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27話 異世界がボルトをいじめにかかっている件www

盗み童貞を卒業した次の日。

周りのざわざわした声で俺は目を覚ました。

俺が筋肉痛な体を無理やり起こして周りを見ると、先生を含めた何人かの人たちが、皆に話をしていた。


「―――――。ということで僕らは『卒業の儀』を明日やろうと思います。

出来れば、その手伝いもしてください。お願いします。」


起きた途端にこれだ。びっくりしてまた倒れてしまった。

あ、ついでに言っておくと、『卒業の儀』っつうのはもう自分の力で生きていけると確信した人が、この街から出て働く為に行う儀式のことだ。

といっても、やることは無事にこの街から出ることだけなんだが。


まあ、要するに先生たちは複数人でこの街を出て、一緒に仕事をしようと思っているのだろう。

ただ、一人なら馬車に潜り込むやら何やらしてこの街の門番をスルーする、

なんてことが出来るのだが、今回は複数人でこの街から出るため、俺達に

手伝ってもらいたい。こんな感じだろう。

前にもこんなことあったし。


「まあいいんじゃねえか?全員しっかりしてるし、不自由はないだろうな。

どうだ、皆。誰か異論のある奴は居るか?」


やっぱりリーダーは異論があるかないかで決めるんだな。平等だ。


「ウィルさんがいなくなっちゃっていいんすかね?結構ウィルさんのお陰で助かった人多いっすよ?それに魔法が一番凄いのってウィルさんじゃないっすか。教えられる人が減るのもマズイと思いやすぜ?」


チンピラがボスに話しかけるような口調だな。まぁいいや。

やっぱり先生は魔法が凄い方に入るっぽい。

心あたりがあるらしく、リーダーは腕を組んで悩んでいる。

俺としてもあまり先生にはいって欲しくない。

ただ、他の街でも普通にやっていけるだけの実力があるのに、ここに縛り付けちゃうのはなぁ…………。


「済まないけど、もう僕も15歳なんだ。いい加減、独り立ちしたい。

それに、君達は僕に『恩』があるはずだ。その『恩』の分を今ここで返して欲しい。いいかな?」


ああ。確かに。俺が治癒魔法を覚える前は先生が皆を手当してたし、

今回の作戦も『アクア・ブースト』で魔法の威力を上げてくれたもんな。

多分俺が知らないところでも『恩』を作っていただろうし。


「そう言われると何も言えねえなぁ…………。

お前らには残って欲しいのが本心だが、仕方がねえ。

こいつらの独り立ちに文句がある奴は手を挙げろ。」


誰も手を挙げなかった。


「よし、なら前回の『卒業の儀』同様、

夜に門番を『パラライズ』で止めて、『ウィンド・ブースト』を掛けて逃がす。これでいいな?」


「「「「了解。」」」」


「じゃあ風属性と雷属性の奴らは北西の門の近くにある宿屋で今日の23時に集合だ。遅れんなよ!」


因みにこの街には北西以外に3つの門がある。

そういや、前に水に磁石を浮かべただけの方位磁針を見た時はビビったな。


「「「ういっす!」」」


なんか他の人の返事がすごく嬉しそうに聞こえたのは気のせいだろうか。

まあいいや。

リーダーの話が終わると、皆思い思いに動き始めた。

別れを告げる人や、昨日盗った食料の整理などなど。

俺は食料の整理をするかな。俺は風属性だし、儀式の時に別れを言えば良いだろう。

俺は、ありったけの魔力の手を展開して整理を始めた。














延々肥大中の街を、西へ~北へ~門の側へ~♪


現在、俺氏は絶賛全力疾走中であります!

クソッ、まさかちょっとだけ寝ようと思ったら22時55分まで寝ちまうとは。

正直3歳の体をなめていたぜ!

というわけで俺は『ウィンド・ブースト』を全力で掛けて北西の門に向かっているところなのだ。筋肉痛なのになぁ…………。


お、やっと集合場所が見えてきた。時間はギリセーフっぽい。

喰らいやがれ!ヘッドスライディング!


―――――ズサーッ。


「ふう。ギリセーフ。」


(馬鹿か!何音出してんだ!)


―――――ガツン。


「いっ!?」


いきなり拳骨食らった。酷え。

あ、でもそっか。今バレたらヤバイんだった。反省、反省。


(すみませんでした!)


(はあ。まあ偶々門番が寝てるから大丈夫だろうがよお。)


え!?寝てんの?と思って門の方を見たら、バッチシ門によっかかって寝ていた。オイ。


(っつう訳で、『パラライズ』を使う必要はなくなった。

今から抜けだしてもらうが、お前ら最後に言っておきたいことはあるか?)


その言葉を聞いた瞬間、殆どの人が待ってましたとばかりに別れの挨拶をし始めた。

なるほど、嬉しそうな声を上げたのはこれが原因か。

俺もするかね。


(先生っ!今までありがとうございました!先生がいて助かりました!)


(ハハハ。僕も君みたいな面白い人が見れてよかったよ。

もし、君が『卒業の儀』を終えたなら、この先にあるイタルペナ城塞都市に

来るといいよ。僕らはそこで活動する予定だから。)


(わかりました!出来ればそうします!)


最後に深くお辞儀をして、俺は『卒業の儀』をする人たち全員に『ウィンド・ブースト』を掛けた。


最後にリーダーがポケットからなんか変な道具を出して、全員に持たせた所で、先生たちが門を抜けるときとなった。てか、何だあれ。丸かったけど。


(よし、『ウィンド・ブースト』を使え!)


(((了解!

我が風の力集いて彼の者を助けよ!『ウィンド・ブースト』!)))


あ、そういえば支援魔法は複数人で掛ければ重複するんだっけ。

風属性は全員で6人いるから、とんでもないスピードになったな。

ボルト涙目w


(んじゃ、さようなら!)



―――――ドッピューン。


「「ぐおっ!?」」


わお。すんごいスピードだ。

門番二人が起きちゃったよ。早く逃げないとな。


逃げながら、俺は一句思いついた。



異世界の、かよう子供の、逃ぐ音に、いく夜目覚めぬ、門の関守。


百人一首を変えただけだけどな!






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