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285話 師として

「ふひー、キツイキツイ。」


木の影に座り込み、俺は息を吐いた。

あの後スムーズに食料調達が出来た俺だったが、問題はやはり森だった。


俺は、あの後ジジイが俺に何を求めているかを大体把握した。

あいつが俺に求めているのは、実戦の中における成長だ。

俺に飯の調達をさせたのは、単に俺を使いっ走りにさせたいだけではないような気がする。

具体的には、俺の魔手の限界を(・・・・・・・・)感じさせるため。

俺が荷物を持つには収納袋または魔手が必須だからだ。


そして、まだわからないがあいつはまだ俺を試しているような気がしてならない。

これについては半信半疑だ。負けかけた手前で弟子入りを認めないのはメンツがたたない、そういう理由で『風帝』が受け入れた可能性を俺が勝手に危惧してるだけとも言える。


けどまぁ、大事なのはそこじゃない。


「今、俺に強くなるための道が提示されている。そのことを噛み締めなくちゃあなあ。」

「ウキーッ!」

「げっ。」


とりあえずは距離を取り、荷物を確認する。

荷物を支えるのに必要な魔手は6本。

とりあえず、残り2本を束ねてポンポン湧く猿をなぎ倒す。


(埒が明かねえ)


とりあえず、空に逃げる。少ない魔力を工面して『マジックガード』を展開、急上昇。


「くっ、『ブースト』!」


追いすがろうと跳躍する猿どもを強化した右手で流し、空へ。

それにしても、中々制御が難しい。

荷物を落としたら一巻の終わりだしな。


とそこに現れる、鳥の魔物。


「ここ本当に難易度激高だな!」


俺が叫ぶと同時に、鳥の魔物が突進の構えをとる。

ためを見て、かわせないと俺は確信した。

だが、『セイクリッドガード』は流石に無理。

となると『マジックガード』、これに尽きる。


よし、ここで実戦だ。

『マジックガード』の密度を上げる(・・・・・・)

作るサイズは手のひら分。編みこむように構築。



―――――――バキッ!


「よしきた!」


鳥の魔物のくちばしに、衝撃でヒビが入る、と同時に。


「あれ?」


魔力操作が疎かになったせいで足元の『マジックガード』が消え、一直線に落下。


「うおおおおおお!!!???」


急いで荷物を回収し、地面に落ちる前に魔手で自分をキャッチ。


「あ………あぶねえ………。」


冷や汗を流す俺の背中を何かがちょんちょん、と小突いた。

後ろを振り向くと、そこには視界いっぱいの仔猿が。


「お、おう。まあ平和的にいこうぜ……?」


「「「ウキー!」」」


「ぎぃやああああああああああ!!!!!」


とりあえず荷物を保護するので精一杯だった。
















「ほうほう、行くときはどうなるかと思ったが、中々どうしてやるもんじゃの。」


豪気を使い視力を強化していたワシは、そう言ってフッと息を吐いた。


(『今、俺に強くなるための道が提示されている。そのことを噛み締めなくちゃあなあ。』、か。)


恐らく、自分の意図に気づいたのだろう。

あまりの察しの良さに、嘗ての同僚――先代勇者を思い出す。


(あれはあいつのように口数は多くなかったがの。)


彼と先代勇者に選ばれるまではお互い足らない所を競い合っていた仲だった。

だが、結局それも聖剣を彼が得るまで。

聖剣の圧倒的な力に、『風帝』の肩書は何の意味もなさなかった。

しかし、その力を持ってしても先代魔王との決闘の結果は、相打ち。

あの知らせを聞いた時は魔王の力の強大さに戦慄したものだ。


(もう、100年前か) 


聞けば、もう5年ほど前に今代の勇者が選ばれたという。

その指南の依頼も実は来ていたりしたのだが、辞退していた。

自らの魔力操作は、根本的に力の足りない魔法使いのための技術である。聖剣の力を目の当たりにしたからこそわかるが、あれは自分のような小手先に技術などそこまで必要としないのだ。

そう考えると、自分から見てロイドという少年は理想であった。

力はないが、驚異的な集中力、そして機転。更に若い。

また、魔力操作は基本的に魔力を扱った年月に比例する。

だが、彼は9歳にしてあの実力である。はっきり言ってしまえば化け物レベルなのだ。


「それを、ワシのやり方に固定してしまっていいものか………。」


弟子入りは、正直認めたくはなかった。

だから、本当は試験で手札を見せたうえでコテンパンにするつもりだったのだ。

だが、結果は辛勝。引き受けざるを得なかった。

だから今、あえてこうやって課題だけをつきつけている。自分から気づかせるために。


「ほぉ………流石、早い。」


そんな風に考えるワシの目の前で、ロイドが圧縮した『マジックガード』を完成させた。

小さいとはいえ、一瞬であの密度。教えてすぐこれとは、嫉妬を禁じ得ないレベルである。


「うむ。やはり、優秀な奴に教えるのは難しいのう。」


ワシは、落下し仔猿共にフルボッコにされるロイドを回収しに森へと入った。


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