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280話 闘技祭 2

(種族特性、か。)


色々考えてみたのだが、今まで会ってきた亜人から色々考えてみると割と見てきたような気がする。

例えば一番身近なギル。

あいつはトカゲ、まあドラゴンの血も引いてることが前にわかったが、あいつは俺やシュウと違って栄養不足でもしっかりと育っている。

それに圧倒的な筋力、あと何気にウロコも硬い。

そういやロウの顎と水中戦闘力も種族特性と考えられるな。

ドワーフの爺さんの筋肉が歳の割にあったのもそういうものか。


「ということは、間違いなく『風帝』はなんか持っているはずだ。」


空を飛ぶ能力か?

だが、例えばロウやギルは違う動物の血を引くが故に種族特性が複数ある。

『風帝』が一つの種族特性しか持っていない確証がない。


「未知数だ………。」


正直に言ってしまえば、あの人の魔力や魔法の破壊力はCランクに毛が生えた程度。さらに言えば属性は風1つ。

凄まじい魔力操作で魔法の破壊力、魔力の密度をAランクレベルまで押し上げてるが、それだけではAランク足り得ないのだ。

言ってしまえば魔力関連だけならウィル先生だってAランクレベルなのだから。

さらに言えば、あの人の概念魔法の種類もわからない。


「燃えてくるじゃねぇか………ッ!」


「おいおい、兄ちゃんさっきから何をブツブツ言ってるんだ?」


「え?」


周りを見ると、俺のことをヤバいものを見る目で見ていた。

あ、独り言全部漏れてた。

俺は恥ずかしさで顔を伏せた。
















恥ずかしさから立ち直った俺は、一度選手の情報を見ることにした。

カラスの獣人がいれば、参考になる。

そうでなくても強い人の戦いはそれ自体が素晴らしい。


見ると、他のブロックですぐカラスの獣人の試合が始まるようだったので、急いで『マジックガード』に乗り移動する。


「「「!?」」」


周りの目が完全にやばい人を見る目だった。

『マジックガード』、可視化しないかな………。


そんなことを考えながら試合が行われるブロックに行くと、丁度試合が始まるところだった。


カラスの獣人の相手は、えーとライオット……いやこんな情報はいらねえな。

とりあえず、ネコの獣人か。


「それでは!試合!スタートォ!」


試合開始と同時に、カラスの獣人は空に逃げる。

だが、これを常套手段と知っているのかネコの獣人はぐっと体勢を低くし、勢いよくジャンプした。


「『跳躍』!」


どうやら豪気も纏っての跳躍だったようで、彼は一気に5メートルもの距離を飛ぶ。

カラスの獣人は焦って羽を一気に飛ばす。

というか、羽飛ばせるのか。

あの威力だと生身の俺なら致命傷だぞ。


「うおおおおおおおお!!!!!!」


だがそれを根性で耐え、ネコの獣人は羽に右手を伸ばした。


「『天空落とし』!」


そのまま豪気での投技に入り、カラスの獣人を地面に叩きつける。


「グヘッ!」


悲鳴を上げるカラスの真上にヒラリと舞い降りたネコの獣人は、そのまま羽交い締めにする。

カラスの獣人は『ブースト』で体を強化し逃れようとするが、どうやらパワー不足だったようでそのまま組み伏せられて降参していた。


なるほど、翼を封じればあとは近接に持ち込んでパワー勝ちすればいいってことか。

特に『風帝』は爺さんだし、魔手がある俺ならできるかもしれない。

ただ、さっきみたいな羽飛ばしは勘弁だな。あれは出が早かったしパワーもあった。

だが、あのカラスの獣人は魔力がなかった。

だから、種族魔法の存在が怖い。


だからこそ、次の試合は逃すわけにはいかない。


「第4ブロック!二試合目!右コーナー!Bランク冒険者『爆砕拳』ラル!冒険者の中でもトップクラスの筋力を誇る彼は何をしてくれるのだァーッ!?」


「続いて左コーナー!Aランク冒険者『風帝』ランヴォル!シードの実力が、今ここで放たれるぞーーーッ!」


「「「おおおおおおおお!!!」」」


二人共有名人なようで、冒険者から怒号が聞こえた。

だが、それを受けているゴリラの獣人『爆砕拳』ラルは、その顔を青ざめさせていた。その巨体は縮こまり、何かに耐えるようだった。


「カッカッカッ、どうしたんじゃ、怖気づいたのか?ほれほれ、こんなジジイ相手じゃぞ?」


そんな『爆砕拳』ラルの様子を見て、『風帝』は安い挑発をかけた。

それに少し腹を立てたのか、彼から緊張がほぐれる。


「それでは!試合開始!」


「うるおおおおおお!!!!!『大地割り!』


――――――――ビキビキ………バキィ!


『爆砕拳』ラルは、拳で大地にヒビを入れ、それを両手で持ち上げる。

そして、それを投げた。


「ほう、やればできるではないか。」


それを感心したように見ながら、無詠唱で大地を爆散してしまった。

だが、どうやらそれは囮らしく、大地を壊した瞬間にはもう目の前に『爆砕拳』ラルがいる。


「うおおおおお!!!!『鉄拳』!」


誰もが『爆砕拳』の名に違わない、弾ける『風帝』の体を想像した所で、一つの魔法が発現した。


「『ウェルトゥス・ディストルーク』」


「ゴボッ!?」


突然、拳を放つ『爆砕拳』ラルの体が外傷もなく上に飛び、そのまま地面に落ちると同時に光に変換………つまり、この闘技場での死を迎えた。


「しょ、勝者、左コーナー『風帝』ランヴォル………。」


司会も、唖然としながら勝敗を告げる。

周りもざわざわして何が起きたのかを想像していた。


だが、俺は『リュミエール・シーカー』により何が起きたのかを理解する。

彼は、『爆砕拳』ラルの体の中で上向きの突風を起こし肺を潰したのだ。

普通、何か物体の中に魔法を発現するのは凄まじい魔力操作をとパワーを必要とする。

だが、それを『風帝』はやってのけた。


(や、やべえ………。)


冷や汗をかく俺に対して、ニヤリと『風帝』が笑った気がした。


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