手から左肩まで、よくわからない紅い線が引かれているのだ。

まぁ、普通に動くのだが。


「……ってあれ………?俺もしかしてまだ閉じ込められたまま………?」


そんな俺の声に、この通路は反響で返事した。

つまり、閉じ込められたままであるらしい。これはひどい。


「下手に周りを壊せばここぜってえ崩壊するしなぁ………。」


そもそも壊せるかどうか怪しい。ここもダンジョンだとすればほぼ破壊は不可能だ。

吸血鬼がいた場所が最終地点だし、どうしようもない。

というか考えたのだが、もしかしたらここは吸血鬼を封印する場所なんじゃないだろうか。

だとしたら普通逃げ道は作らない。つまりここに来た時点で\(^o^)/なのではないだろうか。


(いや待て待て諦めるには早過ぎる。)


ヒントはある。

例えばコウモリ。どこから来てるのかわかれば何かしらあるかもしれない。

そう考えた俺は、先ほどコウモリが飛んできた最終地点に待機してみる。


――――――――ポン。


「「「キィィィィィ!!!!!」」」


「ただのポップかよクソがあああああああ!!!!!!!!」


ブチ切れながら魔手で叩き落とそうと動かした魔力が、突然おかしくなる(・・・・・・)

魔手は発現せず、コウモリたちが俺を噛み始めた。


「!?って、いてえ離れろクソ!」


右手に装着していた『白濁拳』を振ろうとして、それもないことに気づく。

顔から血の気が引いた。


「嘘だろ………!?」


慌てて左手を突き出しもう一度魔手を出そうとすると、今度は紅い線みたいな模様が光った。

直後。


――――――――バリリリリリリリッ!


「ええ!?」


左手から俺が唯一使えない雷属性魔法が飛び出す。しかも黒い。

それも中々の威力で、触れただけのコウモリたちを一瞬で消し炭にした。


「ちょちょちょちょ待てーい!?」


左手に魔力を通さないようにしながら、慎重に『リュミエール・シーカー』を使う。


(嘘だろ!?)


それが示したのは、俺の左腕が丸々一本よくわからない魔力回路につながっている、ということだった。

一応それを避ければ今まで通り魔法は使えるだろうが、中々に面倒くさい。


まあ、なんか雷属性魔法使えるようになったしそれでいいか。

そう考えて、試し打ちにと左手を壁に向けてみる。

雷魔法なぞ知らないが、それについて調べるのはまた後だ。何にせよ使えるものは検証しとかないと。


「ファイアーッ!」


左手の魔力回路が活性化し、再び強力な黒い雷が発射される。

それが壁にぶつかった瞬間、急に壁に描かれた模様が光り始めた。


「え!?ちょ!?」


光は次第に強くなっていき、俺の目を焦がす。

それでも不思議と痛みはなかった。

直後、浮遊感が俺を襲う。


(――――――――!!!)


だがそれもすぐ収まり、視界も回復する。

その先にいたのは。


――――――――カタカタカタカタカタ。


「うっげえ!」


沢山のスケルトン集団。

直ぐ様覚えたての雷魔法をぶっ放し、残った奴を『リュミエール・シーカー』で消し飛ばそうとした瞬間。


「うっぷ………。」


2つの魔力回路が混ざったことにより俺は吐き気を催した。


(なるほど、あっちの魔力回路の出力が高すぎて少し間が必要なのか。)


吐き気が収まった俺は、魔手装甲を纏う。どうやら左腕部分だけ不安定になってしまってるようだ。

とりあえず逃げ帰るだけなので気にせず全力で地を駆ける。

とにかく、今はギルドに戻って検査を受けるのが先決だ。明らかに左腕がおかしい。

何かわけわかんないことが起きればこいつらの攻撃力だと俺の命が危ない。

魔力だって少し慎重にならなければ使えないのだし。


ところどころで爆薬を使いつつ、俺はギルドへと逃げ帰った。

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