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297話 ポパイのホウ

「到着ッ!」


約5時間のフライトの末、俺は久々にトイチェ大陸に戻ってきた。


「おおお、人族ばっかだ。」


カンプーフはおっそろしいほど獣人だらけだったからなぁ。


「まあ、見たところ魔王軍の進行は皆無だな。良かったよかった。」


門番を無視するわけにも行かないので直接街には入らなかったが、呑気に門番が欠伸していたので俺はそう判断した。

そこで、門番が俺に気づく。


「よお、半年ぶりか?」


「誰かと思えばお前さんか………。そういえば、カンプーフに行ってたらしいな。何をしてきたんだ?」


「師匠と修行したあと、魔王軍と戦ってた。」


「へぇ………魔王軍か。そいつは大変だっただろうな………って、魔王軍!?」


「そうそう、魔王軍。その様子だとまだ誰も知らねえな?」


仕方あるまい。なんたって船だ。もしかしたら5時間で着いた俺が最速かもしれない。


「まずいだろそれ!早く市長にでも誰にでも伝えてくれよ!」


「わかってるって。これからギルマスに伝えるよ。」


「よ、よし。とりあえず検問はパスだ!早く行け!」


「いってぇ!背中は叩かんでいいだろ!」


よくよく考えたらこれ世界の危機やんけ。

魔王軍って何回も世界制圧しかけてんじゃねえか。

うわあ、やっべ。


俺はそのままギルドへ直行。

うわあこいつらまた飲んだり食ったりしてる。働けよ。


「おっ!ロイドどうしたそんな急いで!」


「無職なギルマス様に急遽伝えないといけないことがあってなぁ!」


「おう、頑張れよ~!」


ギルド内を全力疾走してもこの反応である。


「おっ、グランさん働いてる。ちょっとギルマスに話があるんだ。結構大事だ。」


「お前、俺が真面目じゃなかったら何も取り柄がないだろ。」


「あっ自覚あるのか………。ってそうじゃねえ。ギルマスに話があるんだよ。もう一回言うけどマジ大事。」


「わかったわかった。今鍵を出す………。ほい、行くか。」


「相変わらずその身軽さ、マジパねーっす。」


「………殺すぞ。」


他の受付嬢とかだったら忙しくてこうはならなかっただろうになぁ………。

そんなことを考えながらギルマスの部屋にはいると、酒臭い息を吐きながらグースカ眠りこけていた。本当にコイツ働かねえな。書類散乱しすぎだろ。


「おいクソギルマス起きろゴラァ!」


見た目ヤンキーではあるが根は真面目なグランさんはこの姿に腹がたったのか、その足を思いっきり踏みグリグリし始めた。

おおお、小指を重点的に。えげつねえ。


「ぎええええええ!お、おいちょっと待てグランおめー足悪いじゃん?やめようぜ、ナ?」


「そうだぞグラン、やめとけ。」


「おお、ロイドが味方に――「汚物を踏むと足が汚れるぞ。」「ああそうだったな、忠告どうも。」酷くない!?お前ら酷くない!?」


「まあロイド、こんなんでも一応ギルマスな訳だがどんな話があるんだ?」


「俺も真っ先にこいつに報告せざるを得ないという現実が誠に遺憾なんだが――――――――


――――魔王軍が『レークス』を占拠した。」


「「な――――!?」」


さっきまでのおちゃらけムードがぶっ飛ぶ。


「嘘だろおい、今回の魔王は穏健派じゃなかったのかよ!?」


「どうやら、今回の魔王は知恵者のようだな。つまり、何らかの計画が始動したって事だろ。」


「なんにせよやばくないか。『レークス』ってカンプーフ最大の都市じゃねえか。」


「で、俺はその『レークス』で戦ってたんだが………。」


「お前、相変わらず変なところにいるな。」


「なんでまずコイツ生き残ってんだよ。」


「まぁ、そこもぼちぼち話していく。まず、俺が『風帝』ランヴォルの元で修行してたのは知ってるな?――――――――」
















「うわあ、マジモンのヤバイやつじゃねえか。」


「本当に知恵者だな、今回の魔王。よくよく考えたら『レークス』は大分前の魔王軍と獣人との激戦区だ。かなり上等な死体が埋まってやがるぜ。」


「まさかネクロマンスが持ちだされるとは俺も思わなかったよ。」


「それにしてもまずいな………。恐らく術者は魔大陸の方だろう。攻めようがねえ。」


魔大陸とは魔王や悪魔などが住んでいる場所だ。この大陸は全ての存在の戦闘力が桁違いである。


「カンプーフの主要都市があっという間に敵の兵士量産機になったようなもんだからな。しかも完璧な電撃作戦。俺達に情報をもたらしたのがお前しかいないって時点でやばい。」


「だが、ベイズル島なら『魔法都市』にすぐこの情報が行くはずだ。あそこの新聞が大陸全土に広げてくれるだろうな。」


「これはまたこの世界を二分する戦争が起きかねないぜ………。」


「とにかく、だ。俺がこの件については動いてやる。お前も流石に疲れただろう。帰って休め。」


「「こいつが働くだと………!?」」


「俺、また花街行こうかな………そして綺麗なネーチャンに慰めてもらうんだ………。」


「「………。」」


そう言って瞳から一筋の涙を落とす無職男性(33)を見て、俺達二人は無言で部屋から出て行った。


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