表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
292/407

287話 修行その3

「まさかこんなもんを創りだすとはのう………なるほど、人間の腕をそのまま………。」


何故か『風帝』はしきりに感心していた。正直気色悪い。『風帝』といえばドブに下水を混ぜ込んだような性格をしていたはずだ。

 

「うむ、魔力については一旦置いて良さそうじゃの。そろそろ体術を教えるとしよう。」


そんな俺の内心を知って知らずか、『風帝』は新たな提案をした。


「いいのか、俺の体力やっべえぞ。」


「わかっとるわい。そりゃあもう何じゃこの貧弱野郎と思うくらいには弱いのう。」


「おい。」


「じゃが、それはワシも同じじゃ。ワシもどこ打たれてもポンポン死ねるわい。」

だからこそ、この体術……『風闘法』じゃ。」


「確かにお前俺の裏拳で死にかけてたな。」


「あれ、『風闘法』がなければ即死じゃったからのう。」


「なんかしたようにはみえなかったが……。」


「これからお主にその武術を教えてやる。

まずは魔手装甲で構えるのじゃ。そしてワシを殴るのじゃ。」


「お、おう。」


とりあえず魔手装甲をまとう。少しばかり魔力操作が良くなっているので、効率は上がっているはずだ。

………いや待て、直撃したら死ぬんだよな?


「安心せい、直撃は貰わん。」


「信用ならねえぞおい!?」


「組手なら怪我せんわい。」


「お、おう……、じゃ、胸を借りて行くぜ。」


遠慮無く右足を踏み込む。

それに対して、『風帝』は右手を前に出しただけ。

だが、とりあえずぶん殴ることにした。


「うらあッ…………!?」


拳を突き出すと同時に、拳が急に重くなる。

まるでうちわを勢い良く扇いだような感覚。


「ほれほれ、どうした?」


『風帝』がニタニタ笑う。

落ち着け、何をしたんだこいつ。

試しにもう一発。


――――――――グン。


なんか覚えがあるぞこの感覚………。

わかった。


(空気抵抗か!)


それに気づき、再度足を前に出す。


「何も拳だけというわけではないぞ。」


「チッ………!」


だが、足すらも重くなる。

無理に速く動かせば逆に体が動かなくなるわけか。

かといってゆっくり動けばその間に畳み掛けられるだろう。


確かに強力だ。けど。


「おいジジイ、これただの魔法じゃねえか。それに俺はこういう風の結界みたいに放出するもんは使えねえぞ。」


「そこは大丈夫じゃよ。『ウィンド・ロール』さえあれば再現可能じゃ。

あとのう、これはあくまで補助じゃ。」


「なに?」


「『ゲイル・クラーク』。あれを覚えているかの?」


「当たり前だぜ。」


「ワシの体ではもう負荷が強いが………お主なら大丈夫じゃろうな。」


「?」


「よく見ておれ。」


目の前の『風帝』が、右手を手刀の形にし、振り上げる。

それがゆっくり降りたかと思うと、急に視界から消えた(・・・・・・・)


「何があった………?」


と言った瞬間、、魔手装甲が静かに裂けた。


「お、おいどういうことだ。」


見れば『風帝』の右手は振り下ろされ、尚且つその手の皮は少し破けている。


「そんな難しいものではない。『ゲイル・クラーク』を途中で爆発させて加速するのじゃ。

これにより、緩急が着くため相手は反応がしにくく、ワシ等のような軟弱モンでも十分な加速が得られるわけじゃ。

更に言えば先ほどの魔法、あれで動きはだいぶ制限できるからのう。

うむ………ただ体に負担がかかっての。『ヘイレン』。」


『風帝』の皮膚が静かに治っていく。


「いや、なんちゅーもん教えようとしてんだジジイ。」


「ワシこんなに体張ったのに反応そんなもんなのかのう!?」


「いや、有用なのはわかんだけどなぁ………。」


「ならば、実戦じゃな。お主なら恐らく分かるじゃろう。」


瞬時にお互い距離をとる。


(『リュミエール・シーカー』)


風闘法は魔力が肝心だ。ならこの魔法を使わない手段がない。

更に、魔手装甲を纏い直す。


「いつでもくるがよいぞ。」


『風帝』が挑発する。だが、流石にこれにはかからない。

見たところ、風闘法は対モンスターを想定した受けの技術だ。

モンスターは単調に殴るものが多いが、パワーがある。空気の膜は張れば相手のパワーが高ければ高いほど一気に減速する。

つまり、ここでモンスターのように愚直に突っ込むのはよろしくない。


「んじゃ、行かせてもらうぜ。」


煙玉をとりだし、地面に叩きつける。

その瞬間、周りに丸いものがあるのがわかる。

見れば、俺の体格の小ささを想定した配置だ。


(けどまぁ、見ればかわせないこともない。)


俺が体を捻り近づくと同時に、煙が『風帝』の風で晴れる。

だが、もう遅い。


「『ブースト』!」


「うむ、煙は想定していなかったのう。じゃがまあ、ワシの方が速かったようじゃ。」


しわがれた頭上の声には、明らかに余裕が含まれていた。

同時に、ストンと何かが首に当たり、俺の意識は暗転した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ