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296話 首都陥落の裏側

「「「うおおおおおお!!!!!!!」」」


ベイズル島に着いた喜びに、冒険者達が歓声を上げる。

ここにいるのは『レークス』で戦っていた冒険者の内2割だけなのだ。

また、遠くでも生き残った市民たちが酒盛りをしていた。


「ふいー、疲れたわい。」


「おいジジイ、この後どうすんだよ。あのボロ屋に戻ってまた修行か?」


「うーむ………そうじゃのう………。ホイッとな。」


「ッ!?」


唐突に放たれた『風闘法』の一撃を、同じく『風闘法』で膜を作り減速。膜を破る前に魔腕で掴んだ。


「うむ、合格じゃ。」


「へっ?」


「後は実戦の中で磨いてくだけじゃよ。ワシが教えられるようなことは殆どないからの。」


「つまり免許皆伝?」


「そういうことじゃ。喜べ最速じゃぞ。」


「お、おう。」


うーん、意外と呆気ない。まあいいか。


「じゃあ、俺は帰るかな………。」


「ん?お主、これから酒盛りじゃぞ?」


「ジジイ、俺が酒盛りの場にいると何が起きるか知ってるか?」


「知らんが、なにか病気でもあるのかの?」


「二日酔い覚まし要員にさせられるんだよ!」


「………な、なるほどのう………。」


全く、天下の光属性魔力が泣いてるぜ。俺はなんだ、全自動ソルマック製造機か。


「あとさ、情報が全然ねえじゃん?」


「なんの情報じゃ?」


「魔王軍のだよ。『ハルス』と『レークス』に来たのはわかるが、他の場所がどうなってんのかが全くわかんねえ。」


「忙しいからの、仕方あるまい。」


「それに、俺の魔法は戦闘で結構役に立つ。だったら行っちゃったほうが良いだろ。」


「うむ。健闘を祈る。」


「んじゃ、あばよジジイ。くたばんなよ!」


強烈な出会いにしてはあっけらかんとした別れを告げて、俺は空に飛び立った。
















魔王城にて。


「魔王様、只今帰りました。

誠に申し訳ないのですが、プラン2には失敗いたしました。」


魔王城から出撃した時の6割の体積で戻ってきたスライムを、魔王はいつも通り頬杖を付きながら迎える。


「うん、見てたよ。()と戦ってたしね。」


「やはり貴方様の目は素晴らしい。最初はただの子どもと思っておりましたが………。」


「彼はそういう人間だから。人間には『不死(イモータル)』なんて呼ばれてるらしいけど、僕からしたら彼は『巨人殺し』と名乗るべきだと思うね。」


魔王自身が彼に与えた能力は、他の者に比べて本当に微々たるものだ。しかも、彼は生まれたのが遅い上、環境は最悪だ。

それでも、彼は他の転生者に全く劣っていない。

何処までも期待を上回る彼に、内心魔王は喜びながら目の前のスライムにかける言葉を考える。


「なんにせよプラン1が成功すればよかったんだ。ご苦労。」


「はっ!ありがたきお言葉!」


「下がってよーし。」


スライムが下がると、次はとんがり帽子を被った悪魔が来る。


「『レークス』の制圧は見ての通り終わったわ。」


「結構皆気づいてないけど、あそこ元々獣人と魔族の激戦区でね。強力な魔族と獣人の死骸とか結構埋まってるんだよ。」


「ええ、お陰で強力な下僕が何体も出来たわ。」


「君がネクロマンスなんて代物を使えて助かったよ。その戦力を見込んで君を四天王に加えたいと思うんだよね。」


「それ、誰が抜けるのかしら?」


「ん?ああ、そうか五人いるのに四天王じゃおかしいもんね。じゃあ五天王にしようか。」


「語呂悪くない?それ。」


「………さっきから思ってたけど君口調軽すぎじゃない?僕魔王様だよ?」


「まだ封印が解けてないじゃない?なら貴方はまだ魔王予備軍様よ。」


「ちゃっちゃと計画を進めて封印を解いてやる…………!」


魔王を取り巻く魔力が一層濃くなるが、その目の前に立つ悪魔はどこ吹く風である。


「そうだね。じゃあ五魔将でいこう。君、今日から五魔将ね。」


「アリガタキシアワセ。」


「ナゼニカタコト。

もういいや。下がってよーし。あ、プラン1の遂行は頼んだよ。」


悪魔がいなくなると、魔王の影から執事の悪魔が出てくる。


「いいのですか、魔王様。あのような態度。」


「実際、今の僕は力不足だよ。この忌々しい封印のせいでね。」


そう言って、魔王は自身の胸元を開く。

そこには、光り輝く杭が刺さっていた。


「早くロイド君がめった打ちにしてくれないかね。彼はかなり特異であるけれども特異すぎてどう仕向ければ良いのかわからないよ。」


そう口を尖らす姿はとても魔王とは思えず、見かけはただの少年だ。


「あ、そういえば。」


「どうかしましたか?」


「彼、気づかなかったね。」


「何がでしょうか?」


「ほら、なんで襲ってこないんだ?って言ってたじゃん、彼。」


「………そのような記憶はございませんが………?」


「あ、そうなの?じゃあ内心ってことだね。常に『サイコメトリ』使ってるからわかんなかったよ。」


ここで魔王が一旦区切る。


「【『ハルス』から戻ってくる冒険者を一網打尽にするために戦力を温存しておきたかった。】

いやあ、ロイド君に気づかれなくてよかった。」



5時間後、魔王は満面の笑みで再びとんがり帽子を被った悪魔を迎えた。

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