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290話 濃密な死の匂い

俺は急降下し、周りの状況を確認する。

 

「ああ………。こりゃひでえな………。」


魔獣がまだいる場所は全て荒れていた。

そこかしこに血やら骨やらが散らばっている。

俺は自分自身のモノで大分慣れたが、普通の人なら発狂モノだ。

逆に言えばここはもう占領済みというか、そんな感じで戦う冒険者すらいない。

と、ここで魔獣の目が俺に向かう。


「GURUAAAAAAA!!!!!」


その咆哮に反応していくらかの魔獣が俺に目を向けるが、空を飛ぶ俺には攻撃手段が無いようだった。

とりあえず、大した手間ではないので目に見える魔獣を軒並み魔腕で殺しておく。


(他の場所も、こんなものか。)


恐らく、今戦闘がない地域では全てこのように破壊しつくされている。

魔獣やモンスターは人の命によく反応する。見逃された人がいないだろう、というのが俺の見解だ。


(となると、中心部に逃げ込んだ人の治療に回るか前線で戦う人の援護か、だな。)


考えた末、俺は前線の援護に入ることにした。

『リュミエールシーカー』で広範囲まで見たところ、街の中心部らへんで『ヘイレン』の魔力が見えたのが大きい。治療班がちゃんと機能しているのなら俺は前線で戦う人の治療に回るべきだろう。

空を飛びながら『リュミエールシーカー』で最も魔獣やモンスターがいる場所を探す。

東門がやはり魔力反応が多かったが、それ以上に凄い勢いで消えていっていたので恐らく大丈夫だろう。やはりあのジジイの雑魚殲滅力は恐ろしい。

他に、3つほど強力な魔力反応を持つものもいた。恐らく将軍かなんかなのだろうが、俺は雑魚殲滅のほうが得意だ。残念だがそいつらは後回しにするしか無い。

俺は二番目に魔力反応が多い場所へと向かった。
















飛び降りた場所は、もう既に崩壊寸前だった。


「うおおおおお!!!!!死んでたまるかあああああ!!!!!」


ボロボロの冒険者が目の前でそう叫び、その言葉とは裏腹に自殺願望者のような顔で魔獣の群れに突貫する。


「お、おい!馬鹿!」


一人が止めようとするが、自分の分の魔獣を倒すので精一杯のようだった。


「うおおおおお!!!!」


突撃する冒険者の前に魔獣達が立ちはだかり、その牙を開く。その瞬間。


――――――――どちゅどちゅどちゅ。


肉が潰れるような音とともに魔獣が一斉に血を流しながらその場に伏した。


「うおおおおお………って、あれ………?」


いきなり敵が死んだことで困惑する冒険者。

その前に、俺は静かに降りる。


「Bランク冒険者、ロイドだ。助太刀に来たぜ。」


「お………おい、子供がこんなところに来たらマズイぜ。送ってやるから付いてくるんだ。」


目の前の冒険者は信じられなかったらしくそんなことを言った。いや、まぁ俺見た目消防のガキだけどね?中身も厨房だけどね?


「いやだから冒険者だっつっただろ………。そんなことより、とりあえずココらへんの魔獣を一度なぎ倒す。少し状況が聞きたいんだ。」


「お、おい……何言ってんだ……。」


『リュミエールシーカー』で魔獣の魔石を探り当て、魔腕でポンポン引き抜く。

どうやら数だけのようで、魔力切れがない俺にとっては宝の山同然だった。恐らく『風帝』も同じ気持だろう。あいつも魔力の燃費は恐ろしくいい。


「すげえ!魔獣がドンドン死んでいくぞ!」


ある程度掃除が済んだ所で、話を聞く。

とりあえず、さっき突撃を諌めようとしたした人に話を聞いてみることにした。一番落ち着いてそうだからな。


「おい、そこのお前。」


「俺か?」


「そうだ。いくつか聞きたいことがある。魔獣が再度押し寄せるまで時間がねえ。手短に行くぞ。

まず、残っている戦力を教えてくれ。」


割と早口で言ったのだが、彼はすぐ答えてくれた。


「騎士団も有力冒険者も傭兵も『ハルス』に行っていてな………。いるのはAランク冒険者が2人、Bランク冒険者が5人、後はC以下が合わせて80人くらいだ。後は少しの傭兵と王族の方々もいらっしゃる。

ただ………C以下は半数以上が死んだだろうな………。」


「そうか………。AランクとBランクはどうしてる?」


「俺がBランクだ。」


別の男が手を上げた。体がボロボロで立つのもやっとの状態だ。


「見ての通りボロボロでよ………。」

「『ヘイレン』。」

「「「!?」」」


異常な治りに周りが驚愕した。


「俺は光属性持ちなんだ。四肢欠損以外なら大体治せる。」


「はえー。光属性って勇者だけのもんだと思ってたぜ。」


「なら、ここにいるやつ全員が怪我人だよ。」


「わかった。とりあえず治しとくけど、俺は次の場所に向かう。

参考までに聞きたいんだが、俺はどこに向かえばいいとかあるか?」


「すまない、それだけの情報がないんだ。

ただ、『傭兵王』率いる集団が将軍クラスと戦っていたのは見えた。あとは王様が別の将軍クラスとタイマンを張っていたらしい。他は……遠すぎてわからねえ。」


俺は話をしながら全員の治療を終えた。


「なら、『傭兵王』の元に向かおう。情報ありがとな。」


「こっちこそ、君がいなければ僕達は死んでいた。本当に助かるよ。」


「俺も自棄を起こしたしなぁ………。」


「おめえ、あれは見てる方も心臓に悪いぜ。やめろよ!」


彼らの少し心に余裕ができたみたいで、俺はホッとした。さっきは自殺まがいなことをやってたからな。

今の彼らなら乗りきれるだろう。

そう判断して、俺は空に舞い上がる。


(さて、『傭兵王』か。どこだろうな。)


俺が周りを見渡していると、不意に遠くから鉄の反射光みたいなものが見えた。

瞬間、俺は強烈なデジャヴに襲われ、無意識の内に『マジックガード』を展開する。


――――――――ズアッ。


同時に、『マジックガード』が何かによって射抜かれた。

しかし、どこか見覚えがある。


(これは………『傭兵王』ニールの使っていた『紫電の一閃』!?)


「なんで………ッ!」


なんとか体を捻りそれの直撃を避けたが、それによって俺は完全にバランスを崩した。

落下する俺の視界に、再度反射光が映る。


「『セイクリッドガード』!」


今度は防御が間に合い、矢は静かに落ちる。

だが、俺も再び舞い上がるのは不可能だった。


(『グラウンド・ブースト』!)


「ぐえええっ!」


「お、おい!おめえどうした!」


突如元の位置に落下してきた俺に、皆が驚く。

だが、俺は痛みをこらえて『リュミエールシーカー』を発現した。

………やべえな。


「お前ら、いきなり俺が降ってきたりして驚いてるだろうが、よく聞いてくれ。

将軍クラスが、こっちに来ている。」


「なっ………!」


どうやら、俺達はこの少ない戦力で将軍クラスと大量の雑魚モンスターと戦わなければならないらしい。

俺は先ほどの痛み、そして急に接近してきた死の匂いに目眩を感じた。


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