292話 対陰湿メガネ野郎 2
魔獣が、弾ける。弾ける。弾ける。
5分。それが俺が周囲全ての魔獣を殺すのにかかった時間だった。
(よし、周りは………!)
言い訳だが、約300ほどもあった魔獣をできるだけ早く倒すためには常に魔力を練り続け、かつ『リュミエールシーカー』から送られる情報を迅速に処理しなければならない。
とてもじゃないが周りの状況など察知してる場合じゃないのだ。
流石に俺自身の防衛くらいは考えてはいたが。
で、俺の感想としては。
「………よく耐えた方としか言えねえな。」
立ってるのが10人。水魔法だかを食らったのか、濡れたまま倒れているのが15人。
………いない4人は吸われたってことか………。
「おお!終わったか!早く治してくれ。」
「言われなくてもやってる。ほら、皆起きてくるだろ。」
俺が指差すと、11人が起き上がった。
「おい、起きてこねえのがいるぞ。」
「残念だが………死んだな。」
我ながら乾いた声が出た。
「なっ………!?」
「いくら威力の低い水魔法とはいえ当たりどころが悪けりゃ死ぬ。
後油断するなよ。隙ができりゃあ次やられるのはそいつだ。」
俺も大分死に慣れたか。
単に自分の死が目前にあるから焦っているだけと考えたい。
「よし。」
そういう俺自身も油断はできない。
Bランク冒険者以下一同と戦っているスライムを観察する。
見ての通り半壊にも近い被害を与えたにも関わらず、あのスライムは無傷だ。
まぁ、スライムは基本魔石にダメージがなければノーダメージ。あいつの中で削れる場所は魔力しか無い。
「フォッフォッフォッ!」
しかも高笑いしてる。こっちは生死賭けてやってんのになんて野郎だ。
まあ。
(攻略法は閃いたけどな!)
「お前ら、そこを退け!」
と言っても戦闘中では恐らく周りが見えてないだろうから、魔力を放出して脅す。
お陰で全員がその場から離脱した。
直後。
――――――――ドン!
「むおおおおおおお!?」
俺によって放たれたダイナマイトにより、一時的にスライム部分が解離。
魔石部分が剥き出しになる。
(魔腕、頼むぜ!)
4本重ねあわせた魔腕が魔石を掴む。
「って、硬っ!?」
全力で力を込めた魔石は、2つに別れただけだった。
だが、割ったは割った。
大体のモンスターは割れば死ぬ。
俺達が勝利を確信した瞬間、再び魔石にスライムが戻り始めた。
「「「えっ?」」」
って、ヤバイ魔腕が吸われる!魔力吸われて回復されちゃあネタにもならんぞ!
俺が慌てて魔石を落とすと、あのウザいモンスターが二体になった。
魔石が均等に割れなかったので片方は小さく、片方は大きいが。
そして、同様に執事の姿になり俺達から距離を取る。
「「フォッフォッフォッ!!!!」
「クソがッ!ウザさが倍増だ!」
「「スライムの生命力!舐めないで頂きたいものです!!!」」
「被せて喋るな鬱陶しい!」
「けど!体積が減ってるなら一体一体は弱体化してるはず!そこをもう一発ロイド、頼めるか?」
「ああ、けど出来れば皆で動きを止めて欲しいな。」
「よっしゃ!突撃だ!」
一体一体が弱くなったからか、みんなが勢いづいて突撃する。
それを見てスライムが目を細めた。
「「ふむ、敵前で作戦を話すようではまだまだですな………。」」
そういった直後、デカい方のスライムが逃げ出す。
「あっ………!逃げやがったッ!」
「逃げんのはは○れメタルで十分だわ!」
「追え!ぶっ殺すぞ!」
「フォッフォッフォッ!!!!行かせませんよ!」
俺達の前に小さい方のスライムが立ちはだかる。
「うっせえ邪魔だ!こいつでも喰らえ!」
俺が二度目のダイナマイトを投げると、スライムは呆気無く躱した。
―――――――ドン!
轟音に俺たちは思わず耳を塞ぐ。
その中でスライムは余裕そうだ。
「体積が減ってスピードは上がっているのですよ!」
「おい!あれ危険すぎだろ!他にねえのか!?」
「俺あれ食らったら死ぬ自信があるぜ。」
「魔石露出させるには威力高いのが必要なんだよ!」
ギルがいれば一瞬なんだが。
俺達がごちゃごちゃ言ってると、いつの間にかスライムが消えていた。
「あっ!俺の武器が失くなってる!」
「さっきまで握ってたぞ………!?」
「馬鹿野郎!こいつだ!」
声がした方を見ると、スライムがBランク冒険者から武器を取ろうとしていた。
そのスライムの中には武具が沢山ある。
意識が逸れた瞬間にあの超スピードで取っていったようだ。俺はナックルだったので助かったようだが。
「フォフォッ!おっとこれはまずいようでね!」
俺達が飛びかかるのをみてスライムが逃げ出す。
体に武器を入れていてもかなりのスピードだ。
だが。
(俺なら追いつける………ッ!)
『ウィンド・ブースト』、濃縮された魔手装甲の2つを纏う。
そして、逃げるスライムに大きく一歩。
――――――――ダンッ!
「ッ!これは!」
一歩で一気に近づく俺を脅威に感じたのか、先ほど奪った武具の内盾を俺に押し付ける。
しかし、それをみて俺の口元は歪んだ。
(『ウィンド・ロール』!)
体術の弱い者が、強き者を挫くための武術『風闘法』。
本来なら相手が愚直に突っ込んできた時に効果を発揮するものだが、別に俺が加速している状態でも構わない。
俺は前方に空気の膜を張りながら高速で盾に衝突する。
瞬間、ビリビリと空気が走り膜が爆発して衝撃を生み出した。
「ぬ、ぬおおおおおっ!」
突風が発生し、目の前のモンスターのスライム部分が風圧で徐々に剥がれる。
対する俺も風圧で体が潰れそうになる。
だが、それでも目を離してはいけない。気を強く持って俺は魔手を顕になる魔石に伸ばす。
「うおおおおおおおッッッ!!!!」
「ぬう………っ!?」
俺の叫び声と同時に、ピキピキと音を立てて魔石が崩壊する。
(よし!!!)
俺が内心ガッツポーズをした瞬間。
「カッ…………!」
ヒュン、と何かが突風を切り裂きながら飛んできて俺の腹に刺さり、俺はぶっ飛んだ。
ポケモンGO楽しいです(震え声)
 




