295話 首都陥落 2
「ロイドさん、それではよろしくお願いします。」
ガルレリア様に呼ばれていたフォードという騎士を先頭に、湖を前に総勢6人が俺に頭を下げる。
チラッと『リュミエール・シーカー』を発現すると、皆さん俺とは比べ物にならないほどの土属性魔力を持っていた。
因みに全員が獣人であることを考えると、結構これは凄い。こいつら絶対近衛騎士とかそんなんだよ。
「お、おう。」
そんな凄まじい方々を頭を下げられた俺は、若干青ざめながら返答する。するしかない。この人達硬いし。
「とりあえず、潜りましょう、はい。」
なんか敬語になってる。何だこりゃ。
「「「了解しました!」」」
俺の縮こまった声とは間逆なハキハキした声を出し、その場で鎧を脱ぎ始める。
そっか、鎧着てたら泳げねえよな。俺はいつものスライムさんだが。
それにしてもみなさんいいボディしてらっしゃいますね。その筋肉1割ください。
「えー、じゃあはぐれないように付いてきてください。」
「「「はいっ!!!」」」
この声を遮るかのように水中にダイブ。
逸れるとまずいので俺は光属性魔力を球状にし、光を作る。
更に、光で文字を形成。意思伝達をする。
「苦しくなったら言ってくれ」
そう伝えて、いざダンジョンの階段に。
「まず、ここまでトンネルを作ってくれ。」
俺がそう言うと、彼らはほぼ無詠唱で『アース・ホール』を発現させた。
(あっ、そうだ詠唱忘れてた………って、えええ!?)
俺がポンポン無詠唱してるから忘れられがちだが、無詠唱は本来高等技術である。
………こいつら人間かな。獣人だった。尚更おかしいわ。
ものの数秒でトンネルを完成させ、水中でスッと俺に向かって並び立つ彼ら。
ツッコんだら負けな気がしてきた。これはあれだ、ニートギルマスとかと同じ手合だ。
(あれ、これもしかして楽勝なんじゃね?)
そして30分後。
(楽勝だったーッ!)
俺は、水の中に通るトンネルを湖の上から見ながら内心叫んだ。
「よくぞやった!ロイドと言ったな、後で褒美をやろう!」
「いえ、私如きに勿体無い………。全ては彼らの働きゆえです。彼らにこそ褒美を。」
ジジイの誰コイツ的な目線が痛い。
いやだってね?俺働いてねーもん。意気揚々とモンスター共を殺戮しようとしたら先に彼らがぶち転がしちゃってたもん。
「殊勝な心がけだ。そなたの名は覚えておこう。」
「ありがたき幸せ。」
「皆の者!彼らの働きにより逃げ道が出来た!往くぞ!」
「「「おおーっ!」」」
ずらーっと『レークス』の人が列を成し、門に押し寄せる。
「皆の者!焦るな!列を乱すな!戦えるものは殿に回れ!」
騎士隊長っぽいのが大声で叫ぶ。
「あれ、ジジイは後ろいかなくて良いのか?」
「お主腑抜けたか。わしゃあ前からの攻撃を見張ってるんじゃよ。」
『リュミエール・シーカー』でみると、その通りだった。
「寧ろお主が殿に回るべきだと思うぞい。」
「それもそうだ。」
翼を開き、濡れた体を乾かすように空を飛ぶ。
「……お?」
見れば、見覚えあるメンツがゾンビと戦ってた。
「なんだ、お前らちゃんと来てくれたのか。」
「俺達だってあのくそスライムを倒したいって気持ちはあったんだぜ。」
「それにどう考えたってお前についてくのが一番生存率高いだろ?」
「確かに、そうだな。」
言いながら、『リュミエール・シーカー』でゾンビの魔石を確認し一気に魔力を注ぎこむ。
「「「え゛っ。」」」
急に倒れ伏す20体のゾンビ。うむ、こいつら光属性にめっちゃ弱えな。
「やっぱおかしいわ………。」
「相性って大事だよな。」
とあるゲームはこれだけでダメージが4倍になったりするからな。とりあえず二回攻撃してくるあいつは死んでくれ。
(さて、格好つけて殺したはいいが………)
もう一度、ゾンビの大群に目を向ける。
(こりゃ、焼け石に水ってレベルじゃねえな。)
寧ろ増えてる気がする。まあ、この街は歴史が結構あるみたいだしそりゃ死者なんて腐るほどいるよな。
実際ゾンビになって腐ってるし。
確かにこれは逃げるしかない。
(………?)
そういえば、腑に落ちない点があった。
あのグロテスク巨人である。
あれを動かせば強力な戦力になるのだろうが、自衛以外する気配がない。
そういえば、スライムを回収したゾンビワイバーンも全然見ねえな。
(俺達をこの街から追いだそうとしているのか………?)
俺しか知らないことだが、待ち伏せしているモンスターも全く動く気配がないのだ。強力だが。
とりあえずゾンビ以外ヤバいのがいないことをラッキーに思っておこう。
1時間後、俺達全員は死人を出すことなくベイズル島に到着した。
 




