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288話 修行その4

魔糸、魔力の密度向上、風闘法。

この3つが、『風帝』が俺に課した課題である。いや、だった。


「うむ、僅か5ヶ月でここまで来るとは思わなかったわい。」


「はぁ……、はぁ………。」


俺の目の前には、倒れ伏した20体ほどのBランク魔獣。

そんな俺の周りには風が渦巻き、生生しい腕が4本浮かんでいた。

名づけて『魔手二式』。高度な魔力操作を必要とするが、燃費と火力が魔手のそれを大幅に上回る。


「体術はジュウドウだかなんだかをやってたのが効いたのう。まだ発展途上じゃが。

魔力操作においては基礎はバッチリじゃな。」


『風帝』は魔獣の怪我具合を見ながらそう評した。

因みに、一体も殺していない。

というか、強すぎて殺せなかった、というのが正しい。気絶が精一杯だ。

さらに、俺の体は風闘法による負担でボロボロである。


「うむ、こいつらの介抱は森の奴らに任せるとして………そうじゃな、お主には最終試練を与えよう。」


「おい……これだけじゃねえのかよ?」


「最初に言ったじゃろう。お主には翼を生み出してもらう。」


「あぁ………。」


そういえばそんなこと言ってた気がする。それより疲れたので寝たい。『ヘイレン』が疲労に効かないのって不思議だよな。肉体的疲労くらいは治っていいと思う。


「本来なら今すぐやれというところじゃが………。」


「無理。眠い。」


「そうじゃろうな………。」


許可が降りたので、俺は家に戻って布団にくるまった。
















起きた俺は、手羽先を食べていた。ついでに手羽元も。

何故って?鳥の筋肉構造を確かめるために決まっている。いや、単純に鳥が取れただけなんだが。


「のう……態々食べる必要はあるのかの?」


「考えるな、感じろ。」


「味付けが濃すぎて年寄りにはキツいわい。大体なんじゃこの調味料。」


「ジャパニーズソウルソースにして調味料のさしすせそ全てを統べる大正義ソイソースさんをベースにしている。」


「とりあえずお主のテンションが高いのはよく分かったぞい。」


醤油はおいといて、構造さえよく見えれば出来る気はするのだ。後はどこまで俺が感覚をつかめるか。翼なんて持ったことないからな。当たり前だが。


とりあえず、森で獲った謎の鳥に似せた羽を魔糸で作る。


「慣れたもんじゃな。」


「問題はここからだぜ。」


背中から生やすことには成功したが、上手く動かせない。

ついでにこの翼を『魔翼』と名付けておこう。


「やっぱ体にない器官をいきなり動かすのはむずいな。」


「うむ……ワシも尻尾が生えても動かせる自信はないのう。

とりあえずわしも飛んでみせるから真似するが良いぞい。」


「因みに、ジジイって今まで何人か教えてきたんだよな?

そいつらはどうやって飛んでたんだ?」


「翼まで至ったのはお主の他には一人しかいなくての。そいつは天才すぎてホイホイ最初から飛んでたわい。」


「誰だそいつ。」


「先代勇者じゃな。」


「ファッツ!?」


先代勇者といえば、もう100年位前の人物である。

いや……流石にいくらこのジジイが長生きとはいえそれはないんじゃないか………?


「弟子と言っていいかは微妙じゃが、元ライバルでの。教えたらすぐやりおった。」


「なるほどな、同年代だったわけか。それにしても勇者と同じことをすんのはキツいわ………。」


勇者の力が桁外れなのはもう思い知らされている。

才能の塊みたいな奴が更に聖剣で強化されているとかいう何その悪夢。


つまりは、俺は努力あるのみってわけだ。


「とりあえず、お主はワシの飛ぶ姿を見ておれ。」


ジジイがそう言って構えたが、俺は少し考えて言った。


「いや、いい。」


「なんじゃと?」


「そもそもジジイの翼はコウモリのだろ?ちょっと森まで行って鳥の飛んでる様子を見てくるわ。」


コウモリの飛び方は確かに細かい機動力には長けるが、それならまだ『マジックガード』でなんとかなる。

俺が今必要としているのは鷹のようなスピードなのだ。『マジックガード』はそこまで速くないからな。


「うむ………まあ、そうじゃの。確かに言うとおりじゃ。」


それを理解しているのだろうか、『風帝』も納得するが、若干寂しそうな顔をする。

孫に冷たくされた爺さんみたいだな、と思ったが、実際問題ジジイの飛び方はほぼ確実に俺には無理だ。

俺は、若干の後ろめたさを感じながら森に入った。



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